Ben FryがProcessing財団を辞任

2023年10月4日、Processingの共同開発者であるBen Fryが、Processing財団を辞任するとXで発表しています。財団の運営方針に異議を唱えての決断のようです。多くのユーザから寄付を募っていましたが、それらの予算がProcessingの開発そのものがほとんど使われていなかった模様です。

こちらの寄付レポートを読むと、Processing財団には多くのアーティストから暗号通貨での寄付が集まっているようですね。ただ支出の内訳についての情報は見つけられませんでした。

Ben Fry辞任の一報は、山辺真幸さんがProcessin Community JapanのDiscordで投稿されていて知りました。Ben Fryの連続ポストの日本語訳をつけておきます。

Processing財団を辞任するという極めて難しい決断にいたりました。本当に心神喪失状態で、ここ数か月はよく眠れていません。

Casey (Reas)と私は、Processingプロジェクトを持続可能にするため、Dan (Shiffman)と共に財団を立ち上げました。何年もの間、Caseyと私だけで、何千人、何万人ものユーザーをサポートしてきました。

2017年のことですが、2人目の子どもが生まれた数週間後に、がんと診断されました。それで理事会への直接参加を休んでいました。

昨年の秋、退任を予定していたCaseyからの勧めもあって、理事会に積極的に関わろうとしました。

奇妙なことが起きていました。財団が昨年80万ドル近くを支出したことを知り、愕然としたのです。Processing 4に使われたのは、そのうち0ドル。

今年の財団予算案はおよそ120万ドルです。しかし、Processingの予算は、たった2人分しかありません。開発者1人とコミュニティ・リーダー1人です。

これがどういうことかわかりますか? 私たちが財団を設立したそもそもの理由はこうでした。Processingソフトウェア・プロジェクト(http://processing.org ドメイン上の全部)には、2人では足りないのです。

バージョン4.0のリリースだけでも200万件のダウンロードがあり、毎月コンスタントに約10万人のユニークユーザーがいます。

現在のコミュニティを維持するには、2人では不十分です。もっと重要なこととして、ユーザを広げるため、より多くの言語、プラットフォーム、デバイスに対応させるようにプロジェクトを展開しようにも不十分だということです。

私たちは、プロジェクトをスタートした2001年の時点に戻ってしまいました。当時、コーディングはまだあまりに難解で不明瞭だったので、それを解決する唯一の方法は、より多くの人がコーディングにアクセスできるように障壁を減らすことでした。

財団を辞めても、Processingソフトウェアの開発は続けています。私がやめたらユーザを傷つけてしまうからです。それにしても憂鬱です。今の体制に未来はありません。

当初から、このプロジェクトは内部(ソフトウェア開発)と外部(コミュニティ、ドキュメント、サンプルなど)を常に半々にしていました。財団はバランス感覚を失ってしまったのです。

1000万ドルもの寄付金が集まったというのに、暗澹たる結果です。財団は、私が22年間行ってきた仕事に乗っかっていただけです。

ソフトを開発し、コミュニティをサポートすること。無名のプロジェクトだった昔も、そして近年も、物事を動かし続けることが「楽しい」こととは限りませんでしたが、コミュニティにとっては「重要」なことでした。

この状況は、私にとって特に悩ましいものです。というのも、私が行ってきた仕事から最も恩恵を受けた人々や、私が友人として信頼していた人々によって、この状況が作られてしまったからです。

Processingソフトウェアとそのコミュニティはもっと良くなれるはずで、「Processing」の財団よりもよりよい拠点が求められています。

追記:Casey Reasのコメント

2023年10月7日に、Casey Reasがこの件についてコメントしています。Casey Reasは、Ben FryとともにProcessingを開発しました。

今週、Ben FryはProcessingとProcessing財団への自身の見解について個人的なスレッドを書き、財団の方向性に同意できないため財団を辞めたと述べました。私はProcessing財団と連携しており、私のProcessingに対するビジョンとProcessing財団に対するビジョンに相違はありません。

財団はProcessingとp5.js、関連プロジェクトの開発を積極的に財政的に支援しています。Benは資金提供を何度も拒否し、代替案を明言することはありませんでした。彼には直接支払いを提案され、人を雇用する予算も提供されました。この間、彼は財団の理事であり、理事長であり、意思決定において同等の議決権を持っていました。彼が理事を辞めた後、関係者が冷静になった数か月後に、彼には再びProcessingのための資金提供が提案されています。

これはBenとCaseyの間の話ではないので、単純化しすぎないようにしてください。2023年のProcessing財団には、もっと大きな、たくさんの素晴らしい人々が関わっているのです。

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