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FLYER

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2000年代にcruising というwebサイトで連載していたフライヤーについてのコラムです。
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記事一覧

CUT UP

実家から帰る際に母親が持たせてくれた紙袋から食料やら美容マスク(ほらあともう1ヶ月なんだからハイ、これであんた、吹出物直しなさいよ、と言って気軽に渡されたものの、あとで裏返すと10枚入7千円、と記載されてあってさすがにびっくりした)や雑巾なんかを確認しながら、冷蔵庫に入れなくてはいけない、せっかく作ったのに母はなんだかケーキ食べ過ぎたみたい、だし、1つ下の弟は帰ってくるなり久しぶりに会った姉だとい

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GIANT TAB



12月の、平成12年の、20世紀の、独身貴族の最後を飾ろうと、
31日、大安の日、人生の大いなる決断の為、世田谷区役所へ出向くはずが、
何の因果か、誰の怨念か、38度の高熱にうなされ、寝正月ならぬ寝晦日。
今頃世の人々は、そしていつかの自分は、どんな年末を過ごしていたのか、
夢の中で思い描き、このフライヤ-がやっと登場するときが来たのです。
 
この何ともいえない薄っぺらな、アナログなフライヤ

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CHAOS WEST



「花はすんなりしたものの上にも、不出来の上にもこうして咲くが、
 どちらが大きい花か、そんなことは問題ではあるまい。
 花が咲くことは嬉しいのである。」

と綴られた幸田文の書を読んでいた。
きれいか、そうでないかの、感覚のところを審判せずに、
ただ咲くことの話しをしているので、嫌味がなく、
ああ、そうか、と軽くハッとさせる影響力を持つ言葉だった。

誰かから花束を貰ったり、どこかに咲

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TOUGH DROPS



というわけで、そこが例えば友達の家だろうがクラブだろうが、
お構いなしに食に関する貪欲ト-クを繰り広げる女子を見て、
それを横目でなじろうとする男子の皆さんが、
自分のことは棚に上げっぱなしで夢中で喋りまくるのは、
いつだってスポ-ツに関するお話し。

おいおい、普段から体力無さげな音楽かけといて、そりゃないでしょ。
なぜ?なぜみんなしてスポ-ツ中心に世界を転がしているのか…。
なぜ?なぜ

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ZERO Turbo



きいろ、きいろ、きいろ、い看板を、さがしさがし探し求めて、迷える子羊のごとく六本木の街を彷徨い歩いた日から数えてもはや8年。
風営法とかいう、深夜12時以降のクラブ営業は風俗店と一緒なので取り締まります、 なんて心の狭い、無茶苦茶な法律に追っかけられ、何度か営業停止になりながらもいまだ健在、月に一度はお世話になりたい西麻布のクラブ・イエロ-。

このキイロ-、あ、イエロ-の月間スケジュ-ル

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BLANK



その1 一日の始まり。でも心は昼、夜、そして日付をすっ飛ばし、明日は何を食べようかというところまで考えている。しかも常に。

 その2 20歳を超えた女性は何時何人集まろうと、食の話題に余念無し。時には少女のように、そして旦那は無くとも主婦のように。  

 その3 一番仲のいい人に「〇〇はいつも食べ物のことばっかり考えているところがちょっとイヤ」と言い放たれた。ついに。

というように、

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MASK



いまから数えて13年程昔、私が12歳だった頃(数字を細かく記せば自分の現在の歳が知られ多少不利だとしても、それを嫌がるほどの年齢、つまりおばさんになったことを認める気なんてないのだから敢えて直さない)、2つ年上の姉と兼用の私の部屋の壁には「平凡」(その後廃刊になるとあっさり「明星」に乗り換える少女のずうずうしさ!)の付録の光GENJIのポスタ-が貼られ、揃って光GENJIファンの姉妹には都合が

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SIMPLE-696



『人気者、ハ-バ-トのドクタ-・ロキット名義のアルバム。数々の愉快なサンプリングが散りばめられた音と、それに付いてくるおもちゃのおまけのような可愛いタイトルが詰まった、愛すべき一枚。こういうモノこそ家で聴きたい。ハ-バ-トが凄いのは、音楽に対するこだわりと柔軟性とが無理なく同居し、加えて豊かな才能とセンスまで持ち合わせているところ。彼のような人のことを本当に「少年みたいな」 人だというんじゃな

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UNDERGROUND VISION



ジェフ・ミルズのDJが凄いらしい、と噂になる 、今では考えられないぐらい初々しい時代の話がしたいのです。

すべてが思い出深くしみこんだ来日ラッシュが続き、 楽しみながらも必死に遊び通した夏が終わった途端、新たに注目された一人の黒人男性。どこかの誰かが海外のクラブへ足を運んだ際に目撃したというそのDJプレイの体験談が瞬く間に広まり、そんな言い伝えひとつで興奮できるほど無駄な情報もないまっさ

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TEAM ROCK



『TEAM ROCK』を毎日聴いている/「ばらの花」が名曲過ぎた/近所のス-パ-で流れることに戸惑う/ここ3~4年日本のロックの質が本当に高い/家で聴くのはあったかい音楽がよい/うちにはテクニクスのタ-ンテ-ブルが4台もある/料理中のBGMにはHIP HOPが最適/夜中にレコ-ドをあ-だこ-だといじくる行為は激楽しい/阿部さんがダビングしてくれたNMEのMIX CDはなぜかデヴィッド・ホルムズ

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CLUB VENUS IBIZA IN TOKYO



月日は94年、夏。
この夏が特別な夏だった人がもし世の中にまだいるのであれば、このフライヤーをまず見てほしいと思う。
パーティー名はクラブ・ヴィーナス 。

今にも動き出しそうに踊るサマーな男と女の眩しい姿がなんともいえず魅力的で、私の心に今も猛烈に残っているこの一枚のフライヤーは、
オーガナイザー でカメラマンでもある久保憲司氏が撮影した写真を使ったもので、自ら体験した 快楽島ことイビサ

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