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ハラスメントを調べる

問題と目的

 職場でのいじめは増加しており、就業環境の重要な問題として認識されてきている。欧州諸国の先行研究では、Negative Acts Questionnaire-Revised (NAQ-R: Einarsen & Hoel, 2001) を用いて職場いじめの発生率 (3.6-16%の職場でいじめが存在する) 及び職場いじめがメンタルヘルスに及ぼす悪影響が明らかにされてきたが (例えば、抑うつ症状、PTSD症状、心身の健康問題、線維筋痛症の発症、睡眠導入剤の使用)、わが国では職場いじめに関連する研究は多くはない。
 そこで本研究では22項目版のNAQ-Rの日本語版を作成し、公務員を対象とする信頼性、構成概念妥当性、併存的妥当性の検証を目的とした。

方法

手続き

 組合を通じて関東の公務員4,072名にアンケート用紙を郵送し、2,194名の回答を得た (回収率46.7%)。欠損値のある回答者を除外し、1,626名 (男性830名、女性796名) を分析対象者とした
 本研究手続きは、東京大学医学部の倫理審査委員会の承認を得ている。

尺度

①NAQ-R Japanese Version
②LIPT  for workplace bullying
 構成概念妥当性を検証するために使用した。LIPTは、職場いじめを測定する45項目2件法の尺度である。過去12か月間のいじめられた経験に関する各質問項目について、該当の有無を回答する (0=no, 1=yes)。該当する場合はその期間について、最低1日、一週間以上、最低でも6か月間のなかから選択する。合計値がLIPTスコアとなる。
 また、最後に職場いじめに関する操作的定義を明示し、地震が職場いじめの被害者と思うかをyes, noで回答を求める。
③K6 for psychological distress
④Intragroup and intergroup conflict
 職業性ストレス簡易調査票の対人関係項目
⑤Worksite social support
 日本語版Job Content Questionnaireの管理者及び同僚からのサポート
⑥Demographic variable
 性別、年齢、職位 (管理者、ホワイトカラー、ブルーカラー、対人援助、そのた)、就労形態 (正社員、契約、パート)

分析

①性別ごとの属性分布
②内的整合性 (NAQ-RのCronbach's alpha)
③内的妥当性 (maximum likelihood method, promax rotationによるeigen values more than 1 criteriaでfactor analysis)
 先行研究は、one-factor/two-factor (a person-related, work-related bullying) を示しているが、three-factor (person-related, work-related, physical intimidation) が想定されるため、各因子分析につきGFI, AGFI, CFI, RMSEAを算出し、GFI, AGFI, and CFI > 0.90 and RMSEA < 0.05 基準でモデルを評価する
④構成概念妥当性 (Pearson's correlation coefficients with NAQ-R)
 with bullying indicator/interpersonal relations at work/psychological distress
⑤基準関連妥当性 (bullying victim or notに基づいて各尺度値を性別年齢をcovariateするANCOVAで比較

結果

 1因子モデル、内的整合性 (Cronbach's alpha)、基準関連妥当性 (男女とも) の示された尺度と考えられる。
 尚、本尺度の探索的因子分析の結果は3因子モデルを示したが、各因子数モデルはクライテリアをみたさなかった。Factor1が最大分散を示したことから、1因子モデルが採用されている。

引用文献

Kawakami et al. (2010). Measuring workplace bullying: reliability and validity of the Japanese version of the negative acts questionnaire. Journal of Occupational Health, 52, 216-226.

尺度

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