アヒルと鴨のコインロッカー_ヘッダー

#3 この世界に完全な善悪なんてない。:アヒルと鴨のコインロッカー(伊坂幸太郎)

こんにちは。すがっしゅです。

今回ご紹介するのは、伊坂幸太郎さんの小説
「アヒルと鴨のコインロッカー」です。
これがまた、すごく面白かったです!!!
し、考えさせられました。

★不条理な世の中:殺人犯が一番長生きする…

一言で言うとこの小説は、世の中の無茶苦茶さを語る話です。

"善い行いをすれば、良いことが返ってくる"
"悪い行いをすれば、悪いことが返ってくる"
そんな単純な世の中ではないですよね。
何の罪もない人が戦争や災害で死んだり、人を殺す殺人犯がのうのうと幸せに生きていたりもする。

だからこそ、ちょっとぐらい悪事を働いてもいいじゃないか。
殺人犯に復讐したって、災害で死んだ家族の恨みを国にぶつけたって。
そうせざるを得ない事情を、誰もが胸の内に抱えながら生きている。

全ての人の善悪には、バックグラウンドがある。
つまり、人々の中に完全な善悪など存在しない、ということ。

そんな世の中について、少しづつ語っていく小説です。

★相手の人生を想像せずに批判する人々

先日 防弾少年団(BTS)が、日本に甚大な被害を及ぼした原爆投下を肯定するようなデザインのTシャツを着た上で、音楽番組に出演しようとし、出演中止となる騒動がありました。

「広島出身です。怒りを覚えます」
「Tシャツで冗談にすることじゃない」
とBTSを批判するバッシングが相次ぎました。

ですが一方で、韓国には、日本に植民地にされた恨みがあります。
植民地にされることと、原爆を投下されること。
どちらが悪か?原爆の方がより人を殺すから悪?
じゃあ生き地獄をさらされる植民地化の方がましなのか?

そんなの判断つかないはずです。
日本と韓国、どちらが善でどちらが悪か、ジャッジなんてできない。

確かに、原爆なんて絶対に許されないことだということは当たり前。
人殺しの兵器が肯定される訳にはいかない。
ですがそれはあくまで客観的な一般論。
私は、大切な人が殺されたら、殺した人を殺しに行きます。
皆さんもそうですよね?

BTSを批判する方々の気持ちは当然わかります。
ですが、BTSが持つバックグラウンドに想いを馳せた人がどれだけいるのかな?と私は思ってしまいます。

★全ての行動の裏には、背負ってきた物語がある。

神も仏もない無茶苦茶な世の中。
つらい体験や幸せな体験がまるでランダムで選ばれているかのように人生に降りかかり、そうして一人一人の人生に積み重なったバックグラウンドが、
物事をどう価値判断するか、どういう行動を取るか、を決める。

人の行動に完全な善悪なんてない。だから、
相手が背負う物語を、想像してみる優しさがあっていいんじゃないか。

そんなメッセージを、「アヒルと鴨のコインロッカー」から感じました。

そしてさらに思ったのが、
「人生で体験したことが価値判断・行動に影響を与える」という原則は、
なにもネガティブなことばかりに働かないはずだということ。

助けられて幸福な気持ちを味わった人は、
そのバックグラウンドから、他の誰かを助けようと思うはずです。
「人に優しくされたら、その分 人に優しくなれる。」
月並みな言葉ですが、その通りだなと思います。


というようなことを感じさせてくれた
「アヒルと鴨のコインロッカー」。
素晴らしい小説だなと思いました!。

ここまで小説から感じたメッセージについて書きましたが、
もちろんストーリの内容やテクニック論的なところもとんでもなくすごいな…と思いました!
ラストに近づくにつれ、1つの章が終わるごとに伏線がすごい勢いで回収されていくのは爽快でした!

それでは、今回はこれで。ぜひ読んでみてくださいね!

「ソラニン」第3回「アヒルと鴨のコインロッカー」でした。
読んでくれてありがとうです!

ではまた!

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