かつら事件。
仕事で30年来のお付き合いのあるMCさんと、30年目にして初めてのランチをしていた時のこと。
MC「昔、披露宴でこんなことがあってさ~」
私「あったあった。てか私そこにいた。あの時司会だったの?」
あの時はまさか30年後にふたりでランチ食べてるなんて予想だにしなかった。それにしても二人とも詳細まで覚えていた伝説の一件。
それは起こるべくして起こった
白無垢で挙式をした後、色打掛に掛替えをして披露宴の入場をする。髪は文金高島田。お式では清楚な角隠しや綿帽子だが、色打掛には華やかなかんざしと、当時流行っていた尾長をつける。早替えなので急げ急げ!である。
この尾長とやら、最近流行ってるタイトポニーのようなもので、お尻の下くらいまで長いので重く後ろに引っ張られる感じ。(自分の式で実証済み)
それに加えてかつらも昔は美容室にある既製品を微調整するだけだったのでピッタリしてなくておでこの生え際とかビン(もみあげ部分)がよく見ると浮いていたりする事もよくあった。
この日の披露宴は演出が盛り沢山だったのか、乾杯するとすぐに新婦友人の余興が入っていて、カラオケを歌い始めた。
その時私は何をしていたかというと、花嫁の介添えである。
先輩介添えさんに教えてもらってデビューしたばかりの初心者で、マニュアル通りにこなすのに精いっぱいだった。
新婦友人のカラオケとなれば、花嫁さんを高砂から下ろし、ご友人の横に並ばせて一緒に口ずさむくらいの事をしてあげたらお友達もきっと喜ぶ。
ただこの日の余興はまだ前半で和装だった、尾長だった、結構アップテンポの曲だった、、、(曲名までは覚えていなかったのだがMCは曲名まで覚えていた)
楽しくノリノリで歌っていると、花嫁のかつらが少しずつずれてきたのか、後ろに引っ張られて脱げてしまった! 「きゃぁー」
どうする、介添え
花嫁さんに「少々お待ちください!」と言って、バックヤードに走った。美容師に内線をかけるため。今みたいにインカムとか無いからね。。
結果、ピンチの花嫁さんを一人にしてしまった。その時間は数十秒だが花嫁さんにとっては長く長く感じたことだろう。司会台の後ろにうずくまり泣き出してしまった。
その間、新婦友人はカラオケを歌い続けてくれた。新婦からみんなの視線をそらすために司会者がお願いしてくれた。
程なく美容師が会場内まで来てお支度を直し、お色直し退場となった。
社長にこっ酷く叱られる
披露宴がおひらきになってから、私は社長に呼び出された。
社長はもともとの悪人相に加え苦虫を噛み潰したような顔で、お前はバカだアホだと言ったがいつものことなのでスルーしながら
え、待って。アクシデントでしょ。
新婦さんは可哀そうだけど悪いの美容師じゃね?と思っていたが、社長は続けてこう言った。
「起こってしまったことは仕方がない。その後の対処が悪い。」
そのとおりである。あたりまえ体操過ぎてぐうの音も出ない。隣で社長の奥さんが「美容師だれ?!」と言ったのでそれはそれで制裁を願う。
でも、、どうするのがよかったのか。その先を聞かせて社長。
そうだな、、
お前がバックヤードに行くときに一緒に花嫁も連れて行くなり、
適当でもいいから脱げたかつらを速攻かぶせるなり、、
(確かに。でもそんなこと、、、できなかった)
だからお前はバカだっていってんだ。
社長、、、
不思議なことに、社長のバカアホには殺傷能力はない。私はもちろん落ち込んだが、傷ついたのではなく心から反省していた。社長のバカアホにはどこかしらにどっしりとした寛容さがあって、「お前ホントにバカだなー」と言いながら頭をヨシヨシされているような気がした。
現場からは以上です。
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