見出し画像

ロリコン、ショタコンを考える小説まとめ

私の本棚のなかから、ロリコンやショタコンというか、小児性愛について考える作品を簡単に紹介するnoteです。

全然ジャンルが違いますが、浅原ナオトさんの「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」のなかに、ゲイである主人公によるこんな言葉があります。

ただちんぽこが、ちんぽこがどうしても勃ってくれない。本当にただそれだけの、単純な話なのに。

同性愛と小児性愛を同列に語るつもりは全くないのですが、大変印象的な一文だったのでここに引用しておきます。

■流浪の月/凪良 ゆう

2020年本屋大賞受賞の作品なので、書店などで見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

大好きな両親が消え、叔母の家に引き取られた主人公。そこで馴染むことも出来ず、その上従兄弟に性的いたずらをされた彼女は、公園でよく女の子たちをじっと見つめている「ロリコン」の男の家に、自分から家出していった。ロリコンの男はとてもキチンとしていて、主人公に手を出すことなんてなかったのだが、2人の暮らしはやがて発覚し引き離される。ロリコンの男は世間から非難され、インターネットに氏名も顔写真も残り続ける。そして主人公は「幼女誘拐事件の被害者」として扱われ続ける。「可哀想な被害者」の主人公が、また「誘拐犯」である男と再会する――

愛でも恋でもない、もちろん性でもない2人の関係性がなんとも言えない物語。恋愛至上主義が蔓延る現代日本では、もしかすると理解が出来ない人もいるのかもしれないなあ、なんてことを思っています。
さすが本屋大賞受賞。納得の夢中で読んでしまうくらいには面白い作品でした。現代日本では「普通じゃない人」が生きづらいね。

■ラブセメタリー/木原音瀬

BL作家である作者による作品。そのものズバリの小児性愛の問題をど真ん中から取り組んだ一作。

この欲望は、罪か倒錯か──。
誰にも言えない秘密を背負った男たち。彼らを待ち受けるものとは……。
BL界の鬼才が放つ、衝撃の問題作
「……僕は大人の女性を愛せません。僕の好きな人は、大人でも女性でもないんです」子供への密かな欲望に苦しむエリート外商・久瀬。犯罪者にはなりたくないと、治療を求めて精神科を訪れるが──。幼い少女に繰り返し恋をする、小学校教師の森下。そんな自分の嗜好を知りながらも、ある一線を越えてしまい……。欲望に弄ばれる二人の男と、その周囲の人々の葛藤をリアルに描いた衝撃の問題作。

ちょっと期待しすぎた感があるので、正直肩透かし。本当に真正面から全うに小児性愛の問題を書いている、けど、まあそうだなあという感じ。エリート外商・久瀬が小児性愛者と知りつつも彼に惹かれ、ひょんなきっかけから彼との中を深めていくゲイの看護師の話が冒頭なのですが、そのあたりはみんな拗れていて面白いんですけどね……。

■プラスチックの恋人/山本弘

仮想現実“Virtual Reality”と人工意識“Artificial Consciousness”が実現したセックス用アンドロイド―オルタマシン。その中でも少年や少女の姿形をした未成年型オルタマシンの使用は、日本国内で賛否を問う激論を巻き起した。フリーライターの長谷部美里は、社会問題となりつつあるマイナー・オルタ利用の実態を取材するため、美しい12歳の少年の姿形をしたオルタマシン、ミーフと出逢う…。ヒトは、ヒトならざるものと愛し合うことができるのか。SF最大の禁忌を描く著者渾身の問題作。

ロリコン向けラブドール(という言い方をあえてするけれど)が時々問題視されて騒がれる昨今。ついでに言えばこのあいだ、完全VRの風俗がオープンするなんてリリースも流れていましたね。どんどん身近に「疑似ロリータ」「疑似正太郎(ショタコンは正太郎コンプレックスが語源なのでこういうのが正しいのかな?」が現れてきます。人のものではない体に、脳ではなくAIで動くオルタマシンは、はたして何なのか?もうすぐ私達はフィクションではなく現実世界でこの問題を考えることになるんだろうなあ。

そういえば、オルタマシンという名称はオルガスマシンを読んだあとに見るとファ~と思いますね。

■おまけ

アリスは絶対新潮文庫版!金子國義の想定がいいんだ!と主張をしつつここでアリスをあげておきます。
みなさん御存知の通り、ルイス・キャロルことドジスン先生は美しい少女が大好き。

取り上げた「ラブセメタリー」のなかで、小児性愛者たちがアリスを好んでいたのが印象的です。

文学の中では「魔性の少年、少女」がたくさん登場します。文学どころか、歴史や神話のなかでもそうですね。

美しく艶めかしい少年少女に惹かれるのは、古今東西みんなそうなのです。本を読むことの面白さは、いろんな問題を考える切っ掛けになることでもあるのだなあ。

この記事が参加している募集

読書感想文

面白い本の購入費用になります。