国際比較 競争 vs 協働学習
新指導要領では「主体的・対話的で深い学び」が推奨されており、その一環としてグループ学習の時間が増えています。グループ学習は効果的に行われれば高い学習効果を期待できる一方(グループワークの効果)、潜在的な課題もあり全ての学習に常にベストな手段とは言えません(グループワークに適さない課題はあるのか?)。同様に、競争も適切な環境であれば学習をスリリングで楽しいものになるが過度に競争的すぎると負の影響があると主張する研究者もいます。
では実際に今の生徒達の学習環境は競争的なのでしょうか、協働的なのでしょうか?
今回は、生徒達は自分の学校を競争的ととえらえているのか共同的ととらえているのか、競争的/協働的環境と成績の関係性についての調査をご紹介します。
結論
全体的に協働が競争を上回った
日本の学生は他のOECD諸国と比べて、自分の学校が「協働的」と回答した生徒の割合が多い
協働優位:デンマーク、ドイツ、日本、オランダ
競争優位:ブラジル、マルタ、イギリス、アメリカ
OECD加盟国の平均、および約78%の教育システムにおいて、生徒が仲間との協力関係が強いと答えた場合、読書でより高いスコアを獲得した
社会経済的な状況を考慮した上で、自分が競争的であると考える生徒は、そうでない生徒よりも読書で高い得点を獲得した
分析手法
15才の生徒に対するアンケートの国際比較(2018年のデータ)
競争:下記の3つの質問に対しての回答を数値化
(1)生徒は競争を重視している
(2)生徒は互いに競争している
(3)互いに競争することは重要だという意識を生徒は共有している
協働:下記の3つの質問に対しての回答を数値化
(1)生徒は協力することを重視している
(2)生徒は互いに協力し合っている
(3)互いに協力しあうことは重要だという意識を生徒は共有している
留意点
あくまで相関関係を示すデータであり、競争的システム・協働的システムが学力に及ぼす影響に関する因果関係を示すものではありません。
編集後記
アジアの教育システムは競争的だと言われることが多い中、日本が最も協働的な国の一つというのは意外な結果かもしれません。チーム対抗戦のように競争と協働を上手に組み合わせるのも楽しそうですね。協働学習がうまくいくための条件などの研究も今後ご紹介したいと思っています。
文責
識名由佳
参考文献
https://www.oecd-ilibrary.org/sites/0d62bf6c-en/index.html?itemId=/content/component/0d62bf6c-en