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ストレスチェックによるプライバシーの保護等

ストレスチェックとは

 ストレスチェックとは、平成26年6月に改正された労働安全衛生法により、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査 (ストレスチェック) 及びストレスチェックの結果に基づく面接指導の実施を事業者に義務付けること等を内容としたストレスチェック制度のことを指す。
 この制度は、定期的に労働者自身のストレス状況を通知して自らの心理的負担の程度の自覚を促すとともに、ストレスチェックの結果を集団ごとに (例えば、部署、役職、性別、年代、職業、就業年数等) 分析し、集団ごとの分析結果を踏まえて職場改善につなげ、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」の取り組み強化を主たる目的としている

ストレスチェックと個人情報保護法

 ここで、ストレスチェック制度が集団分析に基づく職場改善による労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」を主たる目的としているとはいえ、個別のストレスチェック結果の通知及び通知に基づく面接指導が義務付けられていることから、個人情報の取り扱いが懸念されるところであろう。
 ストレスチェック制度では、実施者及び実施事務従事者以外は、ストレスチェックに関する個人の分析結果及びアンケート用紙や入力データ、分析結果の封入・送付・通知・面接指導の推奨と連絡調整などの個人を特定しうる情報に触れることはできない
 実施者は精神保健にかかる厚生労働省が指定する専門職種に限られており、また、社長・専務・人事部長など人事の権限をもつものは実施事務従事者になることはできない。さらに、実施者及び実施事務従事者には守秘義務が課されるとともに違反には罰則が適応される
 したがって、ストレスチェック制度は個別の分析結果を人事権を持つものに一切知られることなく受験できるよう規定されているといえよう。

例外と注意点

 ただし、以下の注意点がある。

①産業医の面談を希望した場合:
 労働者がストレスチェックの結果に基づいて産業医の面談を希望した場合、事業場は労働安全衛生法に基づき面接指導の結果による医師からの意見聴取を行わなければならないとされている。したがって、労働者がストレスチェックの結果に基づく産業医面談を行った場合は、面接指導に基づく医師からの意見は事業者に提供される
 労働安全衛生法には、労働者が産業医の面談を申し出たことを理由として労働者に不当な扱いをしてはならないと規定がなされているが、産業医面談に基づく医師からの意見に関する事業者の具体的な取り扱い、所感及び判断内容を労働者が知ることはできない
 したがって、制度上は産業医面談の結果に基づく不当な扱いはできないが、実際の活用方法を労働者が知ることはできないため、悪用することは可能となっている。

②個別のストレスチェック結果の通知時:
 個別のストレスチェックの解答用紙、データ、結果、結果の封入及び通知の過程において、実施者及び実施事務従事者以外は関与すらできないことが法に定められていることはすでに述べた。
 しかし、ストレスチェック結果の通知の過程で以下のような問題が生じうる。例えば、実施者及び実施事務従事者には結果の作成と通知の同封は行わせるが、最終的な封をしないまま人事権を有するものが閲覧できる場所に保管されることがありうる。すなわち、個別のストレスチェックにかかるすべての手続きを終えた最後の封をしないままで人事権保有者が閲覧できる場所に置かれることがありうる。

③集団分析結果の通知時:
 集団分析 (例えば、部署、年代、性別、就業年数など) を行う場合は、当該集団の人数が10名を下回る場合は個人が特定される可能性があるため、原則として集団分析を行ってはならないことと定められています。
 具体的には、集団の人数が10名を下回る場合の集団分析では、当該集団のすべての労働者の同意を取得しない限りはその集団分析結果を事業者 (人事権を持つものをふくむ) が知ることはできないとされています。
 言い換えれば、集団の人数が10名を下回るグループにおいて、すべての労働者の同意を得ていれば集団分析を行ってもよいことになります。
 会社の風土や体制によっては、断れない形式で集団分析に同意を求められる場合があります。

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