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きいろちゃんの短歌まとめ 05

ああだからみんなシフトをあけてたのレジ打ちながら聞く遠花火

明日との境界線があやふやな24時5分くらいの世界

枷めいた首輪をつけて街ゆけば野良であるなとやけに沁みてくる

にんげんは縛られる自由がある枷のような首輪を嵌める

幸せの多い日々が怖すぎて逃れるようにトーキョーに来た

しんとするオフィスの中でおはようがSlack中に響きあってく

養殖のあなたをプールに放ったらほんとのあなたもすくえる気がして

πのことよく知らないまま会社では昇進とかも検討されてる

処女膜は何十万かで再生す にんげんは「知らない」を買える

可愛いと問えば貴方が可愛いと返し私は可愛いになる

チェシャ猫のにんまりみたいな三日月がぼくを見下ろし8月が終わる

さみしい時はめる首輪があればいいリードを君が持つとなおいい

先週の今日は一日君といたハイボールでも飲みに行くかな

人並みに生きてきました故郷では原宿のサロンで染めた青髪

追いかける白兎も居ないままアリスになれず少女を脱ぎ棄つ

「なぜ山」「マロリー」「の天気はすぐ変わるのか」「テンプレ通りに生きてくれ」

「問題。あなたがくれた三日月に手が届かないのはなぜでしょう」

ああこれはすったもんだのレモン味キスごときでは誤魔化されません

恋人とペットを両立せし君のほんのりマグロ味のするキス

きっとまた間違うだろう人生をその時はまたこの店で会おう

にんげんに反抗的なキミの瞳(め)を蕩けさせようちゅ~るを捧げる

お水買うお水だけ買う本当にこのアイスはあのなんか、くれた

来週の日本はかなり不確定で並行世界のいずれも雨らし

「本日はパンツを履いておりません」もうわたしから目を逸らさせない

曇天の電波塔はシンボルで電波が消えてひとが消えても

わたくしのおっぱいがあと3センチ大きかったら世界史が変わる

地元には隠しごとが多すぎて本心を都会に残し帰省す

とりあえず頼んだビールは君の前 私の前にベリーのカクテル

はんなりと練り香水を首すじになじませ君にしなだれてみる

少しだけ泣いた。それから起き出して目玉焼きとトーストを焼く

もう全部決めてほしいよ死に方も なのに君は「生きろ」とか言う

ストゼロとピザポテトを買ってく日泣きそうなのがバレてる気がする

永遠であってください君といぬ 君とわたしが終わったあとも

君が好きって言ってた本のタイトルが思い出せないときは聞くべき?

10年と3日前の自分から届いた葉書「まだ生きてますか?」

焼きそばを買っているうち見そびれた何個かの花火みたいな人生

私なう現世いるなう君はうぃる私のことを徐々に忘れてく

何もかも知っていると思ってた君の内腿の並んだホクロ

「…帰りたい」自分の部屋で言っちゃうの やっぱ私も転生者なのかな

何度でも生まれ直して何度でも食べたいと思う味のカレーだ

哀れみで抱かれたらしい知らんけど 私が抱いたつもりなんだが

明日こそは限定5食のラーメン食う 気合い入れるぞラーメン食うか

まだ同じ花を見て美しいと言えるうちに心中しよう

振り向いて通りに誰もいないなら私を呼んだあの声はなに?

陽炎が立つとループする世界 とこしえに夏 眩しいくらいに

空っぽの頭蓋ですから詰め込んで あなたの好きなこと、仕草

ラムネサワーにガリガリ君をぶっ刺して笑い合えちゃう君だから好き

今世では救っておくれと金魚なる我はお前に尾びれを揺らす

いくつものわたしモドキをかき分けて見つけてくれたらパフェ食べいこう

体重は林檎3つぶんの肉 それと50キロ分の涙です

明日雨は上がるのでしょう後朝に君は彼女の待つ家に帰る

いつかまた必ず会えるは甘い嘘 海沿いの街から届いた絵葉書

本好きの彼と棲みだし二年目の床に積みしはふたりのバベル

青空にぽっかり浮かんだ白い月場違いだったあの日のわたし

お布団は布団に太陽たっぷり浴びさせて「お」をふんわりと…むにゃ…

もういっそ話題のホラー映画見るかピザとコーラとねむれない夜

電車には転職のチラシばっかりで勇者になれるエージェントはどれ

駅までの信号5つぜんぶ青 このまま海へ行くのもいいね

駅までの信号5つぜんぶ赤 今日はハーゲンダッツを許可する

都会では花火をやれる庭もなくコンビニで静かに秋を迎える

駅前のロータリーで釣り糸を垂れて釣れたカンダタくんかな

釣り上げたカンダタくんを吉野家に誘って牛丼特盛食べた

つまりあたし、釈迦ってこと?振り向けば高円寺駅は広がる蓮池

この夏はあなたが見ている白昼夢わたしが見守る平穏な夏

きっとまた間違うだろう人生をその時はまたこの店で会おう



面白い本の購入費用になります。