Pricingを考えるシリーズ: 銀行借入金利の決まり方①

どうも。昨日は久々に山登りをして、山頂で食べた味噌田楽がたいへん美味しくご満悦だったみらぺこです。

さて、今日はちょっとだけマクロな視点で銀行融資のPricingについて考えてみようと思います。

企業の場合、販売先からお金が入ってくるまでの"つなぎ"や設備投資などのために、時に銀行からの資金調達が必要となる訳です。その時に民間銀行もただで貸してくれる訳ではなく、期間と金額に応じて利息を払わなくてはいけません。このレートが金利ですね。これはどのように決まるのでしょうか。

実は二十数年前まで、この答えは非常にシンプルで、日銀の公定歩合(現・基準貸付利率)に連動していました。公定歩合とは、日銀が銀行に資金を貸し付ける時のレートです。銀行は個人や企業からお金を預かった預金を貸し出して運用しますが、集まった預金以上に貸付のニーズがある時には、主に日銀からお金を調達していました。その場合、その日銀がお金を貸してくれる時のレートによって、企業へ貸付する際のレートが決まるという訳です。

以下、教えてにちぎんQ&Aより。https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/seisaku/b38.htm/

規制金利時代には、預金金利等の各種の金利が「公定歩合」に連動していたため、「公定歩合」が変更されると、こうした金利も一斉に変更される仕組みになっていました。このため、「公定歩合」は金融政策の基本的なスタンスを示す代表的な政策金利でした。

それが、変わったんですね。証券市場の発達、70年代以降のグローバル化と国債の大量発行を背景に、金利の自由化がおこります。

しかし、1994年(平成6年)に金利自由化が完了し、「公定歩合」と預金金利との直接的な連動性はなくなりました。この連動関係に代わって、現在、各種の金利は金融市場における裁定行動によって決まっています。こうした状況のもと、かつての「公定歩合」は、現在、「基準貸付利率」と呼ばれ、「補完貸付制度」の適用金利として、無担保コールレート(オーバーナイト物)の上限を画する役割を担うようになりました。

少し聞きなれない単語がでてきましたが、私の理解で端的に言えば、現在、銀行は基本的に預かったお金で貸出ニーズに足りています。しかし短期的に不足した際には、銀行同士で貸し借りを行なっています。なぜなら銀行同士の貸借市場である「コール市場」が、規制緩和とマイナス金利政策により発達し、日銀から調達するよりも、他の銀行から借りた方が安く済むからです。

そのため、日銀の公定歩合は重要度が低くなり、現在は基準貸付利率という名前となり、あくまで上限基準にとどまっている訳です。

基準貸付金利 0.3% (2018年12月19日〜現在)
無担保コールO/N物レート
平均 -0.013%(10月24日<木>確報)

ちなみに以前、日銀は公定歩合を調整して金融政策を行なっていましたが、この調整はあまり意味をなさなくなったために、量的政策へシフトしました。また、並行して行われているマイナス金利政策では、貸出の需要がなくても借入をした方が利益がでるという銀行がでてきます。話が逸れてしまうので、ここも深掘りするのは今度にします。

では結局、現在の銀行借入時の利率はどのように決まっているのか。

一つ考えられる要素は、預金金利です。銀行は個人や企業からお金を預かったら預金利息をつけて返します。最低でもこれより高く設定されるのは、簡単にわかりますね。ただ、想像してみてください。私はいつも普通預金の通帳に税引後利息1円などと書かれていて、いつも呆れて笑っちゃうんですが、預金利息って微々たるものですよね。0.001%とか。ささやかすぎる。

もう一つ考えられるのは、先程登場した銀行同士の貸借市場におけるコールレートです。でも「???」ってなりませんか。マイナスですよね。つまり、小売業に例えたら、無料で在庫を仕入れられて、おまけまでついちゃうみたいなことですね。それなら売値は最悪、固定費さえカバーしてくれればいいですよね。

つまり、バブル期の日本と違って、銀行の貸出金利はかなり抑えられるものであり、銀行の裁量にかかっているといえると思います。

もちろん、融資を行うには、借入審査を行う審査役が何名もいて、取引先と相対して交渉をする営業マンが大勢いて、皆さん給与も高く、さらに融資先が破産して回収できないこともしばしばあります。また銀行は貸金業だけでなく、決済インフラとして社会で重要な役割を果たしており、そのインフラの維持費、それに関わる人の人件費といったら、想像を超えるコストがかかっているでしょう。

それをカバーしてくれる利率といったら、もっともっと上げたい。一方で、ただでさえ借りてくれる企業が少ないので、下げざるを得ない。結局のところ、そのバランスで、あえて言うなら損益分岐点というところでしょうか。

次回は、もっとミクロな視点で、実際の実務ではどのように利率が決まるか、つまりどのようにPricingが行われるかをみていきたいと思います。

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