そんとくさんとあっけらかん(損得さんと呆気羅漢)Pt.11

今日は緊張しています。
クラス全部がふわふわと膨らんでいます。
さっきから窓の外が気になって
(もう 来たかな もう 外に居るかな) と 落ち着きません。

廊下には次々と お母さん達が集まり立ち話を始めています。
こんな時
「ま~お宅のお子さんは・・・」 か
「ま~お宅のご主人は・・・」 から始まる情報確認で
これからお付き合いしていける
損か得かの値踏みの場となる お母さんも居たりするのです。

始まりのチャイムが鳴ってお母さん方が入ってきます。
普段よりぐっとおしゃれしたお母さん方が
ちょっとよそ行き?の服装に身を包み、ねんいりにお化粧した顔が
(うちの子大丈夫やろか)の 心配と期待との複雑な面持ちで並んでいます。

国語の時間 「私のお母さん」 の題名で
作文書いてくるのが宿題でした。

共働きの家庭 おじいちゃんおばあちゃん同居の家庭
人数多いか少ないのか、裕福なのか貧乏なのか・・・
家庭環境をふんだんに盛り込んで製作された文もあったりするので
お母さん方ははらはらどきどき・・・
心臓の鼓動が聞こえてきそうで
教室全体がはらはらどきどきの渦に包まれてしまいます。

何人か名を呼ばれ読み上げた後
「では そんとくさん。 お願いします。」 と
そんとくさんはびっくり箱に閉じ込められていたバネ仕掛けのおもちゃのように
ピョ-ンと立ち上がりました。
顔は真っ赤です。 みんなの声がさあ~と引いていきます。
頭がボーっとして 目に映る文字を何とか読み上げていくのに一生懸命です。

「私のお母さん」

{続く}


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