土日のニュース(?)番組のコロナ解説について

私の家族には、私以外まともに(選択科目としての)「生物」という教科を履修した人間がいない。私の両親が高校生だった時に、理科は一体どんなカリキュラムで学んでいたのか私は知らないし、調べる元気もない。が、少なくとも、DNAに関することが色々と明らかになってまともに指導要領に組まれる前に、両親が学生生活を終えてしまったのは間違いない。私が生まれた年にヒトゲノムは解読されたのだから、DNAの仕組みをよく知らなくても無理はないのである。


クリスパーキャスナイン、CRISPR/Cas9を開発した人たちがノーベル賞を受賞したことで、DNAやそれらに関連する物質が遺伝情報としてどのような挙動を示すのかについて、少し話題になったし、本も出版された※ようだ。
※…ノーベル賞を取る前から出ていたが。

とはいえ、それを好き好んで読む人はそう多くないと思う(難しそうという理由で?)し、ニュースでいきなりmRNAなんて出てきたら、普通、まぁ、DNAと同じような見た目のアルファベットだし、遺伝子系の何かでしょ、終わり。みたいな感じで、調べようとしないだろう。
私の両親もそんな感じであった。


でも、何も知らないにしても、ワクチン陰謀論のひとつ、「遺伝情報が書き変わる恐れがある」については、そうなのかなと思ったら調べて欲しかったが。
純粋な目で「違うの?」と聞かれ、答えようかとも思ったが…なんせDNAについてほとんど習ってこなかった(はずだ)から、話そうとすると相当な量の知識を与えることになる。途中でオーバーフローしてもういいやと言われてしまってもしょうがないし、違うよとだけ言っておいた。人に聞くくらいだから、本腰入れて学ぶ気は無いのだろうし。

とはいえ、興味が湧いたからといって調べようとしても、そうわかりやすくないのがDNAの遺伝の世界のようだ。私は、中二の暇な時期にアホみたいにゲノム編集関連の新書を読みまくっていたので抵抗はないが、そういうことをする代わりに昆虫図鑑を読み込んでフィールドワークに徹していた友達は、生物の「遺伝」の単元はどうも苦手なようであるし、模試を見ても、なかなか平均点が低くとどまっている気もする。


何が言いたいのかと言うと、多分、遺伝関連(勿論、ウイルスの増殖の仕方だって含まれる)の話をよく知らない人というのは、日本国内、そんなに少なくないのではないか……ということだ。

と、私が思っているよそで、紙芝居だのパネルだのを使ってワクチンの仕組みだったりデルタ株が今までのコロナウイルスと違うところだったりを解説する番組が、土日によくやっている。

テレビがついていれば見るのだが、そこで少し驚くのは、ある程度デフォルメされてわかりやすくなっている割には、「受容体(レセプターとしていることもある)」などという専門用語をさらりと使っているところだ。受容体への結合のしやすさは、ウイルスを擬人化して「腕力が強い」などと表現していて、また受容体についても、わかりやすいように細胞についたドアとして比喩的に表現されている。これは、話の概略を掴むだけであればわかりやすくていいと思う。ただ、何故か依然として、ドアは「受容体」という名前であることを挟んでくるのだ。うーん、その、視聴者に伝える情報の取捨選択の基準が知りたい。
私個人的には、「受容体」という言葉を使うならばもう、ウイルスの腕力ではなく、構造的に結合しやすい形だった、みたいな説明にしてしまってもいいと思っている。

【注】コロナウイルスデルタ株について、私はなんの参考文献も読んでいないので、どのように感染力が強いのかは何も知りません。「構造的に結合しやすい形だった」かどうかはわからないので、腕力が強いと比喩的に表現していたことの科学的な説明の一例として、私が適当に思いついたものと思ってください。


mRNAワクチンについて、またコロナウイルスについて学ぼうと思っても、やや敷居が高い人もいる。安全だと言うならそれでいいと思う人だっている(私の両親)。
そういうものを比喩的に説明してくれる、いい時間帯に放映される番組があったとしても、それを見ただけでは、ワクチン陰謀論がどう間違っているのか、説明できるようにはならないかもしれない。

そもそも生物における「遺伝」とは、「生命の設計図」とはどんなものでどう機能しているのか、本当の意味で誰もが学ぶことの出来るツールが普及してくればいいのになと、プレDNA編集普及世代の親を持つ私は思ったのだった。

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