漫画『正直不動産』を読んで思い出した、不動産営業時代の話(新築販売)
『正直不動産』は、うさぼうさんのツイートで読みたくなった漫画。
山Pのドラマも見たくなったが、漫画派の私はとりあえずネットで漫画を読んでみた。
感想は……思った以上に超面白い!
ちょうどネットで無料だった5巻分までを速攻で読み終え、続きが読みたくてたまらなくて全巻一気に購入。
自分の不動産営業時代を思い出して色んな感情が溢れ出し、しっちゃかめっちゃか になってしまった……
整理したいのでnoteにまとめてみる。
あらすじ&見どころ|何巻まで?完結?
2022年4月から放送されたドラマ『正直不動産』シーズン1(主演・山下智久)が大人気!
2024年1月3日にはスペシャルドラマ、更に1月9日からシーズン2がNHK総合で放送されている本作。
原作漫画はこちら。
著: 大谷アキラ
原案:夏原武
脚本:水野光博
2024年2月時点で、最新作は19巻。なんとまだ連載中!
既に完結していると思っていたから残念。
(全巻一気読みが好きなので)
ストーリー的にはいくらでも続けられるし、現時点で匂わされている伏線を考えても、軽く30巻は越すと思う。
あらすじは公式ページから引用する。
「いやいや、嘘つけなくなったって、無理でしょ?不動産業界だよ?……」
と、最初にまず思った。
「千三つ」という言葉はマジだと思う。
「客の購入意欲を削ぐ話は、違法でない限り、言わないで済むなら絶対に言わない」
みたいな不文律が徹底されている業界だからだ。
どの辺がリアル?|「営業マン」の描写
漫画しか読んでないので、ドラマではなく漫画の話。
いわゆる「営業マン」の描写が現実に近いなーと。ガタイが良くてスーツを着慣れている、いかにも営業マンという感じの強面の男たち。
私が働いていた頃、周囲の不動産営業マンは自分達のことを
「オレら "業者" は〜」
と言っていた。(多分、自虐とプライドから)
「デキる女営業」の雰囲気も、すごく上手く描かれている。私もああいう女性に当時は憧れていた。
ちなみに、営業という職種について。
その頃の私は
「この仕事……やり続けても永遠に営業で終わるじゃん、せいぜい上に上がって管理職になるだけ、キャリアとして魅力的ではないな」
と感じていた。
でも色々な業種と職種を見てきて最近分かったのは
「結局、営業と経理が肝なのではないか?」
ということ。
それさえできていれば、知識と経験次第でいかようにも仕事ができる。
(会社員・組織人としてという話ではなく、自営業やフリーランス向けの話だけど)
新築不動産販売と仲介営業との違い
私はこの漫画に書かれているような「賃貸・売買全般の仲介営業」ではなく、売買……その中でも「新築不動産販売」を行っていた。
簡単に言えば、こんな業務だ。
モデルルーム(マンションギャラリー)に来た人に販売物件を説明
資金計算などをシミュレート
物件申込を受付
お客様宅へ説明に伺う
査定依頼があれば対応(仲介部門と)
銀行への事前審査、ローン申込取次
再度の来場を促すべく手紙・電話・メールで営業
イベントのチラシ作り
物件説明の営業ツール作り
ビラ、ティッシュ配り
道路使用許可を申請・管理
周辺住戸にチラシを投函
重要事項説明
契約準備諸々
契約
モデルルームでのイベント準備・片付け
事務所内でお客さん情報の共有・相談
本社に担当者ごとの営業件数を報告
物件周辺の情報を調査
競合物件調査
物件ホームページ情報の管理・更新
物件情報の勉強(建築面など)
工事現場見学
税金・ローンなどの調査
営業ロープレ
モデルルーム内の清掃・物品管理
5つくらい挙げようかと思ったら、結構たくさんあった。
うーん、頑張ってたなぁ……当時の自分。
ちなみに、仲介営業とはここが違う。
どの物件でも紹介できる訳ではなく、担当物件の部屋しか売れない
(担当物件を売ることが至上命題)販売期間が限られている
(最初は第一期・第二期……と抽選販売し、最後に先着順販売をすることが多い)とにかくクロージングが肝、物件のタイミングとお客さんの属性を瞬時に把握して「今この時」を逃さない
物件ごとにエリアが全然違うため、周辺情報はゼロから学ぶ必要がある
仲介のほうが幅広く色々な物件に触れるため、不動産の知識は多く身につくかもしれない。
ただ、こと「商品自体の販売・営業力」に限って言えば、新築不動産販売のほうが力がつくと思う。自分の売る商品に選択肢がないから。
私が当時嫌だったグレーの部分
細かく言えば色々あったが、特に
「ローンを通すために無理をすること」
が1番嫌だった。
いくら物件を気に入ってもらっても、そのお客さんが購入できないなら全く話にならない。
初回の資金計算時に口頭で年収や自己資金を聞くけれど、話が進むにつれて
「実は、妻に内緒で別に借金があって」
「過去に携帯料金の延滞があった」
「正社員ではなく契約社員である」
「援助してくれる予定の親から反対されて」
「団信(団体信用生命保険)が通らなかった」
……など、問題が発生することも多々ある。
余裕で借りられて返せる見込みがある人に売る分には誰も何も困らないが、100%希望通りに行ってないのに
「いやー大丈夫ですよ」
「こっちの銀行もこういう理由でお得!」
「皆こうしてますから」
という口八丁手八丁のトークで不安を収め、予定通りに契約を進めなくてはならないのは……正直心が痛かった。
もちろん、何も違法ではないのだけど。
1回だけ、銀行にもお客さんにも誠実ではない行動をするように上司に命令され、どうしても真実を伝えられなかったことがある。それだけは今も心残りだ。
「売るための行動」が1番優先される世界。
バブル時代ではないのだからそうでもしないとやっていけないし、甘いと思われるだろうが……
それが嫌で辞めたのかもしれない。
では他の業界はクリーンなのか?
とは言え、そこから10年以上が経ってフリーランスになった今。
ネットやSNSでは、更にひどい詐欺のような話もたくさん目にしている。
有象無象の輩が目につき、これだけ見てたら人間不信になるだろうなというレベル。
リアル社会で彼らがそのような姿を周囲に見せているのかは、不明だけど……
もしかしたら不動産業界は、秩序があるだけまだマシなのかもしれない。
少なくとも、パターンは決まっているからほぼ自衛できる。それこそ『正直不動産』を読めば、ある程度予習できると思う。
業界側・消費者側の「直したいところ」
とは言え、直していきたい点は多々ある。業界だけでなく、消費者のほうでも。
業界側に今後期待したいのは、
「もっと情報公開をしてほしい」
ということ。
レインズ(REINS、Real Estate Information Network System)さえ一般公開してくれたら、ほとんどの不正はなくなるはず。(囮物件など)
情報がない一般人が業者に騙されてしまうのは、ある意味では仕方のないこと。
色々な論点が絡んだ話なのでこの変革はきっと相当に難しいだろうが、強く願う……
まぁレインズ云々ではなく、情報が出回らないこともあるらしいけど。
(すべてが正しく載っている訳ではないし、現場ではそこまで律義に運用されていない場合もあると聞く)
消費者側へお願いしたいのは
「分からないことは分からないと、正直に言ってほしい」
である。
家族の前で自分の無知を晒したくないのかもしれないが、もし無知をそのままにして契約を交わしてしまったら、一生を棒に振ることになるかもしれない。
特に重要事項説明の時には、専門用語や普段聞かない言葉ばかりで何が何だか分からないかもしれない。
それでも、
「少しでも不明点があったらいちいち話を止めて聞く」
くらいの気持ちで臨んでほしい。
その結果丸1日かかったとしても、何千万円もする家を買うのだから慎重になって当然だ。
まぁ単なる「不動産業界をかじっただけの素人」が言っている戯言でしかないが、よかったら参考まで。
漫画『正直不動産』は不動産の勉強になるだけでなく超面白いから、未読の方は是非!
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