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きいろちゃんの短歌まとめ 06

感性を殺されていく日常で喘ぐように駆け込む本屋

イチョウ降る遊歩道を行く男女が夫婦である確率を求めなさい

卒業後見上げた校舎は小さくてああこの箱庭でわたしは死んだ

蜜芋の黄色眩しく冬空にかざしたくなる星座となれ芋

新青年で読んだ銀座を地図として聖夜の夜会のドレスを探す

飛んでいく君を縄で縛ってもパチンとはじけるシャボン玉のごと

すべすべでかわいい石を見つけたらその日は1日無敵でいいです

ファミレスで黒霧島をキープする駄目で愛しいわたしの人生

あなたへの愛しさだけで生きれたいいのに帰りにトイペ買わなきゃ

駅前にマンションが建つマンションが建つ前なにがあったんだっけ?

君の舌が私の八重歯をなぞりゆきコンプレックスごと蕩けてしまう

新しい下着は誰かのためではく自分のための星屑レース

柴犬のふくふくのあごを撫でながら秋が終わればそれもいいなと

わたくしはわたくしである それさえもあやふやになるほしぞらのした

サクサクな紅葉に包まれ死んでいく幸せなまま終わりにしたい

生きるのは勝ち負けじゃない秋池で鯉たちはただ彩り泳ぐ

定形のしあわせとしてオムレツはバターを過剰に包括している

ほんとうに言いたいことは瓶に詰め海に流した今日もおはよう

放課後の多目的室木漏れ日で君の和毛を撫でる聖域

永遠を信じる君の無邪気さにパフェつつきながら終わりを想ふ

古書店で売られる本に挟まれた手紙のような不意の出会いだ

あれこんなところにあったの喫茶店にげる猫を追いかけた先

いつの日か君は月へと帰るだろう 郷愁、見上げる君の横顔

会いたいと言えぬ僕らは寂しいの合図に猫の写真を送る

隣席の山田がノートに五芒星書き殴ってる呪うみたいに

悲しくて耐えられないから力うどん餅がずぶずぶつゆを吸うまで

教室の女王蜂めく彼女にも背中に残るアトピーの痕

もしいつかあなたを殺す日が来ても今日は2人で樽ハンバーグ

愛情はその場で食べる消費税10パーセントを込めてください

ただ肉でありたい日もある意志だとかそういうものは手放す土曜

変わらない関係性はないわけで明日きみが消えても、月は

おそろいのピアスのために開けた穴ふさがっちゃうよ冬がまた来る

定型の言葉で済ますマッチングアプリの男たぶんAI

失敗と思った歌にあの人が「いいね」をくれて続いた命だ

まだ消えぬミルク風呂の甘き香の乳くさきこと貴方のごとし

1度だけタイムリープに成功しあの日のデートがあったのマジよ

思い出の味だよこれはとあの人が食べるボンカレーやけに美味そう

わたくしの心はロッキンホースバレリーナ震えず立てるまで戦って

有給の申請理由はいつだって「ツチノコ探し」の同僚・加藤

真夜中のラーメン中に人類は平和とかを祈ったりする

秋服を無限に買いたい秋服は可愛いのにああ冬がすぐ来る

整わない味のやろうめカレー粉をぶち込みすべてカレーにしてやる

寂しさで処方されたお薬にわたしは「5番」とただそう呼ばれ

最後にはふさわしくないお天気ですもう1日だけデートをしましょう

神妙な顔でケーキを選ぶ君 見惚れた私は「君と同じの」

何気なく「マクド」と口をついた日に大阪に負けてしまった気がした

ゆっくりと寄り道しながら「おしまい」にたどり着くまで笑い合う生

どこまでもつづく夜空があるとして同じ月を見上げていますか

面白い本の購入費用になります。