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『kotoba』将棋の現在地

 3月5日発売された集英社の雑誌『kotoba』は、将棋特集。
  
 先日湯川邸、いや湯川亭に行ったときに恵子さんに、夢枕獏さんとの対談が載ると教えられていたので、発売日を楽しみに待っていた。
 
 そして当日、1軒空振りのあと、2軒目で無事購入。帰ってさっそく読んだ。
 
 この将棋特集、全体的に熱のこもった記事が並ぶ。後藤元気さんが巻頭寄稿ということでも、それが伝わってくる。
 
 巻頭寄稿のあとは Part1 と Part2があり、Part1の方は棋士の生きざま。谷川浩司、佐藤康光、先崎学×中村太地、森内俊之×香川愛生×山口恵梨子×折田翔吾、木村一基、鈴木大介×近藤誠一、永瀬拓矢と、将棋を万人に語るうえでまぁ好メンバーと言える顔触れだ。
 
 Part2の方はかなりひねった書き手が集う。木村草太、若島正、夢枕獏×湯川恵子、奥泉光、柴田ヨクサル、隺峯、白瀧佐太郎、小松宰。これはコアな将棋ファンでも読み応えある内容だ。
 
 
  
 恵子さんと夢枕獏さんの対談は、真剣師のこと。

 真剣師とは、カネをかけて対局する将棋指しのこと。もちろん将棋連盟に所属するプロではない。例えれば、正規の医師免許を持っていないブラックジャックのようなものだ。将棋クラブに居着き、1局いくらで勝負するのだ。真剣師自身がウマとなり、乗り手たちが何十万、何百万と賭けたりもする。
 
 夢枕獏さんは真剣師の小説『風果つる街』を1987年に出した。一般に、小説の書き手はアウトローが好きだ。特に違法賭博。阿佐田哲也の麻雀放浪記や、佐藤正午の車券で生活している人を描く一連の小説など、多くの優れたギャンブル小説がある。
 
 そして夢枕獏さんは真剣師を登場人物にした『風果つる街』を1987年に出した。この『kotoba』でも触れているけれど、真剣師のことで分からないことは恵子さんに聞いたとのこと。恵子さんは将棋界の裏街道を歩いてきた人に、異常に詳しいのだ。そのほとんどと面識がある。
 
 上記、ブラックジャックという例えをしたが、ブラックジャックとちょっと違うのは、正規のプロよりは弱いということだ。ブラックジャックは国家資格を取ることなく開業していたが、真剣師はプロの資格を取りたかったが、取れなかった人だ。そこが少し違う。いや、大きく違うと言っていいかもしれない。その挫折感や屈折した矜持が、妙に哀愁をかきたてるのだ。小説の題材に適した人物と言える。
 
 いずれそういう人物を取り上げてみたいものだ。そのときは、ぼくも恵子さんからいろいろと教わって書いていきたい。
 
 表紙の画像を表題に載せたかったが、著作権の問題もあるので、代わりに恵子さんが将棋ペンクラブに差し入れしてくれたお弁当の画像を載せます。

書き物が好きな人間なので、リアクションはどれも捻ったお礼文ですが、本心は素直にうれしいです。具体的に頂き物がある「サポート」だけは真面目に書こうと思いましたが、すみません、やはり捻ってあります。でも本心は、心から感謝しています。