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【外出自粛で本を読もう】アンダーグラウンド、変態性癖を垣間見られる小説紹介

映画編に引き続き、今回はアングラ、変態、フェチ要素満載の小説をご紹介させていただきます。映画編はこちら。

日本のセックス/樋口毅宏

寝取られ趣味・スワッピング趣味を持つ旦那に促され、旦那以外の男と300人以上と関係を持った主人公。物語は、彼女たち夫婦が「マニア向け」の雑誌の撮影現場に出向き、旦那の前で編集者兼男優と編集部内で、スタジオでみだらに交じらうところから始まります。
旦那の語る「妻を愛しているからこそ、他の男に抱かれているところが見たい」という、一般的には許容されない性癖がこれでもかという熱力で語られまる。いわゆる「マニア」の思考そして嗜好がリアリティを持って描かれているのと同時に、ジェットコースターのように進行するエログロ・エンターテインメントなストーリー。
ここは地獄のジェットコースターか何かなにかなのだろうか?と思わされる中盤、後半。そして性描写がふんだんにまぶされているその芯にあるのは、これこそが愛なのかもしれない、と思わされてしまいます。

性と愛って一致するわけないけれど、それでも密接に関係するから性愛なんだと思います。

O嬢の物語/ポーリーヌ・レアージュ

名作中の名作。全世界のM女と、M女を理解したいSはこれを読んでくれ!と叫びたい一作です(上記「日本のセックス」の序文にも使われています)。

タイトルにもある主人公「O」は、恋人のルネの手によってロワッシーというある種の牢獄に送り込まれます。そこで彼女は、首輪を始めとした枷をつけられ、男たちに傅くことを許容されます。そこでは彼女は、男たちが望めばいつでも見を開かなければなりません。
女性らしい情景描写の中で淡々と繰り広げられる拷問は、恐ろしいはずなのに美しく、そしてどこまでも当たり前に描かれます。

まさにザ・古典SMというべき世界観のすばらしさ。女性らしい感性。澁澤龍彥訳の独特の奥ゆかしいのに生々しい表現も素晴らしく、訳文も大好きです。フランス語読めませんが。

ロワッシーから出たOは、ルネの手から離れ彼の義理の兄のステファン卿の手に引き渡されます。そして、彼女の身(まさに肉体としての身)に起きていくことは――

ああ、そうなんですよね。奴隷であることって、普通の人に対し優越感を感じてしまいますね。あまりにも気付かされない「M女」の心が随所にあふれていて、読み返す度に発見がある作品です。

シシリエンヌ/嶽本野ばら

未だに「下妻物語」の嶽本野ばらと言ってしまう、嶽本野ばら(野ばらちゃん)の中でもとくにエロティックで直接的に生々しい性描写が強い作品です。何なら冒頭からです。

「嗚呼、そんなことをしたら、逝きそうになります……」「駄目よ、まだ気を遣らないで」――“気を遣る”つまりはエクスタシーに達するという、殆ど死語である表現を貴方は好みましたね。僕は時に貴方の身体を乱暴に貪り、時にマスターベーションをするよう強要し……でも結局、主導権を握っていたのは貴方――。そう、僕の官能は貴方の虜でした。そしてはじまった「館」でのインモラルな×××。密室で繰り広げられた貴方の仕打ちに僕は……。性と純愛、官能の極みを描く、かなりやばい長篇小説。

なんて「野ばら節」の聞いたあらすじですが(十分エロい気もするけど)、中身はもっともっと繊細で、エロチックで、まるで壊れ物のように美しい官能の物語です。

ヒロインである主人公の従姉が、病気で失明をしてしまいます。それをきっかけに、彼女は館に移り住み、ブルーフィルム女優として活躍を始めます。主人公である「僕」も館で働きだし……。ハンディキャップを持つヒロインの気高さ、古き良きエロスの世界、それでも物語が現代であること。どこまでも純愛なのが、どうしても美しく苦しい作品です。

谷崎潤一郎フェティシズム小説集

有名な作家だからといって肩肘をはらずに、変態の先輩だと思って読みましょう。国語の教科書に載っている? ノーベル文学賞候補? いやいや、とりあえずこれを読みましょう。ね?

フェティシズム小説と冠されたとおりの納得のチョイスの短編集です。「刺青」「悪魔」「富美子の足」。今読んでも褪せない名作です。

表紙もめちゃくちゃお気に入り。10冊くらい買いたい。同じシリーズの「谷崎潤一郎マゾヒズム小説集」も合わせて購入しましょう。

名作って怖くないんだ!と思って、このまま「春琴抄」や「痴人の愛」へと読書の羽を羽ばたかせていきましょう。

その他

せっかくお家で過ごす時間が多いこのタイミング。今となっては当たり前に聞く性癖の語源を探るのもいいと思っています。しかし、ちょっと話がずれてしまう(と、私が自信がない)ので欄外で軽く触れるだけにします。

SMのS、サディズムの語源となった言わずとしれたマルキ・ド・サドの作品なら「ソドム百二十日」とかはどうでしょう。

サドについては、著作もいいですが彼の後年をモデルに作られた映画「クイルズ」もおすすめです。あまり映画配信系のサービスで流れていないのが残念。

ここからはかなり昔に1度読んだきりなので、私もいい加減再読しないといけないと思っているものです。

マゾヒズムの語源となった、L・ザッケル=マゾッホの「毛皮を着たヴィーナス」。

ロリコン――ロリータ・コンプレックスの語源となったウラジミール・ナボコフの「ロリータ」。

語源の作品を読んでみると、現在の私達がイメージするものとは違ったり、それでもなんだか分かる部分もあったりして、なかなか面白いと思います。


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