<3日目│自分のカバンを用意する>より

「Por que caminos-tu?」(なぜ歩くの?)
 この道で他の巡礼者と出会った時、必ず聞かれるのがこれだ。この3日の間にも、食事の席で、道端で、顔を合わせた相手から何度もこの質問を投げかけられた。しかし、私は正直、なんと答えたらいいのかわからなかった。


引き続き、小野美由紀さんの『人生に疲れたらスペイン巡礼』を読んでる。
まさしく、なぜ歩くんだろう、を考えながら。

前回の記事で書いたようなことは
もちろん本音なんだけど、
ファイナルアンサー? って言われたら
急に自信がなくなってしまう。

理由らしきもの、他にも色々あるといえばある。


巡礼じゃなくても長期一人旅、
とくに自分で調べて自分で決める旅をしてみたかったとか
(海外は連れていってもらったことしかない)

一期一会の人と楽しい時間を過ごしたいとか
(日常でも国内旅行でもこれができたときすごく嬉しい!)

そういえば『一万年の旅路』を知ってから
長い距離を歩くことへの憧憬があるとか

毎日歩き続けたら身体引き締まりそう&体力つきそうとか
(これはほんとに期待できそう)

巡礼行ったら話のネタとして重宝しそうとか


......でもどれも、
「なるほど、そこが満たされれば満足なのね?」
って改めて確認されるとわからなくなる。

なんで歩きたいんだっけ。
少なくとも歩くのが好きだからじゃないのはたしか。

なんでカミーノにこだわってるんだろう。
日常を離れて信仰の道を歩きたいだけなら、
四国のお遍路だって、熊野巡礼だってある。

 なぜ歩くのかと訊ねた私に、ジョアンナは一言、答えた。
「夫が3年前に死んだの」
 この道には、なぜか、パートナーと死に別れた人が多く訪ねてくる。
「でもある日、気づいたの。ああ、もう私のカバンを用意してくれる人はいないんだって。私は自分に言い聞かせた。ジョアンナ、いつまで悲しみにとらわれているつもり? これからは、私が私のカバンを用意するのよ、って。それで、まず最初にこの道に来たのよ」
 そう言って、ジョアンナはにこっとした。
「女はいつからだって強くなれる。そうでしょ?」
 私は頷く。だって、反論できるだろうか? 60歳を超えて今、800キロの道をたった一人で歩こうとする、老婦人の言葉に。

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