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ジャンプ集会 記念講演


「ジャンプ集会」は、水道料金値上げに反対する川口市民の会主催の「勉強会」です。2020年の7月15日に開催しました。
活動を飛躍させるために皆で水道について勉強しましょう。ということで
公民館の会議室を借りて飾り付けて設営し
講師をお招きし、誰でも参加できるように無料(お気持ちをカンパしてもらう)形式で開催しました。
雨が降ったり止んだりする平日の午後に47人もの方が参加してくれました。
大成功だったと思います。

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今回はその集会の中の講演レポートを書こうと思います。
講演を聞いていた筆者のメモと配布資料を元に書きます。
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記念講演 「水道は社会保障(公衆衛生)、商品ではない!」
講師:林敏夫(埼玉自治体研究所理事)

第一のテーマ・・・・・・水道は社会保障
第二のテーマ・・・・・・今回の水道料金改訂は疑問だらけ
第三のテーマ・・・・・・当面の改善策、将来に向けた改善策をどうするか
第四のテーマ・・・・・・公共水道の将来を守ろう 3つの危機

水道は社会保障

コンビニの水と水道水の違いは分かりますか?
生きていくための水と売って儲けるための水

時々、同じだと思っている人が居て負担の公平を言う人も居ますが
なぜ市が水道を運営しているのか?

営利目的で運営しないために、市民が市民管理のもとに
その業務を「地方自治体・川口市」という法人に代行させているというのが本質です。

水道の扱いは市民の合意が欠かせません。
今回はそこを蔑ろにされています。

日本の社会保障は図のように位置づけられ具体化が憲法と法律で定められています。(立教大学教授・芝田英昭氏の図を加工)↓

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生活保護、医療、国保、障害、保育、子育てなどは運動があるのですが
意外に公衆衛生は忘れ去られ、粗末に扱われています。

埼玉県の公衆衛生も痩せてしまいました。保健所も減らされています。

公衆衛生を具体化したのが水道法、あれこれ改悪されていますが、それでも芯は残されています。
清浄・豊富・低廉
水質は安全で旨いものを
供給は必要な所に行き届くよう
そして安く!
水道法では決められていますが現実はそうなっていなかったりします。

1970年代後半までは公営企業会計・独立採算方式ではあっても
一般会計からの繰り入れをしていた自治体は存在していました。
ところが1980年代に入ると独立採算が徹底されてしまいました。
(公社)日本水道協会の「水道料金算定要綱」で変質を国が誘導。

昔は生活用水をきちんと確保するために家庭用と営業用の「用途」で水道料金が違っていました。
(基本料金を設定した上での用途別体系)
生活用と事業用の区別の付きにくい店などもあり
今は基本料金はある(設定していない自治体もある)が、口径別になり
生活用と事業用の区別が困難な状態になりました。

現在の川口市の料金体系も公衆衛生に配慮した体系にはなっていますが
・家庭用は13~20ないし25mm程度⇒10㎥(=家庭用の最低限の水量)は安く設定している(13mmなら80円⇒101円;26.25%up、20mmなら131円⇒165円;25.95%、25mmなら169円⇒213円;26.04%)

・一方で口径30mm以上には基本水量を設定していないのは家庭用と事業用を分ける政策的配慮と言えます。

水道は社会保障の重要な一翼として運営されてきましたが
今は崩されつつあります。

今回の水道料金改訂は疑問だらけ

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表は口径13mmから200mm、そして用途では公衆浴場や特別給水の各区分で改定率がどのようになっているかを比べたものです。
実際に生活水として使うことになる13mmで最も高い値上げ率で逆に口径200mmで月に1000㎥以上も使う、営業区分が最も値上げ率が低い設定になっています。
つまり、生活水に負担を強いて、金儲け営業水には負担を軽くしている構造だということです。

審議会は7月、8月、10月、の僅か3回で決定。暮らしに関わる重要なテーマを資料及び議事録は公開しないで3月議会に改訂条例を提案して、重要事項の審議も不十分なままに決定してしまっています。
本来は
①審議会提出資料は公開
②市民の意見表明の機会を保障
③値上げが必要な根拠を示して市民的合意の努力をすること
④本当に必要な値上げかどうか、他に選択肢を示しながら提案
⑤とくに負担の配分のあり方の合意を得ること
この①~⑤を半年くらい時間をかけてやっていく事が必要でした。

老朽化、耐震対策、漏水や水質悪化などと脅してきますが、その原因や背景には全く迫っていません。

「総括原価」で料金決定などというのは口実で実際には行政的配慮が行われて料金設定が行われており市民の参加による意見で、どうにでも修正できるもの。客観的計算が行われているような説明に負けないこと!
市民提案や市民チェックが可能です。

例として市は3月審議会で算定期間のズレを問われて
「4年間分の財政シュミレーションを行ったところ3年7ヵ月値上げ算定期間でも計画事業の実施は可能」と説明しています。
・算定期間=令和2年4月1日~令和6年3月31日=4年
・値上げ期間=令和2年9月1日~令和6年3月31日=3年7ヵ月
実際は令和3年1月1日~令和6年3月31日=3年3ヵ月に変更しています。
そもそもアバウトな収支計算であることを表明してしまっています。

建設改良費では何が行われているのか審議会では何も議論されていません。
・老朽化といういうけれど減価償却費(貯金)は何のためにあるのか?
・耐震対策が叫ばれて約10年。その間の対応実績との関係では?
今後、明らかにすべきことがたくさん!

県水購入費用額は埼玉県が決めるものなのか?という問に
「自己水源である井戸水量を差し引いた分を県水として購入している」などと的外れな答弁で審議をスルー。
川口市では埼玉県から水を買って流しているのでこの量を調整できればだいぶ違ってきます。

地下水活用の問題は今後の重要な課題
(地盤沈下のために市内の地下水の揚水量を制限している。)
・今後の揚水量をどうするか・・・従来の「心配一辺倒」で良いか
・膨大な設備投資を求められた県営水道事業、ダム建設による水利権確保と負担の問題は?川口市がどれだけ負担するか?
・市民の財産の地下水を一部の企業が揚水している現実・・・水道収益の減少へ
・活用する地下水(深度)の相違からすれば水道事業ではもっと地下水を活用しても地盤沈下は心配ないのでは?それでも揚水を抑制する理由は?

今後必要な調査・検討事項
①利用実態をイメージで掴む。誰がどのように必要とし、使っているか?
(使用料の多い上位100社をみてみよう。上尾市では意外にもサンドイッチをつくる会社が一番水を使っていました。)
②施設改修・拡張事業計画の実態を掴む。これまでの設備改修は?今後は?
③使用料負担の配分の検討。誰にどの様に負担してもらうか?
④運営の実態はどうなっているか?現在の水道はどの様に運営され、改善策はこれからどうするのか?

当面の改善策、将来に向けた改善策をどうするか

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負担の公平として増やされた料金は本当に適切か?
市の文章=「今後の水道料金」では「大口使用者の料金負担が小口利用者よりも大きい構造となっています。こうした料金体系では大口使用者の不公平感に繋がり、人口減少による水需要の減少以上の速さで収入減を招く恐れがあります」とありますが・・・なんの根拠もありません。

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議会を通過した後でも実施時期は遅らせられる①条例とは別に首長判断で延期できます。現にやっています。
②コロナ情勢を反映させて議会の理解を得られる可能性はないか。
その間に審議会の経緯や議会の議論不足、問題点の研究もできないか?

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問題の本質に近づく運動に発展させられないか?
①生活水の値上げ実施時期は遅らせられる。
②計画の見直し・市民合意への接近をさせる。
③公衆衛生を基本にした水道のあり方に接近を!

公共水道の将来を守ろう 3つの危機

①水道民営化は始まっている。
川口市の水道も
・水を送る仕事の費用は職員ではなく委託企業のほうが大きい=浄水場管理ノウハウの衰退。(現存している市の職員は高齢化している)
・配水管の管理も民間に依存している=地震等対応ノウハウをどうする?
・検針、料金計算、請求、徴収、精算管理の業務も民間委託=市民の水の使用実態・支払い実態の把握はできるのか?
(徴収をする職員の人件費が6千万円で委託料は6.78億円にもなる)↓

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②作られた水道財政の悪化(独立採算制度と水需要環境変化=大口使用減少)を口実に民間営利企業に事業を売り渡すコンセッション方式の導入・拡大条件整備=水道法改悪(利益を計上できる仕組みに)
運営権を渡してしまうと公衆衛生理念は後退。

③国からの水道計画指導(強制)
・包括民間委託
・広域化(ご丁寧に垂直・水平・救済の3パターンが用意されている)
・自主合理化。枠の決まった計画策定を指導して強制。
それらを進めるための世論形成・誘導
老朽化、耐震化、負担の公平、などと簡単に言わせないのが課題。

完全総括原価主義ではない仕組みづくりの世論を広げよう

①一般会計繰り入れに道を開こう。
「独立採算」の歴史・実態~災害時余力形成まで

②公衆衛生への国の「努めなければならない」(憲法25条)役割を実行させよう
本格的には国と地方の財政のあり方を変える(辺野古埋め立てより水道の耐震補強に金をまわせ!等)

水道を通じて地方自治を学び、地方から社会を変えていこう

・水道の問題をもっと学ぼう
(水はどこからくるのか?どんな水か来るのか?)
・どんな運営をするべきか?
水を通じて主権者になろう憲法第8章(地方自治)を活かそう。

職員を育てる市民も必要

公務員攻撃は職員を萎縮させて「上意下達型」に閉じ込めてしまいます。役所の職員の手を離れて民間に委託されていくと市民の命の水がコンビニの水(商品)になってしまいます。

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先生の語りは軽やかで会場は和やかなのですが
静かに熱気を帯びていました。
受講された方々は皆、真剣に聞いていました。


サポートはとても助かります。チラシやポスターを印刷したり勉強会の場所を借りたり活発な活動ができるようになります。100円でもありがたいのでどうかよろしくお願いいたします。