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その矛盾を「美しい彼ロス」という。

少々ネタバレあり

劇場版を見てから美しい彼に再ハマりして原作小説を3巻全て読んだ。すごく夢中になって読みふけった結果何が起きたか。
本格的な美しい彼ロスに陥った。

最初に言っておくと原作小説は素晴らしかった。子供と大人の狭間の時期の先の見えない不安をそのまま体験した心地になった。1巻と2巻は展開は知っていたためある程度冷静に見れた。しかし3巻は完全に知らない内容だったので、これからどうなるか分からないままもがき続ける不安感がより真に迫ってリアルに感じられた。

その上で読後、実写版の美しい彼の続編は今後滅多なことでは出ないだろうという予感めいたものを感じてしまったのだ。

というのも劇場版の『美しい彼 エターナル』はシナリオ自体は原作2作目の『憎らしい彼』をベースとしているが、登場人物の心理的成長は原作の3作目『悩ましい彼』の部分まで描ききってしまっている。
劇場版を初めて見た時平良の成長具合が凄まじくて、いまいち共感ができない部分があった。おそらくその原因はシナリオは1巻分だが平良の心理的成長は2巻分であるという差にあるのではないだろうか。

言っておくが劇場版を批判している訳では無い。
実写化映画は原作に忠実であればいいというものでは無いだろう。映像と小説じゃ表現方法も時間感覚も違う。シナリオを多少変えてでも作品と登場人物の芯の部分を表現することを優先すべきだ。
その点で美しい彼の実写化は素晴らしかった。
原作小説2作目3作目の根本に流れる「永遠」のテーマを見事に読みとって映画の中に組み入れた。
だからこそこの映画が実写化の終わりになると感じてしまうのだ。

この映画は原作の根本のひとつを描き切り、原作の平良の成長も一足飛びに描ききってしまった。シナリオ自体のストックはあるが平良の成長のストックがない。私の平凡な頭では映像化の続編の糸口というものが何一つ浮かばないのだ。

原作の4作目が出ればまた別だが……(出てくれ……頼む……)

私は続編があればあるだけ良いというタイプでは無い。好きだから続編を望んでしまうが、好きだからこそ半端な続編を出すくらいならそのまま終わって欲しいとすら思う。
美しいものは美しいままに終わらせて欲しい。

劇場版美しい彼は実写化版の彼らの物語の終わりとして素晴らしかった。彼らはこれからも性懲りも無くすれ違いお互いに傷ついたり傷つけたりを繰り返すだろうが、それでもその手を離さないこと、離さない努力をしようということを誓えた。恋物語の終わりとしてはこれ以上ないものだろう。

続編を望む気持ちと美しい終わりを崩さないで欲しい気持ち。この矛盾の中で苦しめられて、私は久しぶりにロスの気持ちを味わっている。

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