ライターがあること

我が愛すべきライターたちが今,一斉にその役目を終えようとしている。

私は人生で一度もライターを捨てたことがない。忘れて新たに購入したからとか,捨て方がわからないとかそういった平凡な理由であった。当然ライターは増えていき,小さな引き出しには収まらず,部屋中に溢れ出し,散っていった。

ある日ベランダに出ると,床には梅雨が溜まっており,記憶にないライターが沈んでいた。すくい上げて火をつけるが当然つかない。

梅雨が明けてもライターはつかなかった。思えば私はこのライターをいつ買ったのだろうか?どれほど使ったのだろうか?

終わらせなければならない。私はしばらくライターを買わないことにした。小さい,曲がる,数度に一度しかつかない。使いずらいことこの上ない。

引き延ばしてきた我が愛すべき灯火が消えていく。すごい速さで消えていく。私が数年かけてゆっくり経験するはずの別れが,一斉に。

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