『謎』は解かれるべきなのか
サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を読んで、ぼくはすっかり彼の世界に魅せられてしまった。特に彼の作品の中にしばしば登場する解けない謎、それがぼくの心をつかんで離さなかった。
しかし、この解けない謎を「謎解き」すると謳った本が今年の八月に出版された。新潮選書『謎解きサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』である。
今回はこの本を読みながら考えたことについて書いていこうと思う。
1.謎を解くとはどういうことか「謎解き」とはいったいどういう