「FPの頃」 3.同人誌アンソロジー。

 当時のFPが曲がりなりにも会社として続いていたのはコミックアンソロジーが売れていたからです。最初は『キャプテン翼』、次が『聖闘士星矢』でした。集英社は内容証明を送ってきたり、FPではその内容証明郵便をCB 誌上に晒したりしていました。サイタニ氏曰く「パロディは法的に認められた権利」とのことでした。
 自分がFPに入った頃は『サムライトルーパー』コミックアンソロジーで潤っていた時代の後半で『シュラト』が全盛だったあたりでした。サイタニ氏の「権利」という言葉に「へええ、そういうものか。でも集英社は怒ってるなあ」と思いましたが、トルーパー、シュラトはアニメの版権物として正規に許諾を受けているんですよね。これってダブルスタンダードでは? と思いましたが、「許諾を出すんなら受ける」と堂々と返事をされて黙りました。
 だからBL的表現について、『キャプテン翼』や『聖闘士星矢』よりも『サムライトルーパー』や『シュラト』は穏やか(?)なんですよね。ベッドシーンとかは著作権者の許諾が下りなかったため。
『沈黙の艦隊』アンソロジーというのもありましたが、あれはAさんがかな? かわぐちかいじ先生にダイレクトに許諾をいただいた正規許諾です。刊行後になって気が付いた講談社がかわぐち先生に「うちを通してくださいよ」と言ったと聞きましたが、当時講談社を通して同人誌アンソロジーを申請しても許諾されるはずはなかったので、イレギュラーに成功(?)した例ですね。このアンソロジーは作品選びや表紙の描き下ろしを私が担当した唯一のタイトルになります。

 入社して何日か経った頃に「これ手伝ってもらえる?」と先輩からアンソロジーのネームを渡されて指定や写植貼り、製版指定のお手伝いをしました。が、教わったのにネーム指定の方法がわかりません。ざっと説明を受けたのですが、行間指定とかが飲み込めず「え? どういうこと?」と立ち尽くしました。しかし何度も聞き返しに行くと「もう手伝ってくれなくていいや」と言われる雰囲気がありました…気のせいだと思いますが。
 そこで先輩方の入稿済みで不要になった指定紙を持ってきて指定を見て「あー、こういうことか」と学ぶ…というか真似させていただきました。ゴミ箱からも拾いました。覚えが悪くて鈍い私が「できません」「わかりません」と言ったら「おまえはもういらない」と言われるだろうなあと震えてました。聞きに行くくらいならこっそりカンニング(?)するというのが怯えなのかプライドなのかわかりません。でも何もできない自分にできることはそれしかないと思っていたのです。
 ただそれでもこの時期アンソロジーの入稿作業についてはろくに役に立ててなかったんだろうなあ…とは思います。当時の担当さんたち…TさんやHさん(イニシャル被りますが別の人)は版下作業というか全般的に仕事がものすごく手早かったように思います。自分については後年転職してから写植の指定については自分が人並み以上に速いということを知りましたが、印画紙を切って写植を原稿に貼るという作業については転職後に「このペースでは家に帰れない…」と絶望し、速度を上げるべく努めました。この当時の自分の版下作業はどれもこれも話にならないほど遅かったと思います。自分の担当ページであれば家に帰るのを諦めればいいだけの話ですが、お手伝いについては役立たずだったろうなあと思うと未だに汗顔の至りです。

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