見出し画像

【雑文】好きな<設定>のはなし

本や映画を摂取したり、ゲームをプレイしたり、とにかく様々な「フィクション」に触れていると、同じようなジャンル、似た<設定>がどうしても好き好き~~!になってしまうこと、ありませんか?
私はいつもそんな感じです。

「SF」とか「ミステリ」とか、そうした大きい枠組みではなく、もう少し狭いところで私が好き好き~~!な<設定>を告白しようと思います。

圧倒的な寿命差

「性癖はなんですか?」と聞かれたときに即答で「不死のキャラクターと普通の人間の寿命差」と答えるくらいに好きな設定です。不老不死の設定は、SF的な背景以外でも吸血鬼モノなんかでもよく見かけますね。

えっちな作品になってしまいますが、最近ズキュンときたのは、あまね先生の「望月血液研究所の娘」という成年コミックです。「永遠娘」という、ロリババア専門雑誌(書いていてヤバい)からの単行本です。まさにロリババアな吸血鬼の少女と、彼女に血を吸わせて金を稼ぐ商魂たくましい少女の百合えっち作品です。表題作もいいのですが、「つづれ織り」という作品がまたいいんですよ。こちらも不老不死の少女の話なのですが、彼女は不老なのを怪しまれないために数年で仕事や住む場所を変えるのですが、ある時むかし彼女が仕えていた館の主人の娘(当時は少女より幼く見えたが、今はすっかり大人の女性になっている)と再会します。不老の少女と年齢を重ねる女性の寿命差の切なさと、その刹那の燃え上がるような熱い愛。いや、もう最高に素晴らしい。

こちらの性癖の芽生えは、完全に原因がわかっています。「幻想水滸伝」というコナミから出たRPGゲームシリーズです。こちらでは「真の紋章」を宿したものは不老になり、真の紋章の宿主が死んだ際は次の者に受け継がれていきます。彼らが巻き起こす時代の流れを描いていくシリーズ作品です。
「真の紋章」を宿した主人公と、彼らとともに過ごす仲間、友人。たとえゲームを最高のグッドエンディングで迎えたとしても、「この数十年後、主人公だけが生きていて、仲間はみんないないんだ」という辛すぎる世界を想像して涙したものです。

ループもの

ループものにはマジでガチで目がないです。いわゆる「何度も同じ1日(特定の時間)を繰り返す」タイプの作品です。日本においては「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」あたりがオタクがループものを好きになる切っ掛けと言われています。近年でも、涼宮ハルヒのエンドレスエイトひぐらしのなく頃になど、名作が数多く存在します。

わたしがループものを初めてそれと認識したのは、萩尾望都の短編「金曜の夜の集会」です。あらすじを引用しますね。

8月最後の金曜日、マーモはジンジャーの香りで目が覚める。今日はローエル・ポーエル衛星というほうき星がやってくるので、天文クラブのみんなで学校の天体望遠鏡を見に行く予定だ。ところが、先生が今夜は急用で天体クラブを開けないと言う。
がっかりしたマーモはダッグの家につれて行かれる。すると、ダッグに大きな天体望遠鏡を見せられる。ダッグの父親は去年の秋に蒸発したが、ダッグには母親にかくれてこっそり会っていて、買ってくれたのだ。マーモとダッグは城跡に行ってこの天体望遠鏡でほうき星を見ることにする。
マーモは以前から好きだったセイラを映画に誘うが、今夜は両親が町内会に出かけるため留守番しなくてはならないのでダメだと断られる。でも来週の金曜なら大丈夫と言われて、有頂天。家に帰って夕食を食べると、マーモの両親も出かけるので留守番をするよう言われる。
ダッグがやって来るが、マーモは家から出られない。ダッグの母親も出かけたきり帰らない。近所にはおとなはみんな出かけてしまい、子供しか残っていないようだ。そういえば先生も用事があると言っていた。今夜何が起こるのか?ダッグとマーモは大人たちを捜しに出かけるが…

短編SFなので、ループの解決を目指すような「ループミステリ」ではなく、ただただ成長出来ない切なさというか、胸が締め付けられるような後味の作品です。現在は「半神」の文庫版に入っているものが一番入手しやすいと思います(半神もいい作品ですね)。

最近のヒットだと、映画「ハッピー・デス・デイ」が最高のループものえいがでした。自分の誕生日、どうしても謎のキモいマスクの男に殺されてしまう金髪クソビチギャルが主人公なのですが、話が進むに連れこのギャルのことが大好きになってしまうのです。「ギャルとオタク」という最高の組み合わせ要素もあり、誰にでも薦められるタイプのループもの作品。

ディストピア

ディストピアSFが大好き!
というと、SFガチ勢に怒られてしまう程度には知識がないのですが、それでも好きなものは好き。

ジョージ・オーウェルの「1984」あたりをあげたらカッコいいかな、とも思うのですが、自分に素直になれば一番好きな作品は貴志祐介の「新世界より」です。アニメ化もコミカライズ化もした名作ですね(貴志作品のなかではアニメや漫画って珍しいよね)。

ここは汚れなき理想郷のはずだった。
1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!
子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!

あらすじを見ると、「汚れなき理想郷」であると言っている背後に闇深すぎる事実が隠されているので、まさにディストピアの典型なのだなあ。名作過ぎて多く語ることもないのです。

名作続きですが、伊藤計劃の「ハーモニー」やら、もちろん「バトル・ロワイヤル」なんかも大好きです。その世代ですからね。

ディストピアものは、様々な社会風刺のようそがあるのも面白さの要素だと思うのですが、その点だとヨルゴス・ランティモス監督の映画「ロブスター」とかもめちゃくちゃ面白かったです。独身でいると動物になってしまう世界――なんだそれ!?

設定だけ見ると、一見バカ映画と言われてもおかしくないのですが、この監督の描く独特の世界観はほんとすごい。動物になるなら子鹿になりたいな。

メタフィクション

うまくやらないと白々しくなってしまう「メタ」もの。つまらない「メタ」を読んだあとは「これだからメタはオタクしか好かないんだ!!」とキレそうになりますが、それでもやっぱり面白いですね。

劇中劇ならぬ、作中作である竹本健治の「匣の中の失楽」がメタとの出会いであったように思います。小説の中で登場人物が小説を書き、1章の次はその小説の世界に、そしてその小説の中の小説の登場人物が小説を書き、2章の次はその小説の世界だけど1章の続きで……。初めて読んだときは頭がパンクするかと思いました。やっぱり傑作だなあ。

最近読んだものでは「異セカイ系」という小説が面白かったです。「な~んだ異世界系かあ」と書店で流し見をしていたなか、たまたま手にとった作品なのですが、びっくりするくらいよかったなあ。

第58回メフィスト賞受賞作。小説投稿サイトでトップ10にランクインしたおれは「死にたい」と思うことで、自分の書いた小説世界に入れることに気がついた。小説の通り黒騎士に愛する姫の母が殺され、大冒険の旅に……♪ってボケェ!! 作者(おれ)が姫(きみ)を不幸にし主人公(おれ)が救う自己満足。書き直さな! 現実でも異世界でも全員が幸せになる方法を探すんや! あれ、何これ。「作者への挑戦状」って……?

この語り口調に設定、ラノベでは……?という皮を被った良質のメタミステリ。「作者への挑戦状」というワードを信じてよかった。

ライトノベルの世界では「これは学園ラブコメです。」も個人的には好きなんですが、なかなか万人にはオススメしづらい。でも同じ作者の「大進化動物デスゲーム」よりは胸を張っておすすめできます(どうデスも好きです)。

まとめ

訓練されたオタクなので、オタクが好きなものはけっこう普通に好きです。

面白い本の購入費用になります。