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走れ!

貯金が底をつきそうだけれど、この間競馬に行ってきた。

ばかかな?ばかだと思う。でも1日遊んで2000円マイナスくらい。いや負けてるやん。はい。私は競馬にいつも負けています。夢見たいは馬券ばかり買ってるから。

私がずっと好きだった馬、マカヒキのことを話す。おしりの大きな綺麗な馬だ。9歳まで走った。本当にすごいことだ。
3歳の時に東京優駿を1位で走った馬だ。そうして、勝てない日々のむこう、8歳になってGIIで勝った。9位人気の、おじさん馬。

マカヒキの走るレースは、私が人生で初めて生で見たレースだった。パドックで見た時、おおきくておっとりしていて、おしりが大きくてとても素敵だと思った。そのレースは勝てなかったけど、走っている姿はもっと素敵だった。

必死に走ることは、生活に似ている。
たまに、ぼんやりと日々を過ごしている、という人がいるけれど、とても羨ましいことだ。私は、そうは見えなくても、日々必死だから。体調を崩さないように、疲れすぎないように、けれど生活が成り立つように。そういう塩梅を、いつも確かめている。人よりも音や光に弱くて、帽子をかぶったり、ヘッドホンをしたりする。会話が下手だから、仕事も必死だ。毎日、走っているような気持ちだ。いつ終わるのだろうと思う、私の2400mは。

もし私がもうひとり居たら、杖で何度もぶってやりたい。足で踏みつけて、拳で何度も殴り付けてやりたいと思う。ゆるせない。こんな体のことが。こんなこころのことが。食い違う全て、よわいところ、甘えているところ。行き場のない全ての怒りを、ありったけぶつけてやりたい。とどめをさしてやりたいと思う。

けれど。
走る馬は綺麗だ。のびのびと広げられる足、風になびくたてがみ。大地を震わす足音、そうして泡立つからだ。走ってゆく。走ってゆく。そうして、ゴールにたどり着く。

私も走りきれたらと思う。
走るのはやめられない。だから、せめて、走れなくなる場所まで行って、倒れることが出来たら。
あの馬たちのように、ゴールまでどんなに辛くても走りきることが出来たら。

もう1人の私に会った時に、頑張ったねと言えるかもしれない。

そんなことを、思う。なんとなく。
それに、いつかマカヒキのような奇跡が私にもあるかもしれないと、ちょっと思えると、すこしにっこりできる。9歳!そんなに走る馬はいない。けれど走り続けた彼が、再び、晩年で手に入れた栄光のことを思うと、今日も少し、がんばれる。

頑張ろう。
必死に、けれど倒れて骨折は、なるたけしないように。

それでは新しい仕事の研修に行ってまいります。
またね。

雑踏を走る私のたてがみが似ていればいい草原のきみ/菅沼ぜりい

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