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悪魔召喚ごっこをした話

こんな夢を見た。


ある日突然、「悪魔召喚ごっこ」をしたいと思い立ち、TwiPlaで参加者を募集した。こんな怪しい企画に乗ってくる人間はいないだろうと考えていたが、奇特な男女4名が名乗りを上げてきた。…展開が滅茶苦茶だが、夢だから仕方ない。

会場は夢にありがちな謎の公共建築で、今振り返ると「京都駅(駅ビル)」に似ていたようにも思う。吹き抜けがガラス越しに見える高層階の一角で、その妙な集会は始まった。

初めに現れたのは存在感の薄い女性だった。こんな企画に参加する段階で存在感が薄いも何もないのだが、次に現れた女性の個性が爆発していたので、対称的に空気になったものと思われる。

次に現れたのは猫の仮面を被った女性だった。狐面ならともかく、猫の面となると珍しい。首部分の異様に長いタートルネックのセーターを着こみ、頭の天辺まで裾を引き上げていた。本当のところは女性だったのか分からないが、その時点では「女性」だと感じていたため、女性だったということにしておく。どうやら猫の雑貨を制作している作家のようで、何点か作品を持ち込んでいた。猫形のボトルキャップは割と欲しかったのを覚えている。

三番目に現れたのは若い男性で、やけに本格的な格好をしていた。魔術師のような三角帽子を被り、黒っぽい外套を羽織って、実に楽しそうに分厚い本を抱えてやって来た。

最後に現れたのは中年に差し掛かった男性で、特徴のない服装だった。特徴のない服装だったほか、何も覚えていない。

怪しさ極まりない参加者たちである。この中の誰か一人、あるいは全員が最初から悪魔だったとしてもおかしくはない。私は正気だ真人間だと言い張りたいところだが、「悪魔召喚ごっこ」なるものを実施する時点でだいぶ頭が沸騰していることには違いない。

とにかく、A3のコピー用紙に魔法円を描いた。たぶん普通の油性ペンを使って、それなりに「それっぽい」魔法円を描いた。この時点では比較的、和やかな空気が流れていた。和やかと言うのもどうかと思うが、実際和やかだったのだ。

流れが変わったのは実際に召喚を始めてからだ。

若い男性がコピー用紙を広げ、辞書のように分厚い本をめくり、「アブラカタブラ」と呪文を唱え始めた。「らしい」文言だったので割と感心した。

何も起こらなかった。遊びなのだから、当然である。

「悪魔、来ませんね」と男性は言った。                「そうですね」と私は言った。内心、(何を当たり前のことを)と思っていた。(わざわざ言うなんて、無粋な人だな)とも思った。

「来ませんね」と静かに男性は言った。

「来ないね」

「来ないね」

「来ないね」

そこで初めて、彼は私の方を見た。


そんな夢を見た。