赤ちゃんが大人から学ぶ忍耐力
その可愛さで癒しを届けてくれる赤ちゃん。目を大きく見開いて、キョロキョロしている姿等はたまらなく愛らしいですね。実際何を考えているのかは一見わからない赤ちゃんですが、実は周囲の人の様子や癖を見て学んでいるという説がとても有力なんです。今回は、「赤ちゃんは大人の観察によって我慢強さを身に着けられるのか?」というテーマに関する研究を紹介します。子育て中の親御様、必読です!あなたの日ごろの行い、子供に見られているかも・・・?
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キーテーマ
幼児教育・忍耐力・ロールモデル
結論
目の前の大人があるタスクに取り組み続ける様子を見た赤ちゃんは、その後自分に与えられたタスク(遊び)により根気強く取り組む傾向が見られる。
実験デザイン
*読みやすさのために要約しています。
102人の赤ちゃん(生後13~18カ月)を3つのグループに分け、グループごとの赤ちゃん一人一人に対し、それぞれ以下の様子を実験者が演じた。
①忍耐力あり:おもちゃが入った容器を30秒間かけて開ける。30秒間の間、「どうすればこの容器は開くのだろう?」「こうすればどうかな?」等の独り言をつぶやくようにする。
②忍耐力なし:おもちゃが入った容器を10秒以内に開ける。
③演技なし:特に何も見せず、そのまま下記のタスクに移行する。
実験者の演技後、赤ちゃんにボタンが着いたおもちゃの箱を渡した。
箱はボタンを強く押すと音楽が鳴る仕組みになっているものの、それなりの力を入れないと鳴らないようになっていた。
赤ちゃんに箱を渡した後、実験者は部屋を退出し、赤ちゃんが箱と遊ぶ様子を別室から観察した。
赤ちゃんが3回以上箱を投げ出す場合は「あきらめた」と見なされ、実験は終了となった。
3回以上箱を投げ出す前に二分間時間が経過した場合は、その時点で時間が終了となった。
結果、グループ1(忍耐力を持った演技を観察したグループ)が最も頻繁にタスクに取り組み続けた(ボタンを押そうとした動作が多かった)。グループ2(忍耐力を持たない演技を観察資他グループ)とグループ3(演技を何も観察しなかったグループ)の間で大きな差は生じなかった。
留意点
赤ちゃんの我慢強さに関する長期的な発達に関して結論付ける実験ではありません。
実験に協力したのは米国内の比較的裕福な家庭出身の赤ちゃんが多かったので、それまでの育ち・経済状況が結果に影響を及ぼした可能性は否定できません。
エビデンスレベル:実験研究
編集後記
赤ちゃんは賢いんだな、と気づかされる実験ですね。一方、当論文に書かれていた一文節に、「ゴールに向けて挑戦し続けるのはその努力が報われる可能性がある場合でしか得策であるとは言えない。(達成しえないゴールに対して努力し続けることを教えるのはかえって望ましくない)」とあり、改めて子育てって考えることが多いな、と感じました。
街中で赤ちゃんに見つめられているのに気づいたら、少し背筋を正してみようと思います。
文責:山根 寛
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Leonard, J. A., Lee, Y., & Schulz, L. E. (2017). Infants make more attempts to achieve a goal when they see adults persist. Science (New York, N.Y.), 357(6357), 1290–1294. https://doi.org/10.1126/science.aan2317
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