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【読書記録】八本脚の蝶 二階堂奥歯

二階堂奥歯さんの「八本脚の蝶」を読みました。

今は消してしまっている某Twitterアカウントで薦めていただいた作品。多分好きだと思うと言われて、書店で1ページめを開いてそのまま何も考えずに購入。恐ろしいくらい私の趣味の「まんま」の作品でした。

2003年4月に自ら命を絶った女性編集者である筆者、二階堂奥歯さんが綴っていたWEB日記の記録と、巻末に彼女と関わりがあった人たちからのコメントが掲載された文庫です。日記では、読んだ本の話、欲しいコスメの話、見に行った展示の話、考えたことなどがあまりにたくさんの書籍の引用と一緒に綴られています。「1年で365冊の本を読む」彼女の独特だけど思慮深く、燃えるようにアツいのに不思議な諦念に満ちた言葉は、急いで読み終えるべき本ではなく、たまに少し読んで行く本――だと思ったのに、彼女が死を決意してからは、そんなこと言ってられずただひたすらページを捲ってしまう、そんな一冊でした。

私は、この人に会ってみたかった。

東京で青春(中高大学)を過ごさなかった私がどう過ごしていたかと言うと、京都のアスタルテ書房に行き古本を眺め、昔人形青山で人形を見てコーヒーを飲み猫のクッキーを眺め、大阪松屋橋筋の今はなきギャラリーサブタレニアンズでトレヴァー・ブラウンの絵画とや三浦悦子の人形と出会い、心斎橋で服を見て試着しては買わず、梅田に戻りかっぱ横丁で古本を眺める、そんな日々が青春でした。

いつかの日記でアスタルテ書房に言及されていて、「そうだよなあ」とぼんやり思いながらページを進めました。

似た趣味で、私の何倍も頭がいい、少し年上のお姉さんの、昔の日記。

奥歯さんが飛んでしまった年齢より、私のほうがいくつも年が上になってしまったというのに、彼女が読んでいて私が読んでいない本がこんなにもある。彼女が読んでいて私が読んでいる本がある。今も生きていらしたらきっと読んでいただろう本がたくさんある。

文壇というカルチャーが苦手なのは、自分の知識や教養が足りないからなのですが、その苦手意識を超えても再び飛び込む勇気が欲しくなるだろうなあ。

でも、きっと今生きていらしてTwitterとかをやっていたら、賛否両論で敵も味方もいっぱいできたんだろうなあ。

それでもフォローして、読んだ本をフォロワーのようについて読んでいったんだろうなあ。

とりあえず、私は彼女が批評を残した本や、「八本脚の蝶」で言及されていた本を読んで回ろうかなあと思うのでした。

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