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Self-Compassion and Coping: a Meta-Analysis


Purpose of Reading

  • 認知行動療法がアナリティックアプローチへのアンチテーゼとして登場したと理解されている (まだ出典を確認してはいない)

  • そして認知行動療法の系譜に例えばマインドフルネス・セルフコンパッション・アクセプタンス&コミットメントが位置付けられるとする指摘がなされてきたが、この見解には不満を抱く認知行動療法家が多いと思われる。なぜなら、上記の介入原理は論理的なステップとは異なっているためである

  • 私がこれまでの文献をみるに、その理由は、マインドフルネス・セルフコンパッション・アクセプタンス&コミットメントはストレスマネジメントやストレスリダクションの文脈から生じており、ストレスに対してサイエンスとして (効果検証ではなく) 迫ろうとしているアプローチだからだと感じている

  • それを検証すると同時に、ストレス・コーピングの理解を深める

Abstract

セルフコンパッションSelf-compassion、すなわち自己への前むきで思いやりのある態度はストレスフルな状況でのコーピングと相関関係にある重要な要因であると明らかにされている。セルフコンパッションが高いと、要求が強いあるいは苦痛な状況で適応的なコーピングがより行われ、不適応なコーピングが少なくなるとされている為、メタ分析によりセルフコンパッションと適応的・非適応的コーピングの関係を明らかにする。その際、年齢・性別・地域特性などのモデレータも考慮する。
システマティックな文献検索により、k=136、N=38913のサンプルを対象にランダム効果モデルによるz変換されたピアソンの相関係数を統合した。その結果、セルフコンパッションと適応的コーピングの間には正の相関 (r=.306)、セルフコンパッションと非適応的コーピングの間には負の相関が認められた (r=-.500)。セルフコンパッションと情動焦点型コーピング (r=.340)、問題解決型コーピング (r=.250)の間にも正の相関が認められた。年齢はこの関連のモデレータとなっている

(因果関係は良くわからないが、セルフコンパッションと適応コーピングの双方からのアプローチが良いと思われる
(但し、コーピングは特性と状況依存的なプロセスによる双方の観点が必要であることは理解する

(また、適応的・非適応的コーピングという分類がどの研究によって明示されたのか明らかにする必要がある。研究がないままでの使用なら間違っている

Introduction

  • セルフコンパッションは東欧文化圏から生まれたもので危機的状況に置いて自らをケアしようとする態度である (Neff, 2003b)

  • セルフコンパッションは心理学的な病理の防御因子であり (MacBeth & Gumley, 2012; Muris & Petrocchi, 2017) かつウェルビーイングの促進因子とされる

  • また、セルフコンパッションとストレスに関連するコーピング方略の関係に関する研究は、セルフコンパッションと適応的コーピングの正の相関、及び非適応的コーピングとの負の相関を指摘しているが包括的な知見は得られていない (個別のコーピングについて言及しており適応的・非適応的の意味はよくわからない)

  • セルフコンパッションは、self-kindness, sense of common humanity, mindfulnessの3構成要素を特徴としている (Neff, 2003a)

  • Self-kindnessは、forgiveness, empathy, sensitivity, warmth and patienceを含む

  • A sense of common humanityは、つらい気持ちや状況は自分だけではなく他人も同じであると感じることを指している  (これは表現が極端すぎて日本人の専門家には理解しがたいと思います、私はこの意味にハッと気づいたことがあったので補足します。例えば、職場で長時間労働に苦しむ職員がいたとき、法令違反なのに誰も助けを求めず、しかも健康に害することもなく乗り越えていたとします。なぜでしょう。それは、所属している部署皆が苦しいと言いながら頑張っていたからです。もし、他の全員が定時退勤なのに、一人だけが法定労働時間外勤務が月100時間を超えつづけたら、すぐに心が壊れるでしょう

  • (もう一つは、ハラスメントを行う上司がいても、それが個人に対してある特別な意味を持っている場合にはその職員は心が壊れるかすぐに休職・退職してしまうでしょう。しかし、例えば全員に対して暴言をはく上司の場合、部下はみなで耐え忍んでいるかもしれません

  • Mindfulnessは、回避と過剰な同一視の間で苦痛を伴う経験をバランスよく認識することを指す

  • さて、ストレス・コーピングの定義はLazarus (1966) に定義された通りだが、のちに拡張されて下冤罪ではストレスへの機能的反応の全てを包括的にさしている (Compas et al., 2017; 本当なのかざっと読んでみます→そうではなくその様にとらえて効果検証しようとした研究者がいることを示していました)

  • コーピングの分類方法がいくつか提案されているが、伝統的に用いられている (1)) 問題焦点型と情動焦点型コーピング (Roth & Cohen, 1986; この分類はLazarus & Folkman, 1984にある) (2) 適応的・非適応的コーピング (Carver & Connor-Smith, 2010; 定義にはいろいろあるが、本研究で引用されているものを使用したほうがいいと思われる)

  • 問題焦点型コーピングは問題の原因に影響を与えようとする。例えば、数週間後にテストを控えている学生はやることリストを作成して試験に積極的に備えることができる。問題焦点型のk-オーピングは通常より高い心理的なアウトカムと長期的な精神的健康が予想される (Lazaus & Folkman, 1984)。

  • 情動焦点型コーピングは否定的な感情を減少させようとするもので、情緒的支援を求めるような自己制御方略、発散、ストレスの多い場面の回避、否定的な考え (反芻や心配) に焦点を当てるなど幅広い方略が含まれる。短期的には役立つものの長期的な結果は悪いと考えられている (Connor-Smith & Flachsbart, 2007; Lazarus & Folkman, 1984; 具体的な文献が記載されていない)。具体的に、学生は試験勉強を回避することで一時的な感情は良くなるかもしれないが最終的には不合格になりより負の結果を引き起こすかもしれない。

  • 情動焦点型コーピングは、さらに情動のアプローチによるコーピング (認知的再構成や受容) と情動回避によるコーピング (否認、希望的観測など) に分類され (Schnider et al., 2007)、後者はほぼ常に機能不全となるが、情動のアプローチによるコーピングは適応性が高く、特に脅威が制御不全の場合 (末期疾患など) や過去に生じたストレスの強い変えられない出来事 (親しい友人の死など) の場合、問題に焦点を当てるよりより肯定的な心理的調整をもたらしうる (引用文献に該当する箇所がない)

適応的・非適応的コーピング
  • 本研究では、適応的・非適応的コーピングの2分法を用いる適応的コーピングは、ストレスの多い状況で経験されるストレス要因または関連する感情に積極的に対処しようとするコーピング戦略を指すため、より持続可能な長期的解決をもたらす。

  • 一方で、非適応的コーピングは、ストレス要因あるいはそれに関する感情から逃れるコーピングが含まれ、長期的には機能不全と考え得る (ここでは理論的な話だけをしている)

  • 反芻と心配は当初のコーピングに含まれていなかったが、長期的には心理学的な健康に対する防御効果に乏しいためにコーピングに関する新たな文献ではサブカテゴリ化されている

  • ところで近年、ストレスマネージメントの領域で、セルフコンパッションが関心を集めている

  • Finlay-Jones (2017) は、セルフコンパッションの高さがストレス要因の性質、ストレス要因の評価、生理学的・感情的反応及びコーピング方略の使用に影響を及ぼすことを明らかにした

  • さらに実際、セルフコンパッションは不適応なコーピングと負の関連があり、適応的なコーピング特に感情アプローチによるコーピングと正の関連があると示されてる (Leary et al., 2007; Neff et al., 2005; Sirosis et al., 2015)

  • 特に問題焦点型アプローチとの関係について、ストレスフルな状況の制御可能性・驚異の強さにより影響を受ける可能性が示唆されている (Chishima et al., 2018)

  • ただし、まだ新しいタイプの不健康なコーピング (反芻、心配など) のコーピングとの関連は研究されていない


Method

Literature Search

  • (詳細は割愛)

  • パブリケーションバイアス抑制のため、全該当論文の第一著者に欠損値や学位論文・文献のチャプター・ポスターで用いた資料について尋ねた

  • Kristin Neffのウェブサイトの更新情報 (論文、学事い論文、非公開の資料) を参照

  • German Psychological Society、Association for Research in Personality、European Association for Research in Personality、European Association of Personality Psyhcologyのメーリングリストを活用して出版していないデータの保有を尋ねた

  • その結果、9つのデータを入手した

Selection of the Studies

  • 除外基準:コーピングの尺度がない、セルフコンパッションの尺度がない、レビュー、実証研究ではない

  • 包含基準:コーピングが最低一つの標準化された尺度により測定されている、セルフコンパッションがSCSあるいは短縮版で測定されている、対象者が17歳以上である、ベースラインにおけるセルフコンパッションとストレスコーピングの関連が検討されている

Coding of Study Characteristics, Measurements, and Correlations

(割愛)


Results

Descriptive Information

  • 136サンプルによる130件の研究による効果量

  • サンプルのほとんどは西洋諸国 (k=126)、東洋は10件のみ

  • サンプルサイズで加重平均した平均年齢は30.16 (SD=14.21)、女性の割合は66% (SD=14.63)

Association between Self-Compassion and Coping

  • ご覧の通り、

  • セルフコンパッションは適応的コーピング (つまり問題となっている状況や苦痛となっている感情に直接働きかけるコーピング) と中程度から弱い正の相関

  • セルフコンパッションは非適応的コーピング (つまり問題となっている状況や苦痛な感情に働きかけず、関与しない、回避する、抑圧する、反芻する、自己批判する、心配するなどのお方法) と中程度から大きな負の相関

Outlier and publication bias

  • Outlierの影響なし (除外後の相関係数及びp-valueの比較から)

  • 出版バイアスなし (Egger's regression test)

Moderator Analyses on Demographic Variables

自己への思いやりと適応的コーピングの関係・問題焦点型コーピングの関係及び情動アプローチコーピングの関係の強さは、年齢が高まるにつれて強まった


Discussion

(モデレーター分析に最も興味があったが、年齢による相関への影響は理由不明としか記載されていなかった
大変残念だった)

Reference

  1. Chishima, Y., Mizuno, M., Sugawara, D., & Miyagawa, Y. (2018). The influence of self-compassion on cognitive appraisals and coping with stressful events. Mindfulness, 9(6), 1907-1915.

  2. Compas, B. E., Jaser, S. S., Bettis, A. H., Watson, K. H., Gruhn, M. A., Dunbar, J. P., ... & Thigpen, J. C. (2017). Coping, emotion regulation, and psychopathology in childhood and adolescence: A meta-analysis and narrative review. Psychological bulletin, 143(9), 939.

  3. Connor-Smith, J. K., & Flachsbart, C. (2007). Relations between personality and coping: a meta-analysis. Journal of Personality and Social Psychology, 93(6), 1080–1107.

  4. Ewert, C., Vater, A., & Schröder-Abé, M. (2021). Self-compassion and coping: A meta-analysis. Mindfulness, 12, 1063-1077.

  5. Finlay‐Jones, A. L. (2017). The relevance of self‐compassion as an intervention target in mood and anxiety disorders: A narrative review based on an emotion regulation framework. Clinical Psychologist, 21(2), 90-103. (セルフコンパッションとストレスマネジメント全般)

  6. Lazarus, R. S. (1966). Psychological stress and the coping process. McGraw-Hill.

  7. Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, appraisal, and coping: Springer.

  8. Leary, M. R., Tate, E. B., Adams, C. E., Allen, A. B., & Hancock, J. (2007). Self-compassion and reactions to unpleasant self-relevant events: the implications of treating oneself kindly. Journal of Personality and Social Psychology, 92(5), 887–904.

  9. Neff, K. (2003a). The development and validation of a scale to measure self-compassion. Self and Identity, 2, 223–250.

  10. Neff, K. D., Hsieh, Y.-P., & Dejitterat, K. (2005). Self-compassion, achievement goals, and coping with academic failure. Self and Identity, 4 (3), 263-287.

  11. MacBeth, A., & Gumley, A. (2012). Exploring compassion: A meta-analysis of the association between self-compassion and psychopathology. Clinical Psychology Review, 32, 545-552. (ストレスを含んでいる)

  12. Neff, K. (2003b). Self-compassion: an alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2, 85–101.

  13. Schnider, K. R., Elhai, J. D., & Gray, M. J. (2007). Coping style use predicts posttraumatic stress and complicated grief symptom severity among college students reporting a traumatic loss. Journal of Counseling Psychology, 54(3), 344.

  14. Sirois, F. M., Molnar, D. S., & Hirsch, J. K. (2015). Self-compassion, stress, and coping in the context of chronic illness. Self and Identity, 14(3), 334-347.



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