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太陽家具百貨店事件

ポイント

管理監督者として位置付けていた店長代理が長時間労働による急性大動脈解離により死亡したことを会社の注意義務違反として損害賠償を認めるとともに、管理職に該当しないため不払いの時間外勤務手当を算定したもの

概要

経過

 C型肝炎既往、高血圧性心疾患と狭心症の既往及び高血圧性心疾患の通院治療を受けているAは、入社時に既往と治療状況を会社に申告しないまま勤務し、平成25年1月にクモ膜下出血で休業した店長の代理となった。
 Aは、売上管理、接客販売、商品展示の日常業務に加え、顧客へのダイレクトメール作成など独自の業務を営業時間外に行っていた。タイムカードではAの出退勤は平成26年2月までは10時台の出勤だったが、6/7時の出勤と20時代の退勤が繰り返された。しかし、総務部では売り上げが少ない店舗のため業務量は軽いと認識し、またAを管理職として扱い残業手当支給対象外としたため時間外労働時間も正確に把握していなかった
 平成26年8月夜間、Aは顧客への商品配達作業中に倒れて急性大動脈解離により死亡。死亡前の時間外労働時間は、83時間、82時間、78時間、77時間、66時間、57時間であった。
 呉労働基準監督署は、業務起因性を認めて遺族補償年金などの給付を決定した

判決

  • 基礎疾患の自然経過を著しく超えたのは過重負荷による業務起因性以外にないため業務との因果関係をみとめる

  • 労務管理者はAや従業員に対し具体的な聞き取りを行うなどより実態に即した労務管理をすべきだったが、状況把握の努力を怠り、健康の危険性を把握せず、業務負荷の軽減措置を講じなかったため、注意義務違反となる

  • またAは管理職に該当しないため一定の時間外勤務手当が加算

注意点

  • 令和元年4月の改正労働安全衛生法では、使用者に対して管理監督者を含めた労働時間状況の把握を義務付けている

  • 高血圧と大動脈解離の関連があるため、定期的に血圧コントロールのため通院していたことから、訴因減額は20%

業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない

労働安全衛生法第六十六条の八の三

法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。
 事業者は、前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存するための必要な措置を講じなければならない。

労働安全衛生規則第五十二条の七の三

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