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「ミュージック・ステディ」研究~別冊編。

「ミュージック・ステディ」には別冊が何冊か出ていて、その中で持っているのは最初の「THE ROCKERS ロック評論集」と最後の「FILE」だけなんですが、他の号はおそらく簡単に入手することは難しいと判断して、今回書いてみることにしました。

・「THE ROCKERS JAPANESE ROCK CRITICAL FILE ロック評論集」(ステディ出版)

 これで取り上げたアーティストは山下久美子さん、佐野元春さん、伊藤銀次さん、杉真理さん、東京ロッカーズ、アナーキー、RCサクセション。
この本が、発売された時点(奥付によると1982年12月20日)で「ミュージック・ステディ」でMUSICIAN FILE・徹底研究をしていたのはRCサクセションと佐野元春さんだけですね。
他のアーティストはインタビューや特集にコメントしていた程度でした。

 山下久美子さんについて書いているのは大野祥之さん。この時点での「ミュージック・ステディ」ではレコード評が中心だったと記憶してます。
まだ山下久美子さんは「赤道小町ドキッ」がヒットしたばかりで、初期とは作家や楽曲の色合いを変えていく道半ばの状態なのだから、評論するのはちょっと難しい時期だったかもと思います(生意気言ってすみません)。
この1年後にMUSICIAN FILE・徹底研究で取り上げられた際はより深く踏み込んだ内容でしたね。

 佐野元春さんについて書いたのは吉原新一郎さん。(栗栖和人改メ)とクレジットされています。 
佐野さんの歌詞を引用しながらのこの文体が吉原(聖洋時代も含む)さんの持ち味なんですが、この時点である程度は完成しているように思います。
佐野さんの文学、文化的素養を自らの知識と結び付けて進めていくスタイルというか、音楽バカになってはいけないと私に思わせてしまったのでした。

 伊藤銀次さんについて書いているのは菅岳彦さん。
これを読むと、MUSICIAN FILE・徹底研究は菅さんが中心になって進行していたのかな?と思いました。
インタビューで引き出した言葉を丁寧に紡いでいて、登場する人物についても正確に書かれています。
菅さんと吉原さんに市川さんで組み立てた誌面に惹かれたのは3人の個性が上手く出ていていたからですね、間違いなく。

 杉真理さんについては吉原新一郎さん。
この評論は「60年代の夢を追い続ける永遠の少年」という見出しに尽きます。
佐野さんについて書かれた文章とは違い、杉さんへのインタビューをメインに進行し、日本のポップス・シーンに対する批評もされています。
歌詞を引用されている点は共通してますが、杉さんと佐野さんの持ち味の違いを意識して書いているのがたまらないですね。
これはかなり重要です。

 東京ロッカーズについては地引雄一さん。
当事者でもある地引さんが綴ったのはドキュメンタリーとしての東京ロッカーズ。
とにかく写真のセレクトが素晴らしい。
そして、東京ロッカーズ以降というか、その後の流通を含めた活動の指針など、今読んでも納得できる内容になってます。

 アナーキーについては生江有二さん。
「ミュージック・ステディ」創刊号や映画「竜二」の単行本など、生江さんの持ち味がでている文章ですね。
ARBやアナーキーを週刊誌で取り上げているから、こその整合性が高い内容になってます。
他にもマイキー・ドレッドとの出会いやPANTAさんとのエピソードなど、熱心なファンなら必読ですよ。

 RCサクセションについては菅岳彦さん。
菅さんの持ち味であるデータと分析力の高さがいい方向に出ていますね。
日本のロックシーンの中でのRCの位置について書かれたものは少ないので、興味深い内容になっています。

 編集後記は市川清師さんによるもので、なぜ評論集を出したか、などについて真摯に述べています。
ステディを出した意味と雑誌だけではできないことを実現していくという意気込みが感じられて、発行されてから40年経過した今読んでもグッときます。

・「FILE 佐野元春 浜田省吾 杉真理 伊藤銀次」(ステディ出版)

 確かステディ別冊が発売予告された際にRCサクセションか大貫妙子さんのMUSICIAN FILE・徹底研究を復刻する話があった記憶があります。結局はインタビュー集になってしまったようですが。

 この号は佐野元春さん、浜田省吾さん、杉真理さんに伊藤銀次さんの徹底研究・MUSICIAN FILEを復刻したものですね。
こちらは奥付によると1985年12月30日発行とあります。
ただ単純に復刻したのではなく、徹底研究の後に掲載されたインタビューを追加掲載したり、杉真理さんと伊藤銀次さんに関しては全曲解説も発売時点のアルバムまで追加していますし、杉真理さんの楽曲としての「KEY STATION」についてのインタビュー(インタビュアーは小島智さん)も掲載されています。
確かこの時点では編集長が小島智さんになっていたはずです。

 ものすごく有難いと発売当時思いましたが、正直もっと新しい切り口のものも読みたかったとも感じていました。
それは自分の興味がムーンライダーズ周辺に移っていたのと、月刊誌としての「ミュージック・ステディ」が正直テンションが落ちていたように思っていたことを思い出しましたね。
それは徹底研究・MUSICIAN FILEだったり、インタビューやディスク・レビューにもピンとこないものが出てきたりしたからです。

 季刊誌~隔月誌だった頃、本屋さんにまだ入荷しないか、あまりにしつこく訊いたので、店員さんにおもいっきり嫌われた位でしたので、やっぱりちょっとガッカリしながら読んだことを覚えてます。すみません。

 でも、こうしてまとめて読むと、「ミュージック・ステディ」の揺るがない部分がわかったのが最大の収穫だったし、中学~高校の頃の私の感覚もまずまずだったなと思いました。

 長々書きましたので、明日は何か力があまり入らない記事にしたいと考えています。ま、あくまで予定ですが。

 ではまたー。

 


 

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