見出し画像

魂の機神第一話


あらすじ

明治時代、日本は文明開化の波に乗り、帝国軍が密かに「帝国日本新型兵器オジジ」を開発する。武士の魂と蒸気をかけ合わせたその兵器には、魂とリンクする操舵手が必要だった。その頃、虚弱体質の源信也は軍人になれず、会津若松戦争で散った祖父に憧れる日々を送っていた。しかし、彼の運命は変わる。祖父の魂とのリンクにより、オジジの操舵手として戦場に赴くことになったのだ。信也とオジジは日露戦争の各所で、新型兵器の力を駆使し勇敢に戦い抜く。信也の内なる葛藤と成長、そして勝利への決意の物語が今始まる。

本文

空中戦艦オジジ戦場へ!

※注意…この話はリスさん作によるAIイラストにインスピレーションを得て書いた小説であり、リスさんに承認いただき書いています。

富国強兵の時代となった近代、徴兵検査の結果を受け取った源信也は深くため息をついていた。祖父である新左衛門は勇敢なる浪士として会津若松の戦いで散った志士として誉れ高く、父親も先だって行われた清国との戦いに貢献し、意気揚々と帰ってきた。
下関条約以降、露西亜を叩くべきそう声高に叫ぶ人々がいる中、戦争への機運が高まり、若者は皆こぞって徴兵を受けていたのだ。
「ただいま帰りました」
土間に入ると母の路が顔をあげた。
「信也、おかえり。さあさ、疲れただろう?」
駆け寄ってきた路が信也に駆け寄ってきた。
「咳は出なかったかい?」
「うん。大丈夫だよ」笑顔でそう言い家に上がった信也が仏壇に手を合わせていると路が声をかけた。
「信也、畑で瓜を一つとって来てくれんかい?」
「はい。母上」
母方の祖父の新左衛門に線香をあげた信也が草履を履き裏の畑へと向かう。
今日は瓜を煮込むのだろう。収穫した瓜を一つ土間へ持っていくと、母が瓜を割るダンという音が後ろから聞こえてきた。
夕方までイギリスの本を翻訳したという蒸気機関の本を読んでいると父の新造が帰ってきた。
「街まで出て疲れただろう」
新造も信也が徴兵に通るなど思っているわけもなく、畑から帰って来ると土を足から払った。
「風呂、沸かすよ」
「ああ、頼む」
外に周り昨日の燃え殻を掻き出すと松の葉に火をつけ薪を放り込む。
しばらく息を吹き込んでいると煙を吸って咳が出た。
「信也、もういいぞ」
家から顔を出した新造の言葉に頷き家に戻ると新造が風呂へ向かうのを見送って、咳をおさめるために白湯を飲む。
この咳がなければいいのに、常々そう思う。
湯から上がった新造と路とともに食卓につく。
冬瓜の味噌汁と麦で食事をとり薄い布団に横になる。
体の弱い信也にとって軍人は憧れの職業だ。農家を継げない次男、三男の行き着く先だと言われることもあるが、浪士だった祖父が幕末に自藩で浪士隊を作り新しい御代のために戦ったと言う話は幼い頃からずっと信也の心を捉えていた。
そんなある日、信也の元に横須賀の陸軍訓練所から手紙が届いた。大至急参じよとの命である。
「なんだろう」
体の弱い自分に何を求めているのか、不安になりながら汽車を乗り継ぎ横須賀へと降り立った。
しかし駅に来た迎えは訓練場ではなく、帝国軍研究所と書かれた施設へと信也を誘った。
「源信也君かい?」
技士という国枝に呼ばれ、握手を交わすと奥へ案内された。
「こ、これは……」
そこには蒸気で稼働する巨大な鉄の空中戦艦が座していたのだ。
しかも空中戦艦の先端には人の顔があるのである。
「これは志士の魂を掬い器にした新型攻撃機、オジジだよ」
「志士の魂?」
「そう。死してなおモノノフであらんとする高潔なる魂だ、蒸気で起動し、魂がその動きをさらに加速する。魂の力が強く純粋な志士だからこそ実現したんだ」
滔々と語る国枝の言葉に感化するように信也の心も熱くなった。
「実はね、君を呼んだのは他でもない。このオジジは君のお爺さんの魂を使っている」
「え……!」
あの祖父が……維新の折、会津の戦いで散った祖父の魂が新時代にこうして生きている。そのことに信也の胸は高鳴った。
「操縦には魂の結合が必要だ。魂が最も共鳴する相手、君が選ばれたんだ」
国枝が大げさに拍手をする。
信也は魂の乗った空中戦艦を見上げ、頷いた。
「乗せてください!私に!」
その言葉に国枝が肩を叩き了承した。

信也は空中戦艦オジジに魂の結合を果たすために準備を整えた。その間、国枝は彼に操縦の基本を教え、オジジの特性や戦術を熟知させた。

信也は緊張しながらオジジの操縦席に座った。周りを見渡すと、国枝技士とその助手たちが彼を取り囲んでいる。彼らの目は期待に輝いていたが、同時に厳しい視線も感じられる。
「信也君、今日からオジジの訓練を始めるぞ。用意はいいか?」
国枝の声が静かに響く。信也は自信を持って答えた。
「はい、準備は整っています。」
信也の心は不安と期待でいっぱいだった。
空中戦艦オジジは彼にとって初めての操縦経験であり、祖父の魂との結合は未知の力だった。

「まずは基本からやってみよう。オジジの操縦はお爺さんの魂との共鳴によって成り立つ。その共鳴を感じ取り、オジジを自在に操ることが大切だ。」
そう国枝が指示する。
信也は真剣な表情で国枝の言葉を聞き入れた。意識を集中し、祖父の魂との共鳴を感じ取ろうと努力したが、最初は何も感じられなかった。しかし、徐々に彼の心は落ち着き、祖父の存在を感じるようになっていった。
「いいぞ、信也君。その感覚を大切にして、オジジを操れるようになるんだ。」
国枝の励ます声に緊張感が増す。
訓練は厳しいものだった。信也はオジジの操縦に必要な技術や知識を習得するために、日々努力した。
彼は汗を流し、時には疲れ果て夜に咳き込むこともあったが、それでも信也の心は諦めることなく前に進んでいった。
ある日、訓練の最中に予期せぬトラブルが発生した。オジジのエンジンが突然停止し、空中で不安定になったのだ 
「信也君、すぐにエンジンを再起動するんだ!」
国枝が叫んだ。
信也は慌てずに冷静さを取り戻し、エンジンの再起動を試みる。しかし、何度試してもエンジンは始動しない。
「だめだ、再起動ができない!」
信也が叫ぶ。
国枝は一瞬ためらったが、それから彼の助手たちと協力してオジジを制御しようと試みた。しかし、彼らの努力もむなしく、オジジはますます高度を失い、地面に向かって落下していく。「信也君、操縦桿をしっかり握れ!クラッチを切って、エンジンを再起動するんだ!」
国枝が叫んだ。
信也は自分の最後のチャンスを信じ、決意を込めて行動した。彼は操縦桿をしっかりと握りしめ、クラッチを切り、エンジンを再起動させようとした。
「爺様!僕に力を貸して!」
信也の願いを聞き取れるように、奇跡が起きた。
オジジのエンジンが再び轟音を立て、復活した。
信也の熱意と祖父の魂との共鳴が、空中戦艦を再び生かしたのだ。
「信也君、すばらしい!」
国枝が喜びの声を上げた。
信也の心は躍り、彼の自信は更に高まった。彼はオジジの操縦に成功し、新たな力と使命感を得たのだった。
その後も訓練は続き、信也は日々成長していった。
信也の心は、祖父の魂との結合によって更に強化され、彼は空中戦艦オジジを自在に操ることができるようになった。
そして、訓練の終わりに、彼は国枝とその助手たちに感謝の言葉を述べた。彼らの支えがなければ、今の自分になれなかったことを、信也は心から理解していた。

空中戦艦オジジ

準備が整った日、信也はオジジの操縦席に座ると、祖父の魂との結合を感じながら離陸した。空中戦艦は雲を切り裂き、空高く舞い上がる。信也の心は爽快感に包まれ、祖父の魂との結合はまるで彼と一体化しているかのようだった。「今回、オジジと源信也伍長には樺太を回り込み、連合艦隊司令長官、東郷殿と連携し、バルチック艦隊の背後を急襲して欲しい」
バルチック艦隊の背後をつく作戦は大胆不敵であり、信也は初めての実戦であるにも関わらず、自信を持ってオジジを操縦した。
空中戦艦オジジが背後からバルチック艦隊に迫る。信也は舵を取り、祖父の魂と一体化した存在として、決意を込めた。
バルチック艦隊は巨大な戦艦たちが、荒々しい波の中を進んでいる。彼らの砲門からは、燃えるような砲弾が次々と放たれ、海面が爆発と煙に包まれていくのが見えた。
「信也君、準備はいいか?」
技官として乗りこんだ国枝の声が通信機から聞こえてきた。
「はい、準備は整いました。」
信也は自信を込めて頷いた。
オジジはその巨体を振り向かせ、翼を広げ、空へ舞い上がる。その姿はまるで雷鳴のような迫力で、バルチック艦隊の船員たちを恐れさせた。
バルチック艦隊の艦長たちはオジジの接近に気づき、緊急に対処策を練ろうとした。しかし、彼らの動揺は既に遅すぎた。
「Бомбардировка, полный огонь!(砲撃、全力で攻撃せよ!)」
バルチック艦隊の主砲からは連合艦隊へ向け、一斉に砲弾が放たれる。
だが東郷平八郎率いる連合艦隊はオジジの到着により混乱する場を想定し見事に攻撃をかわあい、バルチック艦隊を抑え込んだ。
「今だ、爺様!こちらも攻撃を開始するんだ!」
状況を見て取った信也が叫ぶと舵を握った。
オジジの主砲が一斉に発射され、バルチック艦隊の戦艦に砲弾が命中する。巨大な爆発が発生し、敵の船は次々と炎に包まれていくのが眼下に見えた。
バルチック艦隊の船員たちは混乱の中、必死に反撃を試みるが、オジジの機動力と砲火の威力には敵わない。
信也の指揮のもと、オジジはバルチック艦隊を圧倒し、敵の艦隊は次第に崩壊していった。「いいぞ、信也君!」
国枝が予想以上の成果に喜びの声を上げた。
信也は祖父の魂との結合によって力を得、勇敢に戦った。彼の指揮のもと、空中戦艦オジジはバルチック艦隊を撃破し、大勝利を収め日本へと帰還したのだった。


各話リンク

第二話 https://note.com/sugerpowder/n/n7dc1acb6a88f

第三話 https://note.com/sugerpowder/n/n6f17e47371a7

第四話 https://note.com/sugerpowder/n/n28de0539ce17

第五話 https://note.com/sugerpowder/n/n8d7fe7a931ff

第六話 https://note.com/sugerpowder/n/n022c20c820c8


#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門


この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?