地図

20メートルは跳んだ。

跳んでいる時はいつも、
前傾姿勢を意識している。
今日はきりもみも少し入って、
激しい風圧に、衣はビラビラ。

--(全員で)
「おめでとう」
「ありがとう」
「おめでとう」
「ありがとう」
誕生日?はたまた結婚でもしたのだろうか?
よそ行きのブラウンのダブルのスーツは、
少し時代遅れだった。

まだまだ跳んでいる。
グングン小さくなっていく。
飛び方を忘れたソレは。
姿勢を保つだけで精一杯だった。

--(全員で)
英語の歌が聞こえる。
耳馴染みのない歌だ。
もしかすると、
英語ではないのかもしれないし、
歌でもないのかもしれない。

少し溶けてきた。
目も開けられなかったスピードは、
今や薄目が開けられるくらいにはなっていた。
ここらでようやく荷解きを始める。
多くはないので、すぐに解けた。

今だ!
吼える!
吼える!吼える!吼える!
咥えて、齧って、吼え続ける!

血だらけになった感情で、
地図はもう見られなくなっていた。

8メートル、
寄り道して帰ろう。

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