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巨大観音像は建築物。

まったく平和じゃない「世界平和大観音像」

兵庫県淡路島にそびえ立つ約100mの「世界平和大観音像」。1983年に建設され、1988年にに所有者が亡くなり、後に相続人も亡くなり、2006年に所有者不在となり、2020年に国所有となった。劣化が進行しており、2014年、2018年には像の外壁の一部が落下。2020年には内部に侵入した男性が像の展望台に上り、飛び降り自殺した。地域住民から不安の声が上がったため、解体をすることになったそうだが、解体費用は8億8000万円だそうだ。

仏像ってどうやって建てるのか?

そもそも仏像ってどうやって建てるのか?気になったので調べてみた。

茨城県牛久市にある「牛久大仏」について施工会社である川田工業の報告書がネットに上がっていたので、簡単に要約してみる。

基本的な情報として
仏像の足元あたりの土台は鉄骨鉄筋コンクリート造、それより上の本体は鉄骨造。コンクリート杭が地面より約23m下まで打ち込まれている。
高さ120mほどの塔状の建築物扱い、主に本体部分はブレース付きラーメン架構、部分的にトラス構造を採用している。大仏の表面材である銅板材は躯体の鉄骨にとりつける、いわゆるカーテンウォール工法を採用。構造計算も行っており、建築基準法38条認定を取る必要があったそう。

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(特殊の構造方法又は建築材料)
第三十八条 この章の規定及びこれに基づく命令の規定は、その予想しない特殊の構造方法又は建築材料を用いる建築物については、国土交通大臣がその構造方法又は建築材料がこれらの規定に適合するものと同等以上の効力があると認める場合においては、適用しない。

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平たく言えば、建築基準法で想定していない新しい材料や構法などの使用について、第三者機関の試験を受け安全性などを証明することを要件として使用を認める制度である。
構造、工法、材料などを見ると大仏も「建築物」であると理解できるが、普通の建築物とはまったく別物と言っていいほど、工事、設計の難易度は高いようだ。

ちなみに、建築基準法では高さ20mを超える建築物には避雷針の設置を義務付けられている為、牛久大仏の頭頂部には避雷針が設置されている。

世の中にはデザイン性に優れた名建築なるものが存在するが、建築基準法という絶対的に無視できない存在と対峙した上で生まれているのである。大仏にはぱっとみ「建築物感」がなく、「大仏」という存在として一般市民からは認知されている。これこそが究極の「デザイン建築」なのかもしれないと思い始めてきた。

大仏は稼げるのか?

話を世界平和大観音像に戻そう。この観音像を建てた方は資産家のようで、観音像内部は本人のコレクションの展示、展望台、レストランとのこと。建築費用は約53億円。入場料は800円で開業当時は1日2000人が来場したそう。敷地面積は19,000㎡。結果として廃業してしまったが、はたして大仏はビジネスとしてやっていけるのだろうか?

まず土地の取得から考える。観音像近くの公示価格は32,000円/㎡。
土地取得費用として19,000㎡×32,000円=6億800万円
建築費用で約53億なので、土地建物でトータル60億。

続いて年間の収入。牛久大仏の来場者数は年間48万人である。大観音像の年間来場者を10万で想定すると
入場料800円×10万人=8000万円
年間の利回りとしては1%となる。

支出としては固都税、建物修繕費用、人件費等、収入としてはレストラン、御土産の売上等あるが、それは抜いておく。

ペイするのに100年かかる。鉄骨造の建築物は100年も確実に持たない。ペイする前に解体となるので、事業としては失敗となるだろう。仮に開業当初の1日2000人をキープできれば、年間5億8400万円の売り上げになるので、10年あればペイできるが、現実的とは思えない。

まとめ

先日話題にした廃墟マンションと顛末が同じであり、結局、最後は行政が尻をふくことになる。自己顕示欲を満たしたかったのであれば、別の方法は思いつかなかったのかなと、思う。生前は莫大な資産を築き上げ、地位も名誉も手に入れたのかもしれないが、現在は汚名だけが目立ってしまった。後先生きていく親族の為に己の巻いた種は己が刈り取るべきだろう。

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