自分にとって心地よい描き方を探る
先日の記事で、大学の課題制作で描く絵が決まらないと散々嘆いた。
そして、今までの課題制作ではやってこなかったことを、やってみることにした。
日本画のオーソドックスな制作プロセスは、
①スケッチや写真で取材
②アイデアスケッチ
③実物大の下図
④パネルに転写
⑤骨描き(輪郭を描く)
⑥彩色
なのだけど、今回はこのうち、
③実物大の下図(大下図)
④転写
⑤骨描き
を、すっ飛ばしてみることにした。
取材をして大まかな構図や色味を決めたら、その後は形も取らず、いきなり絵の具と筆で一発描き。
細かい形や色は、描きながら考える。
課題制作では初めての試み。
はっきり言ってヘタ。すごいヘタ。
筆使いだけで一発描きできるほどの技量を自分が持ち合わせているとはとても言えない。
それでも、呼吸をするように筆を動かすほうが自分にとって心地よいことが分かった。
形もガチガチに決めるのは自分の体質に合っていなかったようで、ゆるゆると、柔らかい形を即興でつくっていく方が気持ちいい。
音楽で言うならば、譜面を忠実に再現するクラシック音楽というよりは、大枠を決めてその中で即興をしていくジャズに近いのだろうか。(と言ってみたかった)
ちなみにクラシックもジャズも、小作品を描くときの制作のお供だ。
クラシックはジョンフィールドのノクターンやドビュッシーを聴くことが多い。
ジャズはスタンダード曲と言われるものをミックスリストで聴いている。
とか言いながら、全然詳しくはない。
おっと、話が逸れる逸れる。
日本画は「形」を重視する絵画だと言われる。
でもこの、形を重視して、キッチリ譜面通り(下図通り)決めていくプロセスは私にとってはあまり心地よくなかった。
今回は実験ということで、失敗してもいいから即興でやってみる。
今までほとんど、人工物を描いてきて、植物なんて全然描いて来なかった。
しかもこういう色味は使ったことがなかった。
そのうえ、荒目の岩絵具もほとんど使って来なかった。
今までやったことの無いことしか、やっていない笑。
描いている風景については、実際の風景だけでなく、空想も織り交ぜてみることにした。
実際の風景を普通に描くのは好きじゃないし、かと言って空想だと大きな画面で「持たせる」のは難しい。
そこで、完全な空想ではなく、実際の風景を元にアレンジすることで、課題制作の50号などの大きなサイズでも空想で持たせられるかもしれないと思った。
それから、テーマ曲も決めてみた。
イメージがブレないように。
何度も描くモチーフや構図を変えた今回の課題。
でも何を描いても、なんか違う……と感じていた。
それはモチーフや構図や色味の問題ではなかった。
なるほど、大下図で形をカチッと決めて、それをまたカチッと彩色していくのが苦痛だったんだと分かった。
確かに考えてみれば、カチッと、ピシッとやることは、自分の体質に合っていない。
ドローイングっぽい方がしっくり来る。
描き方を変えてみたら、下手だけれど、今までの制作で感じていた苦痛が今回は無いことに驚く。
いや、もちろん不安。
自分は心地よいと感じているけれど、教授からはズタボロに言われるかもしれない。
「楽しく描いているうちはお遊びだ。絵を描くことは苦しいことなんだ」という教授の言葉が頭によぎる。
……。
それに、形を取っていないことでユルユルになって、完成度が低くなってしまうのではないかとも思う。
それでも、実験と失敗が許されるのが大学の課題制作なので、大失敗してもいいから、やってみようと思う。
これはもちろん、小作品に活かしたい。
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