_8_陰日向に咲く

#8 みんな悩んで、みんな良い…ことがあるはず。:陰日向に咲く

こんにちは!すがっしゅです。

第8回は、劇団ひとりさんの「陰日向に咲く」をご紹介します。
私は小説を読みましたが、映画化もされているみたい。

「陰日向に咲く」は短編集のようになっていて、
・ホームレスに憧れるサラリーマン
・売れないアイドルを追っかける男
・男に遊ばれる女子大生
・借金まみれのギャンブラー
・売れないお笑いコンビ
…と様々な人間の様々な人生を、短編でテンポよく描かれていきます。

実際にいそうでいなさそうで、でもちょっといそうだな…
という絶妙なリアルさを持った登場人物たち。
一見 斜め上をいく人物像が題材となっていますが、世の中の多くの人に広く当てはまるような心理(真理)が、描かれてるような気がしました。


★皆それぞれ、人生を泥臭く生きている

男性が女性を批判したり、女性が男性を批判したり、
貧乏な人がお金持ちの人を批判したり、お金持ちの人が貧乏な人を批判したり…する世の中ですが、
人にはそれぞれ悩みがあり、立場によって悩みの種類は異なります。

例えばこの「陰日向に咲く」でいうと、
サラリーマンは仕事に忙殺されて心を失い、いつしか着の身着のままフリーに生きている気がするホームレスに憧れるようになるし、
売れないアイドルを追っかける男は、毎月アイドルに高額なプレゼントを贈るために、毎月の生活はギリギリ。廃棄になったコンビニ弁当を深夜のゴミ袋を漁って食べる始末。

立場は違えど、綺麗に何もなくイージーに人生を歩んでいる人なんていませんよね。皆それぞれの立場でしかわからない悩みを抱えながら、出来る範囲で地道に、それぞれの人生を泥臭く生きています。

この物語を読み始めて最初の感想は、
「みんな、苦労してるんだなぁ~」。w 
超当たり前・薄っぺらですが、この感覚、ちゃんと意識した方が良い・忘れてはいけない感覚だと思っていて。

まずこの本を読んで得られることは、一見アウトローである種 偏見を持たれがちな人であっても、どこか自分と同じなんだってことが分かることです。
あなたが苦しんでいるように、ラク~に生きてそうなあいつも苦しんでる。
あなたが蔑むあの人も、同じような理由であなたを蔑んでいる。

どんな人生も泥臭いものなんだろうな~と思います。


★自分の人生は他の人生と繋がっている

みんな泥臭く、頑張っている。その上で。
「人生は影響し合うものだ」ということを、この物語は描いています。

例えば、ホームレスに憧れたサラリーマンは、憧れすぎてとうとう実際にホームレス生活を始めます。寝床は段ボール小屋に、食事はゴミ袋に入っている廃棄になったコンビニ弁当に生活が変わります。
憧れていた自由なホームレス生活…だったはずなのに、ゴミ袋を漁る時は人目を気にして恥ずかしくなったり、段ボールの中では通りかかるOLの冷たい目やホームレスを蔑む大学生たちの目が痛かったり。おれは本当に自由を求めていたのか?
そんな事を考えながらゴミ袋を漁っていたある日。廃棄の弁当をつかむ手が重なります。ホームレスになった男と、アイドルファンの貧乏男が廃棄の弁当をきっかけに巡り会ったのです。

弁当を奪い合っているうちに、必死に生きる青年に心を打たれ、ただ仕事に忙殺される生活から逃げたいだけだった自分に気づいたホームレス男。
この一件をきっかけに、この男性はホームレスを引退・社会復帰し、管理職にまで上り詰めることになります。

何気ない出来事の中で、自分には全く無意味なひと時であっても、
人によっては、その瞬間が人生の転機になることもあると思うんですよね。
泥臭く生きていく中で、誰かの言葉が、行動が、誰かの人生に少なからぬ影響を与えている(良くも悪くも)のだと思います。

教師が何気なく「内気な子だねぇ」とつぶやいたその言葉が、
その子を自己肯定感の低さで一生悩ませる呪いになることもあるし、
何気ない上司の一言が、ビジネスマンとしての生き方を変えてくれた運命の一言になることもある。

自分の人生は誰かの人生と繋がっている。
そんな真理を、この物語は改めて感じさせてくれます。


★影響し合う中で、いつか良いこともある…のかも

自分の人生は誰かの人生と繋がっている。
それは、誰かの人生は自分の人生にも繋がっていることも意味します。

この感想文を何となく読んでいるあなたにも悩みはあるでしょうし、
人は皆 それぞれの立場の中で、何かと戦っています。
時には死にたくなる時もあるし、つらい時もあるかもしれません。
だけど、
目の前の生活をとにかく生き抜いて、泥臭く頑張り続けることができれば、
他人の人生に与えた影響が、巡り巡って、いつか思わぬ形で自分の人生を助けてくれることがあるかもしれません。

かつてホームレスに憧れたサラリーマンは、アイドルの追っかけをしている、深夜のコンビニの裏で廃棄の弁当を巡って争った青年と出会って、人生を一変させました。その後、アイドルファンの青年は、逆に思わぬ形で、このサラリーマンに救われることになります。

目の前の生活をひたすら泥臭く生きて抜いていく。
思い浮かべた理想の生活、になることもあるし、ならないかもしれない。
だけど、一人の人生は確実に誰かの人生に影響を与え、
それが巡り巡って、自分の人生を助けてくれることもあるかもしれません。

いつか良いことがある…のかも。
結果オーライ、となれば、それだけで良い人生なのではないでしょうか…?


そんなメッセージを感じた作品でした。感動しました!
もしこの物語が好きなのであれば、内田けんじ監督の「運命じゃない人」もとっても素晴らしいので、ぜひ見てみてください!

以上です!ぜひ読んでみてください。
ソラニン第8回「陰日向に咲く」でした。

ではまた。

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