お話:僕とおじいちゃんとサイドストーリー的なおはなし
"僕とおじいちゃんと"のまた別のお話になります
どうぞどうぞ↓
きょう真っ白なわんちゃんが夢に出てきたんだ
なんでかな…
なぜか、僕を呼んでいる気がするんだ
ここから窓の外を眺めていると、中庭で歩いていたり、座っている人たちがいる。
僕は昨日の夜、夢で出てきた犬をなんとなく探してみた。
どこかで見たことがある子なのかな。
おじいちゃんがお見舞いに来た。
「今日はどうだい?」
ぼくは返事をせずに窓の外を眺めていた。
ただなんとなく、
「今日の夢に白い犬が出てきたんだ」と呟いた。
そうかい、とおじいちゃんは呟いて
しばらく椅子に座って静かに本を読んでから、
「明日も来るからねぇ」と言って帰って行った。
その日の夜、また白いわんちゃんが夢に出てきた。
僕は勝手に"シロ"と呼ぶことにした。
我ながら単純だけど、こだわりはないからね。
今日はシロが枕になってくれて、中庭で空を見ながら寝っ転がってる夢だった。
僕はただ空を見てるだけで、幸せだなと感じた。
夢でもなんとなくシロの毛が気持ちいいのは感じることができる。不思議だ。
おじいちゃんがお見舞い来た。
「今日はどうだい?」
ぼくはおじいちゃんの方を見て
「変わらないよ。」と返事をした。
おじいちゃんは少し驚いたような表情をしてからすぐに微笑んで、「そうかい」と言って椅子に座り本を読み始めた。
ぼくはまた窓の外を見て、昨日の夢を思い出していた。シロの夢はまた見られるだろうか。
少しだけ寝るのが楽しみになっている自分がいるみたいだ。
あんなに毎日怖かったのに。
今日の夢はシロとキャッチボールをした。
夢では不思議と体が軽く、ずーっと笑ってシロと遊んでいた。
こんなに楽しいのは久々だった。
夢から醒めると、少し悲しい気持ちもあったけどまた夜になればシロに会えるかな、と嬉しい気持ちになった。
この前、久々におじいちゃんの顔をみて話をしたら驚いた。おじいちゃんってこんなに優しい顔をしていたっけ?
ずっと顔を見ていないことに気づいて、今までどんな気持ちでお見舞いに来ていたんだろう、と申し訳ない気持ちになった。
だから、もっと話をしようと思ってシロの話をするようになった。
それから夢を見るときは毎回シロが出てきた。
シロといる時の自分は自由でとても楽しかった。
シロも僕に懐いてくれて、ずーっと一緒にいた。
僕は眠ることが怖くなくなっていた。
でもある時、
シロがわんわん僕に向かって鳴いているんだ。
何を訴えてるのかわからなくて、僕はただ撫でることしかできなかった。
どうしてあんなに鳴いていたんだろう。
次、夢を見るときはまた遊べるといいなぁ。
そんなことを思いながら僕は眠りについた。
その日の夢は本当に楽しかった。
シロといっぱいキャッチボールをして、走り回って寝っ転がって、本当に夢なのかなと思うほどだった。
ぼくは寝っ転がってるシロを撫でながら、おじいちゃんとのこの前の会話を思い出していた。
「おじいちゃん今日もシロが夢に出てきたんだ。今日はシロと、追いかけっこをしたんだよ。」
とぼくはいった。
「そうかいそうかい、わしも2人が楽しそうで嬉しいよ。」とおじいちゃんが優しく微笑んだ。
「ねぇおじいちゃん、いつもお見舞いに来てくれてありがとう。何も返事をしなくてごめんね。」
「そんなこと気にしなくていいんだよ、
顔を見れるだけで嬉しいんだから。」
おじいちゃんはなんだか泣きそうな顔でぼくを見ながら言った。
ぼくはそんな顔を見て釣られて泣きそうになったけど、僕が泣いちゃダメな気がして涙を堪えたんだ。
でも、もしかして、おじいちゃんはシロのことを知っていたのかな。そんなことをふと思った。
シロが横で寝ている。
ぼくはこの夢がシロとの最後の夢なんだなと知っていた。
僕も、
そろそろ"ぼく"も最後なのかなって思ってたんだ。
おじいちゃんがぼくの話を楽しそうにきいてくれるけど、最近は泣きそうな顔をして帰ってくんだ。
ぼくは気づかないフリをしていたけど、さすがに分かっちゃうよ。
でも、寝たらシロが待ってるって思ったら眠るのも怖くなくなって、「明日」が来るのも楽しみになってたんだ。
だから、大丈夫、
ぼくが終わっても大丈夫なんだって思える。
シロを撫でながら、
「そろそろ行こうか」と声をかけた。
シロはただ尻尾を振って、ぼくの隣を歩き出した。
シロと一緒なら何も怖くない。
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ぼくは次の日の朝そのまま目を覚ますことはなかった。
……病室にあるぼくのベッドの横には、
おじいちゃんとシロが一緒に写っている写真と、
ぼくの写真が並べておいてあった。
こういうのもいいかなと。
読んでいただきありがとうございました
またお願いします🤲
失礼致しますー
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