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フィードバックを受け入れるためには謙虚さがカギ?

教育とフィードバックは切っても切り離せないものです。どうすればより生徒に響く声掛けやアドバイスができるか、というテーマは先生にとって永遠の課題だと言えるでしょう。フィードバックについて私たちが考えるとき、一般的には「どうすればより良いフィードバックを出すことができるか」という問いに注目が当たりがちです。過去の論文を遡っても、フィードバックを出す側に立った研究が大半を占めてきました。しかし、ここ最近では、フィードバックの出し手から受け手に目線を変え、「どうすればフィードバックをうまく活用することができるのか」という問いに答えようとする研究が増えてきています。よりかみ砕いていうと、「素直さ」「頑固さ」とは何か、素直な生徒・頑固な生徒は心理学・認知科学的にどう異なるのか、ということです。今回は、謙虚さとフィードバックの受け取り方の関係性について調べた研究を紹介します。

結論

「フィードバックに対する受容性」は「謙虚さ」「真摯さ」と弱い相関性が見られる。

実験内容

香港在住の学生(準学士生)217人を対象に、以下の項目に対するアンケートが配布された。
アンケートには各項目に関するあらゆる文章が記載されており、学生は各文がどれほど自分に当てはまるかを数字で回答した。

  1. 知的謙虚さ(例:「自分の意見を批判されると、個人的に攻撃されているように感じる」)

  2. 学びに対するモチベーション(例:「新しいことを学ぶために、受講する授業の内容はより難しい方が良い」)

  3. フィードバックに対する受容性(例:「課題に取り組むとき、過去に与えられたフィードバックを振り返るようにしている」)

  4. 真摯さ(例:「直前になって慌てないよう、事前に計画を立てて整理するようにしている」)

  5. 学校の成績(先学期のGPA)

各項目の相関関係を調べたところ、「フィードバックに対する受容性」は
-知的謙虚さ
-学びに対するモチベーション
-真摯さ
-学校の成績
全てと弱い相関性が見られた(統計的に有意)。

留意点

統計的に有意な相関関係ではあったものの、相関係数自体は比較的小さかったことには留意する必要があります。
アンケートで生徒の情報を集めるという研究の仕様上、生徒の主観に基づいた結果であることには留意する必要があります。

編集後記

少し煮え切らない結果ではありましたが、昨今注目を集めつつある分野に関するさきがけの研究ということで紹介させていただきました。「より良いフィードバックを出すためにはどうすればいいのか?」という問いに加えて、「生徒が今後フィードバックをより効果的に活かせるようになるためにはどうすればいいのか?」という問いに対しても今後研究が進んでいくことに期待したいです。

文責:山根 寛

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過去記事のまとめはこちら

Wong, I. H. M., & Wong, T. T. Y. (2021). Exploring the relationship between intellectual humility and academic performance among post-secondary students: The mediating roles of learning motivation and receptivity to feedback. Learning and Individual Differences, 88, 102012. https://doi.org/10.1016/j.lindif.2021.102012

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