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マンション運営は皆、他人事。

一戸建てというのは、基本的に個人1人が土地と建物を所有し、その個人の裁量で建物を直したり、建物を解体したり、売却したり、自由にできるものである。一方、マンションを代表とする集合住宅なるものは、複数の所有者でもちあっている。複数で持ち合っているとどうなるかというと、建物に対するひとりひとりの責任感もその分薄れていく。その薄まった責任感が合わさり、濃ゆい責任感の塊となり、管理組合が運営されていけば良いのだが、往々にして、その薄まった責任感は、そのまま水となるケースが多い気がする。

マンション購入する上での懸念

①管理会社に業務を委託する費用をケチって自主管理とする。

ほとんどの区分所有者はマンション、不動産に関する素人なので、自主管理となるとかなりきつい。区分所有者はみな働きに出ているので、マンションの掃除をしたり、トラブルがあったときに工事業者を手配したり、管理組合の出納業務を本業のかたわらではおそらくできないはず。区分所有者の中に、知識豊富で、リーダーシップを取れる人がいればまだマシだが、それはそれで区分所有者同士の軋轢を生むこともあるだろう。マンション運営には中立かつ専門知識のあるマンション管理会社は必ず入れるべきだとおもう。
しかし、そのマンション運営にあたって、管理会社が主導し、責任を持つわけではない。あくまで、区分所有者の集合体である「管理組合」が最終責任者であり、管理会社は管理組合をサポートする立場であることを忘れてはいけない。

②結局は、「誰かがなんとかしてくれるでしょ」と皆考えている。

冒頭で述べたように、責任感が希釈されているので、正直どうしようもない。管理組合には理事長をたてなければいけないが、その理事長職も輪番とし、任期を終えたら別の所有者が務めるというマンションも多い。結果として、責任感は薄くなり、「早く俺の理事長職終わってくんねえかな」とおもうのである。特定の区分所有者がずっと理事長になり続けるのもそれはそれで組合のお金をくすねていないか?とか疑い始める所有者もいるので、なんとも可哀想である。先程の通り、管理会社はあくまでサポート役なのである。業務委託契約を更新せず、逃げることだってできる。管理会社に頼りすぎてはいけない。

③管理費、修繕積立金の設定が甘く、大規模修繕工事ができない。

これもよくある。そして、その後どうなるか。

積立金がたまらない→建物が古く、保全状態も悪化→資産価値低下→売却をする所有者が増える。→属性の悪い所有者が増え、スラム化する。

建て替えのことを考えて購入しているか?建て替えができないとどうなるか。

しかし、積立金が仮にそこそこあっても、所有者達は、後に待ち構えている「マンション建て替え」に耐えうる貯蓄はあるのだろうか?

仮に新築マンション一室を4000万円、35年ローンで購入した家族Aがいたとする。40年後、Aはそのマンション一室を2500万でBという家族に売却する。Bもまた、ローンで返済する計画である。しかし、Bが購入した時点でこのマンションは築40年なので、あと10年、20年後には建て替えをしなければいけない。つまり、Bは建て替えに必要な資産がなければ、それ以上その場所に住むことはできない。「一般的なマンション購入者」は建て替えに必要な資金を見込んで、マンションを購入しない。Bは2500万のマンションを購入できる程度の収入レベルであろう。建て替え時期が近づくと、建て替えに必要な資金捻出に耐えることができない所有者が、叩き売りしていく。不動産デベロッパーがまとめ買いし、建て替えし、分譲マンションとして、販売していくのであれば、良いとおもう。
最悪のパターンとして、建て替え時期に近づくにつれ、叩き売りが始まり、どんどん所有者の属性が悪くなり、「ボロくても雨漏りしようともとりあえず住めればOK。倒壊しなければOK」という考えの所有者だけとなることだ。そしてそんな所有者達は、どんなに建物がふるくても崩壊しないと思っている。なぜなら崩壊した建物をほとんど見たことがないからだ。
不動産デベロッパーが買取に乗り出したとしても、提示された端金で自分の住まいを手放すような連中ではないはず

マンションがここまでやばくなってきたら、居住者の命はもちろん、建物近隣住民、歩行者も危険だ。外装材が飛散して、歩行者に直撃して死なせてしまう可能性も高くなる。

そこで行政の出番となるのだが、行政でもそう簡単に個人の財産に対し手を出すことができない。

滋賀県にとある廃墟マンションがあり、所有者に対し行政から解体するよう勧告をするも実施に至らず、空家等対策特別措置法に基づき最終的には行政代執行という形で1億2000万円ほど(これはこれでぼったくりかと思う。)で解体を行った。費用は所有者に請求し、国税滞納処分という形で債権の回収を進めているそうだが、全額回収には至っていないようだ。最終的には行政の泣き寝入りということになるのだろう。行政代執行に至るまでおよそ10年ほど費やし、お金も時間もかかるようだ。ボロ建物があるたび、血税で問題解決する訳にもいかないとおもう。個人の財産で簡単に手出しができないのであれば、後始末まで個人の責任とするべきだろう。

定期借地権マンションのように解体積立金または建替積立金なるものを別途徴収すれば良いだろけども、所有者からすればローン以外の出費がかさなるので、自ら進んでやろうとはならないだろう。結局問題を後回しにしているのだ。

都心の建て替え事例は参考にならない。

東京都心での建て替えとなると、容積率も高く、総合設計制度を利用することで、既存の建物より大きい建物を建てることができる。そして、デベロッパーに余剰床を売却し、その売却資金を区分所有者で分け合うことで、解体、建て替え費用の持ち出しが軽くなり、建て替えにおける権利者の合意も得やすくなる。つまり都心以外における、既存建物と同じボリュームしか立たないようなマンションでは適用できない。こんな夢のような事例にすがりついてはいけない。

まとめ


マンションの一番の問題点としては、やはり所有者が複数いるということだろう。マンション運営にあたって、自分はこうしたい、これが正しいと思っても、それが意見として通るとは限らない。通ったとしても、我が強い所有者と見られ、この先マンションで生活しにくい。そもそもみんなで持ち合っているものだから、自分がこんな色々考える必要ないよな…と、感情が入り混じってしまい、管理組合という集合体として考えたときに合理的な運営ができないのである。

一方、戸建てはシンプル。余計な感情に振り回されたくなければ、戸建てを勧める。

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