読書メモ:貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか

◉読むきっかけ
最近お気に入りのコラムニストが、この本の著者である加谷珪一さん。以前、金利についてネットで調べていた時にヒットした連載記事が、まさに知りたい内容で、数字と共によくまとまっていて非常に勉強になったので、本も読んでみたいと思い新刊を購入しました。さて早速内容です。

◉日本マジ安い
これは、海外事情に多少詳しい人なら、少し前から常識だったと思います。私の親しくしている外国人数名も口々にそう言っていたし、日本へ海外から観光客がくるのも、安いからという理由が大きいというのも何となく聞いていた話だった。でも今回、データを突き付けられると、そのトレンドが私の思っていたより、ずっと大きく早く進行しているということがよくわかりました。

OECDの調査によると、2000年を100とした日本の不動産価格は78.5と低迷しており、諸外国では唯一、価格が下がっています。一方で、諸外国の不動産価格は驚くべき水準まで上昇しています。同じ期間で、米国は1.8倍、英国は2.5倍、オーストラリアは何と3.5倍に上昇しました。(第1章 p.43)
購買力平価でドル換算した日本と中国の単位労働コストは1990年代には2倍以上の差がありましたが、日本のコストは年々低下し、逆に中国のコストは上昇が続いてきました。2010年代前半に両国の単位労働コストは逆転しており、最近はその差がさらに拡大している状況です。(第1章 p.49)

特に労働コストの話って、つまりは給料のことですから、結構シビアですよね。数年前まで、東京のコンビニには出稼ぎにきたと思われる中国人の方が結構いました。でも今は見かけません。今は東南アジアからの方が多いですが、彼らにとっても出稼ぎにくるメリットがなくなっていくのは時間の問題だと思います。

◉そして、貧しくなっている日本
本書で繰り返し指摘されていたのが、国が海外の影響を受けない鎖国状態なら、安くなっているのも構わないけれども、実施にはそうではなく、材料の多くを輸入しているので、調達コストは上がるけれども、それを上乗せすることができなかったり、各国大体一律の価格のiphoneは、相対的に給料の安い私たちには手の届かない高い物になってしまったりするということです。そして、国全体が貧しくなると、教育にかけられる予算が減り、それがさらに国際競争力の低下を招きます。社会保障や福祉も手薄になり、貧困率が上がれば、街の治安も変わっていってしまうでしょう。想像するだけで本当に悲しいです。

◉アフターコロナ日本にやってくるかもしれないスタグフレーションの恐怖
第3章以降はそもそも価格はどうやって決まるのかという経済学的側面からの説明があります。一部が以下のリンクでみれます。

スタグフレーションとは、景気が悪くなっていっているのに、物価が上がるというしんどいやつです。そして何がしんどいかと言えば、これです。

もし日本でインフレが進み、物価が上昇した場合には、それに合わせて金利も上がっていきます。もし国内の金利が3%になった場合、政府が抱える債務が1000兆円のままだった場合、1000兆円の3%ですから、政府が支払う利払い費は年間30兆円に達します。現在、日本における税収の総額は60兆円であり、残りはすべて国債という借金でカバーしています。ところが、金利が3%に上昇しただけで、税収の半分が利払い費に消えてしまいますから、日本政府はこれまでと同じレベルの予算を組むことができなくなります。

加谷さんの文章にはよく金利がキーワードとして出てきます。経済学や金融に触れる機会がないと、金利って難しいように思いますが、結局、経済の先行きを語る上で、金利の理解と観察は外せないと思います。

◉でも私にとってはむしろ面白い時代かもしれない
本書では、相対的に日本が貧しくなり、アジア地域をはじめ諸外国が成長して豊かになり、日本人がより高い賃金と良い労働環境を求めてアジアへ出稼ぎに行くようになる日も近いだろうと書かれています。特にITエンジニアが海外移住という選択肢は、割と一般的になってきているのではないかと思います。母国の日本の世界的地位が落っこちていくというのはとても悲しいことです。何とか、そうならないで欲しい。
しかし今回この本を読んで、私が考えてきたこと、進もうとしてきた方向は間違えではなかったのだなと思えたのも事実です。私が大学4年生の時に立てた目標は、いつでも海外移住できる人になることでした。その理由は、単純で、日本の悪しき無駄な残業や面倒な習慣から逃れ、ワークライフバランスの整った環境で自由に働き、豊かな暮らしを送りたいと思ったからです。そのために比較的汎用性のある会計をキャリアに選び、英語も自分なりにレベルアップさせてきました。本当は26(つまり今年)までに海外に出ることを一つターゲットにしていたのですが、それはまだ達成できていません。ただ、1月に転職してチーム唯一の日本人として仕事をしており、ゆっくりではあるものの着々と準備は進んでいると思います。
当初はヨーロッパで働きたいと思っていましたが、最近やはりビジネスの成長性として面白いのは圧倒的にアジアだなと思っています。さらに、私がアジア人として生まれたという事実も、有利に生かすべきだと思っています。今はまだ、暮らしやすいとは程遠い地域がほとんどかもしれないけれど、最近の上海なんかをみていると、「急速な経済成長」って私が思っているよりずっと早いんだなと思うので、そうなると将来的に「豊かさを求めて」アジアへ働きに出るのは、ありだなと思います。もちろん、経済的な面だけでなく、知らないことをたくさん知ることができる海外は楽しいですしね。

世界は広く面白い。大風呂敷を広げよう。

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