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ミステリと言う勿れ

 本格ミステリ、それも探偵役が歩き回りもせず汗もかかず、椅子に座ったままで謎を解決する「安楽椅子探偵もの」が大好きだ。元は上品な老婦人が車椅子に座って状況を聞くだけで犯人を当てる「おばちゃまシリーズ」だと思うが、なんと手足の動かないALSが探偵になる話とか、落語家が話を「する」のではなく、客から話を「聞く」だけで日常の謎を解いていく北村薫の円紫シリーズなど、様々な安楽椅子探偵ものが内外で出ている。
 だが、実は、漫画でも出ていたのだった! それが田村由美さんの「ミステリという勿れ」。ラインのめちゃコミシリーズで知ったのだけれど、華麗なる貴族の絵などが上手い方、というイメージだったのですが、緻密なミステリ漫画のまぁ似合うこと。

ミステリと

漫画をスマホで読めるだけでも楽しいのですが、そのドラマ化が1月から始まりました。探偵役の久能整(くのうととのう)とキャストの菅田将暉とは、顔が丸いこともあってイメージが違う云々の声があるようですが、やっぱり本格ミステリは楽しい~。謎解きメインで犯人の青春とか外野のストーリーが全くないのが、学力クイズみたいで楽しいんですよ。

完全にミステリなんだけど、「ミステリという勿れ」というタイトルになっているのが渋いですね。ところでこれ、古語の「なし」の命令形です。なく/なかり/なし/なき/なけれ……と形容詞形で活用していくんですが、生徒に教えるとき、漫画で「ミステリという勿れ」ってあってね、この「なかれ」では形容詞だよ~と言ったら、とたんにクラスが爆上がりしました。
「その漫画知ってる~」
「あれ好き~」
たぶん、ほとんどの生徒が「なし」の品詞は? と聞いたら、次のテストは「形容詞」と答えられるんじゃないでしょうか。

「初心の人二つの矢を持つことなかれ

学年末テストに出して、皆に点を取ってもらおうと思います。

ところで今週の「犯人が多すぎる」は、クリスティの『そして誰もいなくなった』のオマージュですね。作者はものすごく英国ミステリを勉強されているのだと思います。



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