微妙なプレゼンティーイズムのメタ分析:Going to Work Ill: A Meta-analysis of the Correlates of Presenteeism and a Dual-path Model
概要
問題と目的
本研究では初めてプレゼンティーイズムのメタ分析を報告し、有効な相関関係をもとにモデルを構築してアブセンティーイズムとプレゼンティーイズムの要因の差を明らかにする
プレゼンティーイズムには9つの異なる定義があるとされるが、近年では主として次の二つが用いられる
第一は、病気の間に仕事をすること
第二は、病気の間に出席することによる生産性の損失である
本研究は第一の定義を用いる
プレゼンティーイズムはアブセンティーイズムよりも生産性の低下に寄与していることが指摘されている
プレゼンティーイズムは後のアブセンティーイズムを予測するとか
プレゼンティーイズムによる職場の感染、職場の安全性への影響も指摘されている
しかし、生産性が低下してもないよりはよいこと、病気を抱えても職場にくることが市民活動やコミットメントの意思表示とされることからネガティブな側面ばかりではない
プレゼンティーイズムの観点
本研究のモデルは、要求-コントロール-サポートモデル (Demand-control-support model; DCS)、要求度-資源モデル (Job demands-resources; JD-R)、および代替モデル (Caverley et al., 2007) により構成される
さらに、文脈 (Aronsson & Gustafasson, 2005) および個人的要因 (Johns, 2010) も考慮したものである
プレゼンティーイズムは病気による健康の低下と同時に、仕事へのモチベーションの高まりという二つのパスを生じる
(センスがない、というよりも本研究で対象としているプレゼンティーイズムは出勤したいと思っているが病気のせいでできなくなったという方を想定しており、現在の日本が対象としているプレゼンティーイズムではない
(しかし、そういう方ももちろんおられるため、プレゼンティーイズムの対象が二つあるととらえて読み進める
(もしかすると、これまでの概念でとらえられなかった職場の苦しみに言及している点で、とても鋭い発想かもしれない
プレゼンティーイズムと健康、欠勤、パフォーマンス
うつ病は適切とは言えない欠勤の理由とみなされているという具体的な異文化的証拠がある (早く次を読みたいです、すみません)
特にうつ病や一般的なこころの問題は職場で開示するのが難しい、なぜなら偏見にさらされるからである (海外でも、、終わってる、、)
したがって、うつ病や心理学的問題はプレゼンティーイズムと関連する
アブセンティーイズムの制限
代替仮設 (Caverley, Cunningham & MacGregor, 2007) によると、プレゼンティーイズムの要因の一つは欠勤の制限である
したがって、組織の方針、雇用の不安、個人の経済的困難、欠員補充の困難などが欠勤の制約となり、結果的にプレゼンティーイズムを引き起こす可能性があると考えられる
ほかには、常勤かどうか、個人的な経済状況なども影響すると考えられる
仕事の要求度とストレス経験
(繰り返すが、適切かどうかは置いておいて、本研究ではプレゼンティーイズムの結果とされているものの多くを、先行要因としてモデル化している
(つまり、仕事の要求度や負荷が多いと、逆に出勤を期待されていると感じて疾病を抱えながら勤務せざるを得なくなるというものである
(この仮説には補足が必要で、仕事へのモチベーションというパスは低下にいたるが、出勤を強制されていると感じるようになるとして仮説にいたっている
職場と個人の資源
仕事のコントロールは健康問題を抑制し、
医師や看護師など他人を援助する職業人がセルフケアを怠ることが知られている
支持的な職場は従業員の資源となり、病気からの回復や悪化を防ぐための休養をとる自信を従業員に与える
また、従業員や職場を信用できると病気の自己開示がすすむとされている
個人の資源 (特性) として、楽観性は健康でなくてもあまり気にしない、誠実性は限界まで仕事を継続する態度に結び付く可能性がある
仕事の態度と正義
組織的に公平に扱われているという感覚、エンゲージメントの感覚は、医学的に問題があっても出勤する意欲をもたらす
2経路モデルDual-path model: Indirect Effects
方法
プレゼンティーイズムは、病気もしくは気分が悪いにもかかわらず出勤した日数、本当なら病欠をとるべきにもかかわらず出勤した日数、病気の期間を訪ねその間に欠勤のないものという定義があったが、いずれも分析対象とし、感度分析を行った
分析には相関係数を使用し、相関係数、標準化回帰係数、オッズ比をすべて相関係数に変換した
結果
プレゼンティーイズムとの相関のメタ分析
母相関が.20以上のものを取り上げる
プレゼンティーイズムを促進:
アブセンティーイズム (.35)
生産性の低下 (.21)
欠勤の強い制約 (.39)
仕事の負荷 (.28)
人員不足 (.25)
ストレス (.25)
情緒的消耗 (.36)
プレゼンティーイズムを抑制:
健康状態 (-.31)
楽観性 (-.22)
Meta-analytic SEM
プレゼンティーイズムへの影響を見たいので、図のモデルよりも、ダイレクトエフェクトのほうが意味がある
職場環境の安全性が脅かされている、仕事の要求が多いほどプレゼンティーイズムに直接結びつく
二重プロセスモデルが示されたと記載があるが、単相関、ダイレクトエフェクト、間接効果の影響の向きが複雑でわからなくなってしまっている
単相関と直接効果によって、職場のconstraint (欠席、仕事への要求、人員不足、安全性、情緒的消耗間) などによるアブセンティーイズムが生じているととらえたほうがわかりよい
つまり、最近の動きで目的としているプレゼンティーイズムではなく、よくみなが話している「やすみたいけど(やめたいけど)この状況じゃ無理だよね」という現象・プレゼンティーイズムを記述しているといえる
文献
Aronsson, G., & Gustafsson, K. (2005). Sickness presenteeism: prevalence, attendance-pressure factors, and an outline of a model for research. Journal of occupational and environmental medicine, 47(9), 958-966.
Caverley, N., Cunningham, J. B., & MacGregor, J. N. (2007). Sickness presenteeism, sickness absenteeism, and health following restructuring in a public service organization. Journal of management studies, 44(2), 304-319.
Johns, G. (2010). Presenteeism in the workplace: A review and research agenda. Journal of organizational behavior, 31(4), 519-542.
Miraglia, M., & Johns, G. (2016). Going to work ill: A meta-analysis of the correlates of presenteeism and a dual-path model. Journal of occupational health psychology, 21(3), 261.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?