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ゴール前で「目が合ってない」:セレッソ戦での敗北

 昨日は日帰りでセレッソ戦に行ってきました。ヨドコウ桜スタジアムは、とてもサッカーが見やすいスタジアムなので、去年も一昨年も行ってます。

 残念ながら結果は0-1での敗北(去年の0-3の敗北よりはマシでしたが)。


初期配置

試合の流れ

 フロンターレは最近の標準的フォーメーションの4-2-3-1、セレッソは4-1-2-3。ただセレッソは保持時には左サイトバックの登里享平がボランチのポジションに入って3-2-5になります。フロンターレも、保持時には橘田健人が2列上げてインサイドハーフに入る3-2-5、あるいは瀬古樹が最終ラインに入ってサイドバックが1列上げる3-3-3-1ないし3-4-3のような形になっていました。

 前半はセレッソが優位。フロンターレの前線は、登里と田中駿汰からなるダブルボランチを抑えきれず、鋭い縦パスを何本も入れられ、決定機を多く作られ、いつ失点してもおかしくない状況が続きましたが、なんとか0-0で凌ぎました。
 後半は互角。フロンターレは登里、田中に対するマークを整理して、片方は脇坂、もう片方に対しては状況によって瀬古、山本が前に出て抑えにかかったのが有効でした。さらに、ボールを持ったら高さのない登里にフィジカルの強い家長を競らせるようなボールを右サイドに繰り返し送り、家長がハーフスペースに返したボールを確保することでフロンターレは攻撃の足がかりを作ります。

 後半しばらくは中盤でのトランジションの攻防。取ったり取られたりで非常に見応えのある展開でしたが、60分にセレッソが先制。

 ボールを奪ってからゆっくりビルドアップをしているように見えたセレッソでしたが、中盤右サイド(フロンターレから見て)の脇坂と家長の間に広大なスペースが。
 そこでボールを受けたルーカス・フェルナンデスが左サイド(セレッソから見て)に前進、フロンターレのマークを3人引きつけたところで左に走りこんできたカピシャーバにパス。フロンターレはルーカス・フェルナンデスに3人が集まってしまったのでカピシャーバはフリー、そこからファーにクロスを送って走りこんできたレオ・セアラが決めました。
 ルーカス・フェルナンデスを広大なスペースでフリーにしてしまったこと、そこへのパスコースを空けてしまったこと、さらに3人集まってカピシャーバをフリーにしてしまったことといういくつかのミスが重なっての失点でした。

 それからはフロンターレが攻勢に。何度か決定機を迎えましたが得点できずにタイムアップを迎えました。これで3試合連続無得点です。

82分23秒から29秒までに起こったこと

 特に今年の試合を見ていて感じるのは、ビルドアップは機能していて、アタッキングサードには入れているものの、そこから崩しきれないことです。つまり、課題は「仕留め」だと考えています。
 特に無得点だったFマリノス戦、町田戦では、シュートそのものは打てているものの、枠内シュートがいずれも1本だけでした(シュート数はFマリノス戦14本、町田戦17本)。セレッソ戦では、枠内シュート数は5に達し(シュート数は15本)、大幅な改善が見られましたが、得点には至らなかったわけです。

 この点で強く感じるのは、ペナルティエリア付近で崩そうとしているときに、選手同士で意思が共有できてないと感じられることが多いことです。風間元監督の言葉を借りれば「目が合ってない」ということですね。

 「目が合ってない」ことを強く感じた局面がありました。この試合の82分の決定機です。

 攻め込まれたものの、フロンターレが右サイドでボールを奪取、右サイドバックの瀬川祐輔は右サイドハーフに入っていた小林悠にパス。小林はボールを持ち上がって前進します。下図が82分23秒の立ち位置です。

82分23秒、立ち位置


小林はここで前方のスペースにスルーパス。ここにヴェロンが走りこんできます。

82分23秒、小林のパス

 ヴェロンはスペースでボールを受けて対面と勝負。ここで数秒の時間ができ、小林はパスを出してすぐ内側のレーンに。山田も右ハーフスペースからゴール前に走りこみます。

82分26秒

 ヴェロンが対面を抜きにかかっている間、小林はペナルティエリアに。2人にマークされていますが、後ろに下がる「プルアウェイ」という動きでディフェンダーの視界から消え、フリーになります。同じタイミングでゴール正面に移動した山田も、ほんの少し下がってセンターバックから離れます。つまりこの段階で、小林と山田は、足元に強いパス、あるいは高いボールが入ってくればヘディングでゴールを狙える形を作ったということです。

82分28秒

 しかしヴェロンは、ゴールキーパーと最終ラインの間に強いクロスを送ります。誰かが触れば得点でしたが、小林も山田も触ることができませんでした。ゴール前をボールが通り過ぎる決定的なチャンスだったにもかかわらず得点に至らなかったということです。ここが、「目が合ってない」と感じられた部分です。

 この時、小林はフリーでしたが、ヴェロンとの間にパスコースはありませんでした。山田も、近くに2人ディフェンダーがいますから、ハイボールが入ってきたとしても飛び勝てたかどうかは疑問です。さらに毎熊晨矢が山田新を後ろからマークしていて、クロスが入ったときには毎熊に素早くボールとの間に体を入れられ、ボールを触りに行くことができませんでした。
 そう考えると、決定的なクロスではあったものの、フォワード2人の準備はできていなかった、あるいは、ヴェロンと小林・山田の意図が食い違っていた状況だといえるわけです。

82分29秒

「タラレバ」を考える:「目が合って」いれば2つの可能性があった

 ここからは「タラレバ」です。実は2つのタラレバがあります。

 1つめ。小林がプルアウェイでマークを外すやいなや、すぐにニアに走りこんでいたら。あるいは山田も、下がりすぎずに毎熊を後ろに置きながらゴール前に飛び込む体制を維持していたら。

 そうすればヴェロンのクロスに触ってゴールに至った可能性はかなり高かったでしょう。

82分29秒「タラレバシナリオ1」

 あるいは、少し後ろにいた瀬古と遠野が飛び込んできていたら。
 小林と山田が最終ラインと駆け引きをしているところに二列目から飛び込んでくる形です。この場合でも得点に至った可能性はかなり高かったと思います。
 セレッソのディフェンダーの配置から見て、マイナスのクロスが瀬古や遠野に届いたとは思えず、「飛び込んでいく」というのも選択肢としてはありえたはずなのです。

82分29秒「タラレバシナリオ2」

「目を合わせる」積み重ねが必要

 上記のように、この局面での動きを細かくみてみると、ヴェロン、小林、山田新、瀬古、遠野という、この場面に関わった、あるいは関わる可能性のあった選手たちでの、「仕留め」についての意図が共有し切れてなかったということがいえるのではないかと思います。小林、山田、瀬古、遠野の4人のうち、誰1人としてヴェロンがキーパーと最終ラインとの間にボールを差し込んでくるとは思わなかったわけですから。1人でも感じ取っていれば得点できた可能性は高かったのですが。

 特にフロンターレのように、アタッキングサードで人数かけて崩す形を取ろうとするチームであれば、「どう仕留めるか」の意図の共有、つまり「目を合わせる」ことの重要さは非常に大きくなります。
 けが人も多いし、いろいろと課題の多い今年のチームですが、まずは練習や日常的なコミュニケーション、さらにいうまでもなく試合中のコミュニケーションも含め、すべての機会を通じて、「仕留め」のための「目を合わせていく」作業を積み重ねていってほしいところです。

 結果は残念でしたが、自分なりに課題を感じられたという意味で、有意義だった大阪遠征でした。

 最後に、セレッソのサポーターのみなさまへ。今年のチーム、いい形に仕上がってますね。楽しいシーズンを過ごせるのではないでしょうか。

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