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六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成

ずっと気になっていた本。
文庫本になっていたので手にとってみた。



美容室の人に「本当に染めていいんですか?」と聞かれたのあの時だけだった。大学生で就活活動が始まるとき。人より若干茶色いこの地毛を黒染めしようとした時。

この小説のなかで、「就活は混乱の時期」とあるが、激しく同意したい。

自分のこれからの人生が決まるのだから、慣れない履歴書を書いたり、面接の練習をしたりするしかない。それ以外の方法で就職するのは一般的な大学生の選択肢にないのだから。

そして、その時は本当に「自分をよく見せようと人事に嘘をついても、何か得体の知れない力でばれてしまうのでは?」と本気で悩んでいた。
今なら「そんなはずないやん?」とはっきり言えるのだけど。

そして、まったく自らを装飾をせずに闘うことができる人って、絶滅保護動物ばりに少ないのでは?とも思う。

嘘と真実の混ざりものはこの世に沢山ある。

作者の伝えたいことは、みんなに多面性があって当たり前だということではないだろうか。

その人を知るとはって何をもって知ったといえるのだろうか。人生で比較的長い時間を一緒に過ごす家族のことでさえ、知らないことは沢山ある。

それなのに他人を知った気になって、断罪しそうになる、いや、したこともある。
そんなときに、頭の片隅にこの本の内容を入れておきたいと思った。


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