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東京(ワンサイド)ラブストーリー① 〜プロローグ〜

東京から福岡へ戻ってきて1週間。
新卒で入った会社を1年と少しで辞めて帰ってきた、いわゆる「都落ち」な僕に対して、故郷・福岡はこれでもかと言うほどに優しい。
人はあったかく、食べ物も美味い。道も歩き慣れたもんだ。

そして人々は口々に言う。
「ほら、やっぱり福岡の方がいいだろう?」
「東京なんて住むところじゃないよ」

そうだよな、と思う。
むしろ「福岡って超良いじゃん」と思うことはグッと増えた。
噂によると、僕の住む福岡市は全国の住みたい都市ランキングで堂々一位に輝いたそうな。
一方、今の東京はどうだろう。流行り病の感染者数は日に日に増え、都政も機能しているとは言い難い。満員電車でストレスフルな移動をこなし、物価も高い。
傍目で見れば、いや自分の目から見ても、福岡に帰ってきたことでプラスなことはあっても、マイナスなことはあまり見当たらない。

何より「東京」で気持ちを擦り減らす時間を過ごした僕が、福岡の風に癒されておいて、今更「やっぱり東京の方が素晴らしい」なんて言うのは虫が良すぎる。

けれど、僕は「東京」と言う街に何度フラれても、嫌いになることはできないと思う。

未練がましい、粘着質だというのは重々わかっている。
だが本当に「好き」って気持ちは厄介なもんで、フラれて遠のけば遠のくほど、あの街は「憧れ」としてキラキラと、蜃気楼みたいな存在で僕の心に棲み続けている。
初恋の女の子みたいなものかもしれない。

僕はなんでこんなに「東京」が好きなんだろう。
思い返すと本当に幼い頃の記憶から掘り起こしていく必要が出てきた。

せっかくの機会なので、僕自身も振り返る意味で、東京に対する「偏愛」の歴史を書いていこうと思う。

引っ越しやら就職活動やらで、バタバタしていたものがやっと落ち着いて、久しぶりに文章を書こうと思って最初は別のトピックで書いていたのだが、フッとこのテーマを思いつき、こちらの方がなんとなく面白いだろうと思ったので、つらつらと書いていく。
一度に書くととんでもなく長くなるので、小分けにしながら書いていこう。タイトルは「東京」と「片想い」に絡めて、
「東京(ワンサイド)ラブストーリー」ということにしておく。

この話に女性は出てこない。トレンディでもない。
登場人物(?)は僕と東京の二人だけ。
結論から言うと現時点ではこの二人は結ばれていない。(結ばれるってなんだ。)

それでは以下より、「東京(ワンサイド)ラブストーリー ①」始めていきます。

初めて東京に行ったのは、4歳…の思い出はほぼ無いので割愛する。
(ディズニーランドに行ったらしい。)
その次の上京は小学校4年生、5年生の頃。
記憶にある限りは初めての上京だ。

僕の親父は長らく単身赴任をしており、僕が小学校3年生の時から、去年の6月まで、約13,4年間ほど東京に住んでいた。そのため東京への転校を視野に入れた上京がこの頃増えていたのだ。
東京の私立中学校を受験して、中学校から引っ越しをする可能性もあった。(結果的には大学卒業まで、どっぷりと福岡に浸かることになるのだが。)
今思えば、この「転校スレスレ」期こそ、僕が「東京」を意識するきっかけだったのかもしれない。

当時を思い出すと、その頃から東京が好きだったかと言われると、そうでは無かったと思う。
小学生の頃、大の「ジャンプっ子」だった僕は、東京に行くことよりもむしろ、飛行機の時に暇になるから、と母親が福岡空港の本屋で漫画を1冊買ってくれるから、「旅行行くと漫画買ってもらえるから良いな」と思っていたぐらいのものだった。ゲンキンなガキである。

というようにこの頃の僕は10数年たった頃に、福岡でコーヒーを飲みながら東京への憧れを綴っているなんて予想もしていない。

次東京を訪れるのは、高校1年生の夏休みになる。
今回は前置きが長くなったので、次回上京編は②へとつなげる事にする。

【東京(ワンサイド)ラブストーリー② に続く】

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