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名刺代わりの短歌

自選10首です。


愛してる本の最後の一行を読むときの目であなたは笑う

雨が水面を打つ静けさでわたくしの喉に消失点を置く指

ねむの木がねむりゆく夜こんこんと数えてゆけば会えるでしょうか

火は消えるとき火の声で呼びあって人は声から忘れてゆくよ

東の果てに着けば東を失って風の九方位に目を閉じる

蝶が死ぬたび花を植えこの島はいつしか花にまみれゆきます

泣くように林檎の花は散る人が泣くとき瞼を閉じるのに似て

生き別れか死に別れしかないなんて言わないでこんな青空の日に

冬の空ほどに深くは悲しめず手のひらで雪を受けとめている

いつか春を赦せる日がくる誰の手の上にも雪は音なく消える


音楽に例えると長調の歌が多いです。もし1首でも気に入って頂けたら、とてもとても嬉しいです。よろしくお願いします。

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