見出し画像

【2023年初泣き】鈴波アミを待っています

ま~~~じ泣いた。立ち飲み屋でホッピー飲みながら読んでたんだけど鼻べちょべちょなった。

「鈴波アミを待っています」は、Vtuber(とVRC)のはなしです。正直、Vtuberカルチャーが好きじゃないし、VRは人並み程度にしか興味がない、ので、あんまりこの本を買う選択肢がなかったのです。
そんな私がこの本を購入したきっかけは、2022年久々に開催された神保町ブックフェスティバルにありました。

久々の神保町ブックフェスティバル!盛況でしたね。

ブックフェスティバルで、早川書房さんはサイン本をめためたたくさん販売されていました。早川文庫の国内SFばっかり買い求めていた時期がある私は、嬉々として早川書房列に並び、自分の番が来た時に好きな作家の好きな作品をホイホイ手に取っていったのです。そんなことをしていたときに、スタッフをされていた早川書房さんの方が、

スタッフさん「好きな傾向わかりました!お手に持ってる本、全部同じ編集者です!」
わたし「!?」
スタッフさん「ということは、たぶんこれも好きだと思います!」
わたし「となると、いつか買う本だと思うので今買っておきます!」

とお声をかけていただきました。そんな流れで購入した思い出深い本が「鈴波アミを待っています」でした。

Vtuber「鈴波アミ」がデビュー1周年を迎えた夜。しかし、待望の配信は始まらなかった。彼女は突如失踪してしまったのだ。視聴者たちは〝推し〟の復帰を信じて、1年分の配信アーカイブを同時視聴して待ち続ける。新型コロナによって社会も混乱していくなか、鈴波アミと視聴者の未来は……? メタバース時代のネット文化が生んだ感動のストーリー!

https://www.amazon.co.jp/dp/4152100966

Youtube、Twitter、現代社会を「普通に」生きる20代30代の「インターネット大好き」人間が、当たり前に家でやっていることが当たり前に物語に描かれる、最近はまあ増えてきました。
それが特別だともてはやされる界隈もあるけれど、それだけでは特別ではない。でもなんとなくグッとくる。自分の身近なところで物語が起きる、やっぱりそれは身近なのです。

推し。
いまとなっては、推しがいる人も多いでしょう。
でも私の推しは完全二次元で双方向コミュニケーションが取れるタイプではないので、Vやアイドルを推している気持ちはわかりません。
わからないな~と思っていたから読まなかったこの本なのですが、ページを捲りながら、ふと思ってしまいました。

もしも、TwitterやLINEでしか繋がっていないだいすきな人たち(友達や尊敬する人)が消えたとき、どうなるんだろう。

だいすきな推しが消えたとき、鈴波アミのオタクたちは、配信予定だった一周年記念配信の配信待ちのチャット欄で彼女の帰りを待ち、配信アーカイブの同時視聴をはじめます。
いろんなインターネットあるあるが起きて、少しずつ同時視聴をするオタクが減り、推しが消えて何日、何週間、何か月と過ぎると自身の環境も変わってきてしまいます。

ああ、なんてリアルなんだろう。

インターネットをはじめて、20年以上。
匿名掲示板もSNSも動画配信サイトも経てきた身ですが、むかしは「ネット上の出来事はあまり記憶に残らないなあ」とおもっていました。
2ちゃんねるで見た超オモシロスレッドとか、大学に行くと忘れちゃったりしました。一部忘れられないものもありましたが、それは現実と地続きにあるスレッドばかりでした。
それが、いつの間にかインターネットの中の出来事は、それはそれだけで「リアル」に感じるようになっていました。

「鈴波アミを待っています」は、インターネットのなか(と、ごくまれに主人公の住む六畳一間の自室)だけで物語が進みます。
でも、インターネットの世界で主人公は様々なサイトをめぐり、ブクマを漁り、そしてVRC(VRチャット)で様々なワールドで多くの人と出会います。
私が、「特にいいなあ」と思ったのは、無理くりに「現実世界で自己表現しよう」という流れにしなかったことです。本当に、インターネットの世界で、Vのなかで、たのしいも感動も、夢も未来も完結する。そこが好きです。

あんまり他作品を下げるのは本意ではないのですが、VR世界を題材にしながら、結局は「現実世界で自己表現する勇気を持とう!」とかいう作品の、多いこと多いこと。
知るか。俺の現実はインターネットだ。

物語は、もちろんご都合主義で、そんなに色んなことがうまくいかないよって思うストーリーラインです。
でも、だからこそ、気持ち悪いオタク・インターネット人間である我々のなかの、無数の名無しのオタクのなかのどこかでは、こんなことが起きていたらいいなあと願います。

でも、出来れば私の大好きな人たちは失踪しないでください。
おねがいします。

この記事が参加している募集

読書感想文

面白い本の購入費用になります。