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教育エビデンス:成績別クラスの効果

先日の記事では、同じクラスの中で生徒を成績別にグループ分けし、難易度の違う課題やグループワークを与えた場合(Setting and streaming)の効果についてご紹介しました。今回はクラスごと成績順に分けた場合の調査です。

*前回の記事はこちら:

キーテーマ

成績別クラス・実験 

結論

成績別クラス分けとは、

  • 特定の科目について、成績別にクラスを分ける。

  • または、科目に関わらず、クラスを成績別に分ける。

成績別クラス分けの効果はない。
(多くの場合、クラス分けをしなかった場合と比べて成績は変わらなかった)。

  • 成績の良い生徒にはゼロまたは僅かなポジティブな効果があった(+1ヶ月分の効果)。

  • 成績の良くない生徒には小程度のネガティブな効果があった(-3ヶ月分の効果)。

懸念点

  • レベルの低いクラスの生徒の自信や、努力によって達成を改善できるという信念に悪影響を与える可能性がある。

  • レベルの低いクラスに、経験の浅い教師が割り当てられる可能性がある。

実験デザイン

イギリスのEEFが成績別グループワークの効果に関する先行研究の58個の平均的な影響を分析した。
結果、平均すると効果は見られなかった。


留意点

58個の論文には、古い研究が多く含まれているため、現状を正しく反映していない可能性があることに留意が必要です。またランダム化比較試験でない研究も多く含まれるため

エビデンスレベル:複数の研究の平均

編集後記

習熟度の違う生徒を同時に教えるのは本当に大変ですよね。これまでのエビデンスシリーズで、習熟度別クラス分けやクラス内の成績別グループの効果は低いのに、共同学習や教え合い、学び方を学ぶ効果が高いという実験結果をご紹介しました。これらの結果を俯瞰してみると成績を伸ばすことができる教師の条件は、「教え方がうまい」というよりも、「生徒同士の学び合いを促進し、生徒が自分で学習計画を立案、実行、振り返りができるようサポートすることができる」なのかもしれませんね。

文責:識名 由佳 

過去記事のまとめはこちら
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EEF  (2021) Setting and streaming. Retrieved May 20, 2022, from 
https://educationendowmentfoundation.org.uk/education-evidence/teaching-learning-toolkit/setting-and-streaming


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