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『囲碁と将棋はどう違う?』(3)

 (マガジン『作家・湯川博士』)
 
 作家、湯川博士の『囲碁と将棋はどう違う?』を採りあげているが、内容が内容だけに、かなり長い。まだまだ続く。
 
 前回(2)では囲碁の起源に触れたが、この(3)では将棋の起源。この文章は将棋の本に載せたものなので、将棋の方が説明を端折れるので、短めに書いている。

 将棋の起源伝承については、いろいろな説があるが、標準的なところをおおまかに記しておく。
 
 古代インドでは4人制のチャトランガというゲームがあった。これは戦争を模したもので、戦争好きの王様が戦さのかわりに作ったという伝説がある。チャトランガは賭けを前提にしたゲームで、王で王をとれば倍づけ、他の3人ともやっつければ4倍づけで、進行はすべてサイコロの目による。このチャトランガが2人制になり交互に1手ずつ指すように改良されたのが、西洋将棋(チェス)であり、中国象棋である。
 
 ところがこれらがどういう経路で日本に伝わり、どこで日本将棋に変化したのかは、はっきりわかっていない。むろん囲碁といっしょに中国象棋も入ってきただろうが、相違点が多すぎる。平安時代の小将棋などはむしろタイ将棋に近いから南方渡来の可能性も大きい。しかし大将棋、中将棋の駒の文字は明らかに中国のもの。結局、中国と南方から来たものを日本人がミックスして、日本独特の将棋にしたというあたりが、無理のない推理になるようだ。
 
 そして古将棋は、駒はどんどん取るままだったが、室町の末期、戦国時代に、駒の再使用ルールができた。このことは、敵の大将のみを殺し将兵は生かして味方に引き入れた戦国時代の影響と見られている。

 
 湯川師匠は、将棋の起源について詳しく、異説や自身のアレンジしたものを語ることがよくある。
 しかしここでは、一般的な記述でさらりとまとめている。
 
 初期のチャトランガは、将棋よりも麻雀に似ている。サイコロを使うところや、勝った時の報酬額が違うところなど。読んで、そう思った人も多いと思う。しかし師匠は、その辺りには触れない。若い頃に雀ゴロだったこともある師匠だから、当然承知だろうが、この文章にそれを入れるのは邪魔だと考えたのだろう。
 削る能力の高い書き手なのだ。元々の才能もあるだろうが、ライター時代に鍛えられたということもあるだろう。
 
(4)につづく

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将棋がスキ

書き物が好きな人間なので、リアクションはどれも捻ったお礼文ですが、本心は素直にうれしいです。具体的に頂き物がある「サポート」だけは真面目に書こうと思いましたが、すみません、やはり捻ってあります。でも本心は、心から感謝しています。