他者の視点を想像する能力:サリーとアンの課題
以前、いじめと共感力の関連性についての記事をご紹介しました。その結論の一つが「いじめっ子は必ずしも他者の視点を想像することができないわけではないが、共感力が比較的低い傾向が見られる」でしたが、「他者の視点を想像する能力」とは具体的にどのような能力なのでしょうか?
今回は、この能力を確認するためにしばしば使われる、心理学の分野で有名な「サリーとアンの課題」についてご紹介します。1985年に使用された古いものですが、心の理論(theory of mind、ToM)が何を指すのが具体的にイメージしやすいなと思い選びました。
サリーとアンの課題
実験方法:子どもに下記の物語を読み聞かせ「サリーはビー玉を見つけるためにどこを探すでしょう?」と質問する(正解は「バスケットの中」)。
自分はアンがビー玉を移動させたことは知っていたとしても、その事実を知らないサリーの視点に立って考えることができるか?という実験です。発達科学的には、2才~6才の前操作期の間で徐々にこの力が身につけられていくと考えています。
参考記事(前操作期を含め、子供の発達に関する記事です):
1985年の実験では、4才前後の定型発達およびダウン症の子どもで80%以上、自閉症スペクトラムの子どもでは20%が正しく回答した様子が観測されました。
編集後記
多くの人がいつの間にできるようになる「Aさんが置かれた状況からするとAさんは○○と考えるだろう」と推測する能力。この能力が何才で身につくのは個人の発達により多様ですが、よく考えると興味深く複雑な機能ですよね。1985年と40年近く前に作られたものですが、改良版が作られたり、ボノボやチンパンジーを使った実験、人工知能がどう答えるのかを調べる実験など、今でも幅広く使われているテストです。
文責:識名 由佳
Baron-Cohen, S., Leslie, A. M., & Frith, U. (1985). Does the autistic child have a “theory of mind”?. Cognition, 21(1), 37-46
http://autismtruths.org/pdf/3.%20Does%20the%20autistic%20child%20have%20a%20theory%20of%20mind_SBC.pdf
Wimmer, H & Perner, J (1983). "Beliefs about beliefs: Representation and constraining function of wrong beliefs in young children's understanding of deception". Cognition. 13 (1): 103–128. doi:10.1016/0010-0277(83)90004-5. PMID 6681741.
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