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何故か学習できない

 修羅場だった。仕事の。
 去年の夏の終わりに書きもので切羽詰まっていたけれど、最終日に24時間で4万7千字書くことで乗り切った。結果はまっっっっったく出なかったけど、自分なりに納得の一本がつくれたと思う。
 それは仕事ではなかったのでまだ余裕があった。
 今年はほんとうにアレだったので、自戒のために詳細を書いておく。

痛恨のミスによる自業自得

 プロットを出したら受領メールが届いた。担当さんは「なるはやでお返事しますね」と書いていたので、リターンは3日後くらいかな~と予想した。7月末に送ったので、お盆休みの前に届くかなあと思っていた。
 言いわけになってしまうけれど、そちらとは違う他社では、プロットを出すと通すのにだいぶんかかることがあった。早くて2週間だしリテイクもあった。今回は、事前に大雑把な枠組を決めていたので、そんなに長くならないし、リテイクもないだろうと考えていた。

 お盆の前になって、さすがに時間がかかりすぎの予感……!と、メールチェックをした。

 驚いたことに、担当さんは「なるはや」のメールと同じ日に、執筆OKの返信をくれていたのだ。いやいや「驚いたことに」じゃねえって。なんで気づかないのか。

 Gmailを使っている。スマホにメール通知が来ると、ヘッダが見えて内容がわかる。そのときに中身まで読んでいた、と思う。そうするとメールは既読になる。
 その後、パソコンでメールを見るときに未読があると、本文を読んだにも関わらず「ヘッダで内容を確認した」と思い込んで、「すべて既読」を選んで既読にしがちなのだ。
 アホである。
 私用メールに通販サイトの広告メールが届く。だいたい「プロモーション」タブに入ってくれるのに、なぜか「メイン」タブに入るものもあるので、そういうのをまとめて既読にする癖がついていたのだ。
 仕事用メールは仕事先しか知らないので、通販サイトの広告など届かない。基本的に仕事のメールしか届かない。なのに、深く考えずに未読メールを既読にしていたので、十日ほど時間を無駄にしたのである!!!!!
 無駄に!!!! したのである!!!!

不可欠、日頃からの体力づくり

 しかもそこからすぐに執筆に取りかかれるわけでもなかった。ぶっちゃけ体調不良だった。
 それまで、家事をしたり、体力作りのためにウォーキングをしたり、していた。やばいと思いつつ、もたついていた。
 以前は喫煙をするので外出して店先で執筆していたが、今はそれができない。なので、家の中で執筆する体勢を整えようとはしていたのだが、なかなかうまくいかなかった。
 何日からまともに書き始めたかは伏せておく。別名義の担当さんに万が一ここを読まれたら「こいつにはもう頼まない」とか思われそうだから……
 とにかく、しばらくはちまちま書いていた。外に出て買いものをする余裕はあった。ステッパーも寝る前に一時間くらい踏んでいた。

 寄る年波で体力が激減している。更年期障害というやつだ(お察しください)。
 ステッパーを踏むと体重は維持されるが、踏まないと増える。一時間踏むとそれなりに体力がつく気がした。これはいい。
 途中で、とても著名な作家さんの一日の執筆スケジュールが流れてきたので、それも採り入れようとした。朝に起きて散歩したり、執筆後に寝てから食事をしたりだ。
 このスケジュールはとてもいい気がしたが、最終的に「執筆後に仮眠をとる」というスタイルが、寝られる……?! ってなった。
 自分は、書くと脳がものすごいいきおいで動くタイプらしいという自覚がある(ほんとにぐにぐに動いてるかどうかなんてわからないので、らしい、としか言いようがない……)。
 執筆をしたあと、自分自身はぼーっとしているのだが、頭がほかほかしている気がする。そこからすぐに眠れるかといったら、無理だ。出先で執筆していたときも、1万字以上書いた夜は、時間を置いてもなかなか寝つけなかった。
 執筆直後にきちんと眠れるひともいるんだろう。自分は、2時間、横になることしかできなった。目を閉じても就眠できない。2時間執筆して2時間仮眠するのをもう少しなんとかためしてみたいが、すぐに寝つく方法を体得しなければむつかしいだろう。

 体力を維持しつつ進めようとしたが、そのうち、それどころではなくなってくる。
 7月の打ち合わせの時点で、早ければ○○日に出せますよ~ なんて言っていたのに、勘違いをしたので、担当さんは二週間ほど余裕をとってくれた。「しかし、そこを過ぎると……」みたいな、まじのやばいやつである。
 それでも執筆がなかなか進まなかった。

プロット……

 進まなかったのは、出したプロットがひどかったからである。よくもまあ受け付けてくれたものである。(つまり自分が悪い)
 短編連作で、だいたいの大筋は決まっていた。前回もそんな感じだったが、最後に頁が足りないとわかって、急遽、話を一本増やした。
 そういう自由がきく版元さんとわかっていたので、提出したプロットは前回よりゆるゆるだった。しかも3巻めのプロットなのでキャラクター設定などはなく、あらすじしか書かない。テーマは決めていたが、とても、とてもゆるゆるだった。
「AとBが暮らしているところにいろいろなひとが来る。愚痴や悩みを聞く。以前のお礼をされる」
 こんな感じの大雑把な内容を3千字くらいにまとめただけだ。

 打ち合わせの時点で少し悩ましいことがあった。
 担当さんが「キャラクターの成長」を求めたのだ。
 これはとてもとてもとてもとてもとても! よく求められる。一冊の中の、最初と最後で変化がほしい、とよく言われる。ほぼすべての版元で言われてきた気がする。
 あまりにもピンとこないご要望だった。変わる必要なんてあるかな?とわりと長いこと思っている。だけど、自分が読むときは、たいてい、作中で登場人物は変化している。
 おそらく、自著でも、作中で登場人物は変化しているのだろう。だが、改めて「成長」を求められると、なんだかミョ~な気がするのだ。
 世間のみなさまもそんな意図的に「成長」しているのだろうか、と思ってしまうのかもしれない。「成長」とは、自然と起きる現象なのでは、などとも考える。
 また、自分にとって「成長」が「変化」なら、裏切られた気がするのも事実だ。これはたぶん、自分のネガティブな性質による思い込みなのだと、わかることはわかるが……「変節」に思えてしまうのである。

 たまに、レビューなどで、「前はこう言っていたのに」みたいなものを見かける。文章だけだと、受け取り手によってはそれが非難しているように感じられるのだ。たまにほんとに意地悪でそう言う(書く)読み手もいる(と思う)(被害妄想ではない……)。
 また、現実で、たまに「前に言っていたことと違う!」と、激しく詰ってくるひともいる。いた。
 これが、だいじな約束とかだったら、そら非難もされるわ、と思うが、あれが好き、これが好き、みたいな、取るに足らない世間話で「こないだ言ってたこととちがうじゃないですかー!」とけっこう強めないきおいで言うひとがいる。
 相手とはそういうのが冗談で済む関係性だとこちらは思っていない場合、相手がどういう意図で発言していても、非難にしか聞こえない。
 というか、たとえ「以前と言ってることが違う」としても、特に自分が不利益を被らないことをよくもその調子で突っ込んでくるなあ、と思い出してしまった。もしかしたら本人は円滑なコミュニケーションの一端のつもりだったのかもしれない。だとしたら感性が合わないとしか言いようがない。私的な友人にもいたが、こういう編集さんもいたのである。(愚痴

 まあでも、書き上がった内容に、なんとかそのご要望を入れることはできたと思う……

 とにかく、プロットがゆるゆるだと、書くのがかなり手探りになる。
 イメージさえきちんと掴めていれば執筆に苦労しない場合も多い。今回は、イメージもゆるゆるだった。部品はたくさんあるのに、組み上げたあとのイメージが漠然としか浮かんでいなかったのだ。アカン。

余裕を持ちたい、どこまでも

 とはいえ書き出してヒイヒイ言いながら最初の1話を書き上げると、1冊の全体像がだいたい掴めてくる。
 今回の難航は、1話の内容がなかなかめんどくさかったせいもあったのだな~と気づいた。2話に取りかかるとするする書けた。3話もヌルッといけた。
 このあたりにくると、1話ごとの分量が見えてくる。短編連作は、意図しなくても、1話分の字数(つまり頁数)が同じくらいになりやすい(絶対に、ではないが)。
 だいたい50~60頁になっていた。最初に提出したプロットは5話構成だけど、こりゃ4話だな~と思った。大筋は変わらないので話数を減らしても問題ない。ゆるゆる。
 執筆する場合は一太郎で……はともかく、書き出しの頁を「本になったときと同じ頁数」にするようにしている。そうすると、ゲラなどの修正を電話でやりとりするとき、頁数が一致してすぐ探せるからだ。地味な小技である。
 だから自分の一太郎のデータは、冒頭が以下のようになっている。

実質1頁 「タイトル」トビラ(改頁)
実質2頁 トビラ裏(改頁)
実質3頁 目次(改頁)
実質4頁 目次ウラ(改頁)
実質5頁 本文書き出し・本文1頁め

 ※(改頁)は、CTRL+Yで強制改頁を入れている。
 本文開始は5頁で、最後の頁数は版元での規定頁数から事務頁をひいた数になればいい! と計算している。ちなみに巻末の事務頁は版元によって違う。だいたいどこも奥付は奇数に置く傾向はあるが。
 5話でなく4話と判断したのは、頁数が最大で事務頁込みで288頁とわかっていたのと、残り日数で埋められる頁数との兼ね合いを考えてのことだった。
 文庫本は16頁あるいは32頁で1丁っぽく、その単位で依頼されることが多い。以前、できあがりの頁数を言われて、何も考えずその頁数ぶん書いて、削れずえらいことになった記憶があるのでそのへんは慎重になった。(だから黒猫茶房の2巻は1頁の行数が1巻より多い)
 288頁より下は、272頁、256頁、240頁だった。たぶん256頁になるな、と見当がついた。

 最終話、4話は、自分にとってボーナストラックだな~と思いながら書き出した。テーマをきちんと拾ってまとめないといけないのでたいへんはたいへんだが、楽しく書いた。
 書いているうちに体にガタが来た。肩や手が痛い。けっこうな打鍵のいきおいがあるうえに、成果の字数より多く打つからどうしてもそうなる。
 仮眠でも夜の就寝でも、寝て起きたあと、きちんと眠れていないらしく、頭が微妙に痛い。めまいも頻繁にある。
 それだけならまだよくて、運動をまったくできなくなっていたので、腰痛がすごいことになっていた。さらに何かの拍子に股関節がパキパキいう。脚にも恒例の腰痛の余波が来ている。
 しかも、このころ台風が来ていた。台風の影響がまったくない地域のはずなのに、毎日、決まった時刻になると雷が鳴っていた。台風後三日は豪雨もきていた。
 そうなると、頭痛は、天候に左右されているのか、睡眠不足なのか、更年期障害なのか、それ以外の理由なのか、わからなかった。
 さらに、あと5千字書けば終わるな!と掴めた時点で、熱が出て、どうしても書けなくて寝込んでしまった。体の節々が熱で痛むということはなく、頭だけが熱かったので、脳に疲労が蓄積されたのではないかと思う。

 提出日の前日である。
 寝込む前にそれまで書いたぶんは一応ぜんぶ目を通せていたので、とにかく最終話の最後の最後だけ書こうとした。
 夜中になんとか起きて、内容をチェックし、入れ忘れていた要素を組み込んで、最後の場面を書き足す。もう見返せないし、このまま寝込んで何かあったら困るのでと、早々に担当さんに送った。
 寝る前に、送ったPDFをスマホで確認したら、ちょっとしたミスがあったので、朝になって修正して送り直した。

 そして、このnoteを書いている。

今回の反省あれこれ

 ↑反省のところ、敗因と書いてしまったけど、負けてねえよ!と思って反省に直した。
 反省する点なら上記に長々書いた通りだが、ほかにもあるよ。要点は以下のとおり。

①自分で余裕をなくした(メールの既読ミス)
②プロットはしっかり書こう(書くときにもたつくから)
③一日の執筆スケジュールを整えること(一日の成果が掴め、モチベーション維持につながる)
④体力!!!!増強!!!
⑤何かの楽しみを途中で挟んだり、仕上げたあとに入れること

 ②と③は毎度のことだが、今回は④と⑤が響いた。体力……執筆は体力だ……毎日ラジオ体操やりたい(希望)。
 長時間座って、立ち上がるとき股関節がパキパキ言うのほんと恐怖。立ち上がるとき腰に手をやってしまうの、おばあさんの姿勢。まあ、年齢も実質おばあさんといえるんですけど。同学年で孫いるひともいるし。しかし体力だけは、なんとか改善する!
 ウォーキングをすると調子がいい感じはあるのでつづけたい。ステッパーだけより外に出るウォーキングのほうがいいのだ。やれやれ。
 それと、ちゃんと寝られるようにしたい。横になると動悸がしてなかなか眠れないのは、ストレスだと思うが……寝落ちでなく入眠できるようになりたい。効率よく脳と体を休めたい……

 ⑤は、このご時世なのもあると思う。意識して引きこもっているのと、あまり外に出ないほうがいいと出かけなくなるのとは、わけが違うんだなって。遊びに行く予定がまったくない。友人も、なかなか誘いにくい。
 自分は家族がいないし仕事を自分で制御できるので気がかりは少ないのだが、友人はだいたい家族持ちだし外仕事だ。ひとりで遊びに行くのもいいが、「ひとりで行きたくて行く」と「誰かと行きたいけどひとりで行くしかない」は何かが違う。しょぼん。

 そんなわけで今回の修羅場は終わった……終わったはずだ……12月刊予定です。これが出たらなんだかんだで今年は5冊だったんだな~えらいな~(誰も褒めないので自分で自分をほめるスタイル)
 そして小説でなくこんなくだらないダラダラとまとまりのない文章なら、90分で5千字くらい書けるんだな~ やっぱりプロットは細部まで煮詰めてイメージ固めて自動書記レベルで執筆したほうがいいな~ などと思うのだった。

 次の仕事はあるのだろうか……あるといいな……その前に短編を書く練習を、しよう……

追記

 今回よかった点もあげておく。
 まずは、口内炎ができなかったこと。顔の肌はボロッとしたけど、口内炎は防ぎきれた! 執筆に入る半月前からチョコラBBプラスを朝夕一粒ずつ飲んでいたおかげとしか思えない。口内炎ができると世をはかなんでしまいそうになるから、これは快挙だった。
 それと、疲労は喉から来る。喉がやばいときは龍角散ダイレクト(トローチ)を導入した。こうかはばつぐんだ!
 液体のチョコラBBハイパーおよびリッチも、助けてくれたと思う(たぶん)。
 そして、腰痛を避けるために、ときおり立って作業した。スタンディングデスクや、食卓に載せられる台があってよかった。ただ、打鍵が激しいため、もう少し頑丈なスタンディングデスクがほしくはある……この世に製品として、なさそう……

 実家で執筆したのもよかったのかもしれない。よくなかったのかもしれないが。
 実家は戸建てで誰もいないので深夜に風呂に入れる。これで生活サイクルがおかしくなったりもするが、いつでも浴槽に浸かれる、追い炊きができるというのは、なかなかよい。自宅はできないんですよ~。まあできなきゃそれはそれで済むけども。
 さらに、冷蔵庫の冷凍室が広いので、冷食を大量に仕入れ、それで空腹をしのいだ。惣菜パンも凍らせた。レンチン1分でいけるとわかり、後半、値下げシールの貼られた惣菜パンを買い込んだ。
 オーバーナイトオーツを知ったのもよかった。牛乳・豆乳・ヨーグルトなどに漬け込んだミューズリーやフルグラなどを寝かせてから食べるのだが、夏なので、冷たいものがとてもありがたかった。
 コーヒーは、最初はつくったりもしたけど、最終的に1リットルの紙パック無糖が最高だな……といつもの結論に行きついた。これをペットボトルに入れてちびちび飲む。カフェイン、きいてるのかなあ……と思いながら。

 それと、一太郎の文字カウントのスクショをとって、壁打ちアカウントに貼っていたのがなかなかモチベーションをたもてた。

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 こういうやつ。
 ぜんぶ見返すと、5千字書いて休んで、5千字書いて1日が終わって寝る、みたいな感じになっていたけど、1日1万字くらいしか書けなくなっているのがつらい……前はこれくらいしんどくなるなら1万8千字から3万字はいっていたのに……という気持ちにもなった。喫煙できないせいかもしれない( ˘ω˘ ) でも前から、ベストは1日8千字(実働4時間)くらいだったので、あまり多く見積もらないよう気をつけていくしかないなあ……と結論づけたのである。

 ほとんどまともに誰とも声を出して会話しなかったので、途中、書いたものを読み上げたりもした。少しだけだけど。これもよかった気がする。ただ、深夜にやるのはなかなかためらうが。二週間くらいまともに誰とも話さないのは、顔や器官が退化するので、避けたい。
 だから、べつの版元の担当さんと電話で話せたのが本当にありがたかった。オタク話ができたから……ありがとう、担当さん……どの担当さんにも、心身ともに健康でいてほしい……くれぐれも気をつけて……またお仕事ください……1冊で1年くえるようなやつ……

 多少なりとも前回から改善してよかったと思える点もあるので、今後もなんとか学習して改善したい。